「緻密な計算で描かれた〝つくりもの感〟(追記あり)」哀れなるものたち グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
緻密な計算で描かれた〝つくりもの感〟(追記あり)
超絶外科手術(要はフランケンシュタインがリアルな世界)も、屋敷も旅先の街並みも空も、すべてが並のお伽話よりも濃密に〝つくりもの感〟に溢れています。
あれほども〝栗とリス〟にまつわる会話や映像が展開されてるのに、嘘のように性欲が刺激されないのです。コメディタッチであっけらかんと描かれるような映画もありますが、それなりにエロかったりするのに。
思春期特有の精神的なモヤモヤをすっ飛ばして、いきなりあの気持ちよさに出会ってしまった無垢の女性にとって、それは無垢な肉体の悦びであり、それを欲することは、E=mc 2(二乗)と同じくらい自然で当たり前のこと。
淫乱である、とか、ふしだらである、とかの道徳的な後ろめたさやそしりの概念を社会の共同観念としていつの間にか仕立て上げたのは男どもだし、この女は自分だけのものである、という身勝手な独占欲を許してきたのも男の作った虚構のなせる技。
男の作ってきた常識の数々は、よくよく見てみれば、結局は男の怖れや弱さから生まれたよくできた〝つくりもの〟
それらのことをpoor thingsと呼んでいるのでしょうか。
【素朴な疑問】(2024.1.28追記)
売女(バイタ)という言葉があります。
いわゆる売春婦だけでなく、男目線から〝身持ちの悪い女〟
に見えれば、それらを引っくるめた罵り言葉として使われます。
たとえば、ホストクラブという業態がある。
実態を何も知らないのだが、仮にそこで女性客に対して〝媚び〟を売ったり、場合によっては身体を売ったりすることがあるのであれば男性向け風俗の業態と本質的な違いはないことになります。また、浮気性で、〝身持ちの悪い男〟だってたくさんいます。
だけど、そういう類いの男性を一括りにして〝売男〟(読み方は売女と同じバイタということにしておきます)とは言わないし、それにあたる言葉もたぶんありません。
そもそも様々な女性を一括りにして蔑む言葉が、字幕でも普通に使われている男性中心に作られた共同観念の根深さをあらためて実感しました。
そうですね。そしてその自覚の具現化に長けるのも、国柄、文化や教育、芸術へのなじみが反映されているからなのでしょうね。それを知れる映画って、本当に刺激的だなぁと感じます。
この作品は賛否両論にも程がありますねw
バービーにしても、表面的な絵面からは想像し得ない悲哀を感じましたし、この作品にしろ、単なるエログロナンセンスな映画にしない、レビュアーさんたちの知的な感想、観点にとても感動しました。特に私は字幕なしなので、本当にありがたかったですw グレシャムの法則さんの感想こそ、激しく同意します。
グレシャムさんの追記へ。言語は昔、またはある時期から世の中を支配する側、つまり男性の持ち物だったからなんでしょうね。今ではもうそれは通じない、アウト!(異性愛)男性の無知と傲慢と弱さをさらけ出しているものだと、多くの言語・国・地域で意識されるようになってきましたね!まだまだですが、ことばは人間と一緒に変化するダイナミックなものであると希望をもっていきたい。
ロブスターを観てから映画にハマった私…なので、この世界観とかたまりません。グレシャムさんのレビューを読んでもう一度(三度目)観なくては!!と思いました。私的には一番良かったのは衣装で、その次に音楽かな?あの『たららら、らら~ん』を知らない人からの通知音に設定したいです。
ma.ri.kaさん、コメントありがとうございます。
そうなんです。男って、自分の弱さや欠点を素直に認められない人が多いんです。
なんだかもったい付けたり、賢そうに聞こえそうな、だけどよくよく考えると中身がなかったり、論点を微妙にずらした理屈で誤魔化したり。
グレシャムさんとだったら分かると思いました。裸?いろんな具合のセックス?マスタベーション?全然問題ない!ベラがまず自分で、そっかーとわかってから、よっしゃーと行くのがとってもよかった、好き