劇場公開日 2024年1月26日

「見たことのないプロットで人の進化を辿る。凄まじい!新しい!」哀れなるものたち alvoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5見たことのないプロットで人の進化を辿る。凄まじい!新しい!

2024年2月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

あらすじ読んだときはさっぱり意味がわからなかった。口コミからも見る前は異様に脱ぐのね、位しか分からず、沢山賞をとっていることと、エマストーンでなければ見たかどうか。でも久々に満席でなかなか取れない映画でもあった。

結果、凄まじかった。見るべきだった。赤裸々な娼婦のセックスシーンは若い人や男性には刺激が強いかもしれないけど、感情がないからか流せるくらいに全てのシーンが美しい。たまに脳内ファンタジーが再現されているのか?現実味のないロンドン、リスボン、船、パリのシーンや入れ替わりのタイトルページも画集のようで素敵だった。覗き穴風の視点やモノクロとの対比などの演出も多用されていて美しい。

母であり、子でもある、言わば人造人間、ベラバクスター。大人の体に胎児の脳、そこから見せる、人としての急激な進化。

ただ親の真似をしてメスを振り回し物を壊す
なぜなぜ期に入り好奇心が止まらなくなる
初めての反抗で親に逆らう
外の世界に触れ人との交わりを知る
社会的通念や、人への礼儀や配慮を知る
友人との出会いと学びで世界が広がる
世の中が正しいだけではなく自分が無力であることを知る
お金の稼ぎ方を知る
人との相性を知る
自分のしたいことを見つける
親の深い愛と、元夫の歪んだ愛を知る
そして体だけ成熟してるから早くに性の快楽も知る(脳的には幼稚園児くらいの時?)

進化と同時にベラの言動もどんどん哲学的に、そして学術的になってきて正直難しい。けど展開も引き込まれるし、ベラが最後バッドエンドなのかグッドエンドなのかも想像つかないまま進行して飽きるタイミングがなかった。

子どもの素直な心で大人の世界を生きるということ、そしてこういう過程で人の脳は進化する、ということをスピーディーにみせてくれる。美しさもありながら、自分に執着せず真っ直ぐに生きていくベラに虜になっていくダンカンや周りの人々も、今ないものへの憧れか。

最後、博士が死んだ時その脳を元夫に移植するのかなと思ったけどもっと牧歌的??だった。
奇妙な前提で成り立つほのぼのとした世界のラスト、私は好きでした。

alvo