「衝撃驚愕斬新か、トンデモか」ドミノ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
衝撃驚愕斬新か、トンデモか
一瞬目を離した隙に行方不明になった娘。探し続ける刑事の父親。
これに現代アメリカが抱える闇も交えたら、主演ベン・アフレックの監督デビューの隠れた名作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』を思わせるミステリーになっていただろうが、本作は思わぬ方向へ。
これに乗れるか否か。
カウンセリングを受けつつも、ダニーは正気を保つ為、現場復帰。早速、銀行強盗のタレコミ。
張っていると、見覚えのある男が。
男が通りすがりに話し掛けると、不可解な行動を。銀行強盗を起こす。グルか…?
警官に話し掛けると、ダニーを狙う。
男が狙っていた貸金庫の中に、娘の写真が…。
男は何者か…? 目的は…?
娘の失踪に関わっているのか…?
謎めいたこの導入部は引き込まれる。
タレコミがあったのは、ある占い師の店。
ダニーはその占い師・ダイアナから話を聞く。
謎の男は、デルレーン。“ヒプノティック”…一種の催眠術の持ち主。
他者の脳にハッキングし、他者を自在に操る事が出来るという。
ダイアナも使えるが、デルレーンの力は比べ物にならないほど強力。
そんな事…と思いつつも、銀行強盗での不可解な行動、同僚刑事が突然襲撃。異能としか説明付かない力を認めざるを得ない。
刑事vs異能者! 特異な設定ではあるが、無いとは言えない。
デルレーンの策略によって、ダニーとダイアナは追われる身に。
追っ手から逃げている時、空間が歪む驚異の光景。『インセプション』…?
絶体絶命、追い詰められた時…、ダニーにもヒプノティックの力が…!
何故、自分が…?
明らかになる驚愕の真実…!
ダニーだけではなかった。
妻も娘もヒプノティック能力者。
政府のある“機関”。ヒプノティックを育成し、その力で世界を支配する。“ドミノ計画”。
何故ダニーはそれを覚えていない…?
自分で記憶を消したのだ。
全ての記憶を思い出す。
銀行強盗に始まり逃亡劇…現実の出来事ではなかった。ヒプノティックで見ていた出来事。ここは、仮想世界だった。
実際は、“機関”の施設内。デルレーン、同僚刑事、操られた人々…皆、“機関”の者。
ダイアナも。ダイアナはダニーの妻だった…!
彼らの目的。ダニーの娘を手中に。
ダニーの娘は最強のヒプノティック。
奴らに利用されないよう、ダニーは娘をある場所に隠し、自らの記憶を消したのだった…!
単なる誘拐事件に非ず。異能と陰謀が絡む壮大な攻防劇。
謎が徐々に明らかになっていき、SFチックな設定と有無を言わせぬ怒涛の展開。90分強の尺を、まるでドミノ倒しのように一気に突っ切る。
ベンアフの熱演、謎の男ウィリアム・フィクトナーの異彩。
面白味や娯楽性は充分。退屈はしない。
しかし本当に、この設定や展開に乗れるか否か。
始まって5秒で騙されている。二転三転、大どんでん返しなんて謳っているが、そもそも全てがひっくり返るような設定。
『“アイデンティティー”』や『シャッターアイランド』など似たようなシチュエーションはあるが、SF絡むと何でもありになっちゃう。
ロバート・ロドリゲスもこういうジャンル撮るとはねぇ…。ヒッチコックの『めまい』からインスピレーション受けたらしいが、でも、何処がどう…?
続きを匂わせるED後も含め、こけおどしやはったりと言うより、お口あんぐりのトンデモ映画だったかも…?
再三言うが、つまらなくはなかったけど!
って言うか、タイトルは邦題“ドミノ”じゃなく原題“ヒプノティック”だよね~。