「グロテスクで美しい、珍妙で創造的」哀れなるものたち kozukaさんの映画レビュー(感想・評価)
グロテスクで美しい、珍妙で創造的
グロテスクで珍妙でありながら、とてつもなく創造性にあふれ、美しさに目が釘付けになる。
ヨルゴス・ランティモス監督はモラルに相反するとてつもない問題作を作った。
2時間半近い時間はあっという間だ。それほどこの世界にのめり込んでしまう。
ある問題から主人公のベラ(エマ・ストーン)は身投げをしてしまう。(理由はのちに判明する)
しかし、マッドサイエンティストのゴッドウィン(ウィレム・デフォー)に救われる。
しかし、妊娠していた胎児の脳を移植するという人体実験だったのだ。
ベラは見た目は同じだが完全に生まれ変わったのだ。
この映画を端的に表現すれば、生まれ変わったベラの幼児から大人への成長譚だ。
美しい大人の女性の姿形は男達の羨望の的。
ある時、出会う好色弁護士のダンカン(マーク・ラフェロ)の誘いで冒険旅行に出てしまう。
中身は幼児で常識も道徳心も何もないのでそこで出会う大人たちを本音でぶったぎる。
なんとも爽快だ。
食べて、寝て、セックスをする。体は成人女性だが知能は胎児なので生理的欲求を抑えられないのだ。
だが、リスボン、アレキサンドリア、パリを巡る旅で様々な人と出会い、世の中の不条理を体験し目覚ましく成長する。
成長し旅から戻ったベラはどうなっていくのか・・
人間とは一体何なのか。ランティモス監督は人間の本質を探求している。
モノクロとカラー、魚眼レンズなどを駆使するロビー・ライアンの撮影が素晴らしい。
前衛音楽のような音楽も世界観を見事に表現。
ファンタジーのような美術造形は夢と現実の世界を曖昧にする。
ベラの狂気を表現したような衣装も素晴らしく、総合芸術としての映画の完成度がとてつもなく高い。
しかし何と言ってもエマ・ストーンの捨て身の演技が素晴らしい。
2度目のアカデミー主演女優賞は確実なのではないか。
カップルで観ることはお勧めしないが必見の傑作。