「アクション主体からストーリー重視へ、R.ロドリゲス監督の発展途上」ドミノ 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
アクション主体からストーリー重視へ、R.ロドリゲス監督の発展途上
本作の評を当サイトの新作評論枠に寄稿したので、ここでは補足的なことをネタバレ込みで書き記しておく。
評論では印象の近い過去作の例としてフィリップ・K・ディック原作物とクリストファー・ノーラン監督作をいくつか挙げたが、中でもプロットの類似点が多いのは「トータル・リコール」(1990)だろう。①主人公は自身のアイデンティーに関する重要な記憶を失くしている②偽の記憶に基づく暮らしでの妻は白人だが、真のパートナーは有色人種(ラテン系)③主人公が探し求めている対象を、偽の記憶に関わる組織も狙って追いかけてくる④主人公にヒントを与えて導くのが、真の記憶に基づく“別の私”…と挙げていくと、ロバート・ロドリゲス監督が「トータル・リコール」を下敷きにして「ドミノ」の脚本を組み立てたのではと想像できなくもない。
見ている世界は真実か虚構か?という要素に関しては、評論で挙げた傑作群のほかに、「オープン・ユア・アイズ」「トゥルーマン・ショー」「マトリックス」「13F」「アイデンティティー」「シャッターアイランド」「ドクター・スリープ」などが想起される。この手のストーリーが好きな人なら、「ドミノ」も相応に楽しめるのではないか。
ただし評にも書いたように、コロナの影響で撮影期間が大幅に短縮され、ロドリゲス監督も不本意な変更や妥協を余儀なくされたものと推測される。長めの説明台詞などによりストーリー展開のテンポが悪い部分もあって、どんでん返しの連続もいまいちスッキリ決まらないというか。とはいえ、従来のアクションやスペクタクル主体から、ストーリーそのものの面白さを重視する方向へ、ロドリゲス監督が新境地へと発展している途上なのだと好意的に受け止め、将来の傑作を期待したい。