「フリークあるいは恐ろしいファシストの成長譚」哀れなるものたち あげ玉さんの映画レビュー(感想・評価)
フリークあるいは恐ろしいファシストの成長譚
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中盤まで圧倒された。撮影も美術も衣装も演出もピカピカ、キラキラして魅力的。これはかなりの傑作なのでは?と思いきや以降は失速。
船に乗って冒険!ということで話が広がるかと思ったら、結局ずっとセックスしてるだけ。知恵の実食べても貧しき人たちを救おうと決意しても、結局セックス。ベラが成長しても同じようなシーンばかりでクドくて疲れる。
セット臭すぎる背景も、説明的すぎる劇伴も退屈さに拍車をかける。魚眼レンズのショットも思わせぶりなだけ。露悪的なのもやり過ぎると単に下品なだけ。
ベラは精神的に成長していっているようでいて、実はそうではない。単に知識量が増えているだけなので、ポンコツロボットが完璧なロボットになっていくだけ。
マシンなので、夫であり親でもある男性の脳を外科手術で動物の脳に入れ替えるという鬼畜な所業も平気でできる。彼女はこの後外科医になるんでしょうが、気に入らないやつの脳をいじくるとか平気でやるんだろう。
ということで、この作品は巷で言われているように女性の性の解放だとかフェミニズムがうんたらとかをテーマにした映画ではない。精神の自由だとか解放だとかからはほど遠い、ポンコツロボットが恐ろしいファシズムマシンに進化する成長譚だ。
とはいえ、エンタメ映画としては外連味がたっぷりで魅力的なショットが山ほどある。豪華な衣装、細部まで整えられた美術、クリエイティブ風味な撮影、エマ・ストーンの演技、キラキラ感満載だ。
アートっぽいエンタメで、Wokeやフェミニズム的要素もちりばめ、職人的なクオリティーも高く、主演が体当たり演技で一皮むけたました的な感じで、賞レース的にはウケが良い作品でしょうね。
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