劇場公開日 2024年1月26日

「哲学書と詩集と音を映画というキャンバスに収めた作品」哀れなるものたち くりくりぼーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0哲学書と詩集と音を映画というキャンバスに収めた作品

2024年2月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

映画.comではエログロな過度な描写が過剰との書き込みが多かったので見るのやめようかなと思ってました。一方で星評価は高かったこともあり、公開終わる前に視聴してみました。
確かにエログロな表現は多いものの、それに何かの意図があると感じさせます。
その意図は正直理解できていないのですけどね。
とりあえず、想定以上に映画館で観てよかった。というよりも映画館で観なければダメな作品ともいえる。

今回は先に星評価を書いておきます。
映像 ★★★★ (映像というか美術的センスが凄いので★4)
音  ★★★★ (アート・オブ・ノイズ的な音の使い方悪くない)
物語 ★★★★ (良い)
役者 ★★★  (演技より役の設定そのものが上回っているので★4や5には届かず)
編集 ★★★★ (この難解作を最後まで見せるように良くまとめたなと感心)
粗さ ★★★  (粗いようでシッカリ繋がっているように感じた)
翻訳 ★★★★★(正確に翻訳してるかは知らないが詩的であり良かったと思う)
総合 4.0

自分の付けた表題と逆かもしれない。
「映画というキャンバスに哲学書と詩集と音を収めた作品」のほうが合っているかな。そして哲学も詩も私には難解にて映画が何を伝えようとしているのか理解はできなかった。それでも評価は★4であり、総合して趣があって面白かったです。

観てるいる途中で、なぜか、昔々にビデオで借りて観た「ドグラ・マグラ」という映画と、最近のアニメ「メイドインアビス」が頭をよぎった。

若くして観た「ドグラ・マグラ」は正直、反吐(ヘド)の出るような狂気の作品としか思わなかった。今でも気持ち悪いとの記憶しかない。でも、いま観たら、その哲学的世界観を読み取ろうとする自分が居てきっと違う感想になるのかもしれない。改めて「ドグラ・マグラ」を最視聴したいなと揺れ動きつつ、やはり観ることは無さそうw

もうひとつ、アニメ「メイドインアビス」は、人が持つ冒険(好奇心)という衝動は抑えられず、時に善悪を超絶する、というようなイメージの世界観があり、なんとなく本作「哀れなるものたち」にリンクしてしまった。

うーん、長々と何の感想を書いてるのか自分でも分からない・・・。
さて、皆さんがどういった感想(読み解き)となったのか、レビューを読み漁ってみよう。

追記(2024/2/11)
まず原作小説(1992年)があるとのことを知りました。
原作読んでみたいが、私にはそれだけの読書能力がないので、原作小説に対する評価を読み漁ってみた。結構人それぞれの解釈にて一つの答えには収束しない感じです。そういう意味では映画としても、あまり明確な解釈を観る側に与えなかったのは正解なのでしょう。
さて、少し頭を整理して私なりの映画から読み取った解釈を書きます。
本映画は「人(人類史)」を物語に嵌め込んだと解釈します。人類は神の気まぐれで創造され、悪意の無い本能で歩み、好奇心に勝てず禁断の果実のリンゴを食べて(映画では自慰)堕落し、文明に目覚め、進化しながらも、更なる欲求を求め争い、人類は終わりなき闇に向かっていく。そして「永遠に満たされぬ欲求(poor thing)」を抱え自滅に向かっていく。それを救うには新たなる神(=ベラ)の手により世界を作り変えなければダメだということなのでしょう。人類は新たな神の誕生によってしか救いようのない「なんて哀れな生き物なのでしょう」という風刺で終わったのが最後の庭園のシーンであると解釈します。
婚約者の記録というのは聖書ということかな。セックスは人の生まれ変わりを意図するのかも。男女、貧富、娼館、社会的思想、戦争は全体の一部でしかないのだと思います。さて皆さんの解釈は如何なものか。

蛇足
エンドロールのスタッフ紹介も少しお洒落記述にて読み取りづらかった。
日本人らしき人は役割もフルネーム不明だが"… YAMAUCHI"さんを見つけることができた。アニメーターかなぁ?

くりくりぼー