「1人の女性の成長と解放を通して与えられる気づき」哀れなるものたち sow_miyaさんの映画レビュー(感想・評価)
1人の女性の成長と解放を通して与えられる気づき
細部まで、よく作り込まれた映画だった。
年代はあえてぼかされて、それぞれの都市の景色もどことなくファンタジーな味わい。なので、荒唐無稽な天才外科医のなせる技も、観客は違和感なく受け止められる。
ただ、設定はファンタジーだが、扱われているテーマは、どこを切り取っても、我々が直面してきた個人的な成長課題であったり、社会的に解決が求められる問題だったりするので、決して上滑りしない。
それらがミルフィーユの如く、何層にも積み重ねられ、色彩的にも美しく提示されるので、気がつけばその世界感の中にどっぷりと浸りこまされている。
全体として見れば、1人の女性の成長と解放の物語という言い方ができるだろう。だが、それはまるで、人類が(とりわけ女性が)多くの犠牲を払い、痛みを伴いながら「人権」という概念を確立してきた歴史と重なるかのようだった。
(それに対して、マッドサイエンティストのゴッドとその父のエピソードは、科学的進歩至上主義への警鐘として、カリカチュアされている)
自分自身は、そうした彼女の一挙手一投足を観ながら、様々な気づきを与えられた。できれば、巻き戻して、繰り返し観直して考えたいくらいに。
願わくば、早めに配信されますように。
<追記>
ベラの元夫が、使用人の女性にイタズラ?を仕掛け笑うシーン。あれを「ドッキリ」と称して、ゴールデンタイムで放映してるのが、日本のテレビだよなぁ…。
こんにちは
レビューに何度もうなづいてしまいました。素晴らしいです。
追記も、鋭いご指摘です。意地悪を「ドッキリ」と称して笑う、って不快なだけなのに、日本のテレビではよく見かけますよね。
ベラが自身を確立していくうえで、生みの親ゴッドと婚約者の深い愛がベースにあったところを含めたのが映画に深みを持たせたと思いました。幼少期の育てられ方と生育環境は一生を左右するようなものみたいです。
「ふたりのベラ」にコメントありがとうございます。
そうですよねー、妻と子😅
山羊の脳で反省ができるかと言えばできないでしょうから、もうそれは更生の道なしの見切り。
なかなかのシュールさにちょっと引っかかりながら、みなさんのレビューで視点をかえるとまた面白く、インパクトのある作品でした。
すごい作り込みでしたね。本当にあらゆるため息がでます。
映画ならではの別世界。そしてメッセージ。
役所さん観た後の今作。どちらもすばらしいが、血圧はガーッと上がったかもです。
共感いただきありがとうございます。
特にテレビのドッキリの部分がその通りだと思いました。日本の映画にも良い作品は多いですが、海外の作品にはこういった具体的で広い視点に感じ入ることが多い気がします。