あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。のレビュー・感想・評価
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ラブストーリーを主軸に、特攻隊員達の心情に迫る群像劇
本作の公開日12月8日は何の日かと問われて即答できる人は少ないだろう。太平洋戦争開戦日。日本の真珠湾攻撃が行われた日である。あの日から82年後に本作が公開されるのは単なる偶然ではなく作り手の強い意図を感じたので心して鑑賞した。
本作は、特攻隊員と現代からタイムスリップした女子高生のラブストーリーが主軸であるが、特攻隊員達の群像劇でもあり彼らの心情に真摯に迫る感涙作である。
本作の主人公・高校生の加納百合(福原遥)は卒業後の進路のことで母親と喧嘩し、近くの元防空壕で一夜を明かすが、目覚めた時、そこは1945年6月の太平洋戦争末期の日本だった。呆然自失の百合に青年・佐久間彰(水上恒司)が声を掛け、軍指定食堂に連れていく。そこで、百合は、女将のツル(松坂慶子)、勤労学生の千代(出口夏希)、彰と同じ隊の石丸(伊藤健太郎)、板倉(嶋崎斗亜)、寺岡(上川周作)、加藤(小野塚勇人)と知り合う。百合は次第に彰に惹かれていくが、彰は特攻隊員であり出撃が迫っていた・・・。
彰は、彰が好きな百合の花で覆い尽くされた丘に百合を連れていく。二人を優しく包み込む百合の丘の美しさが、二人の愛を翻弄する戦争の不条理を際出たせている。切な過ぎる。
ツルの店での特攻隊員達の会話は、当初、大義に殉じることで統一されていた。しかし、生きることを大切にする百合の考え方に触れ、家族を残して死ねないという想いと大義に殉じるという想いが激しく交錯する。彼らの苦悩が浮き彫りになる。従来の作品では、苦悩の末に大義に殉じて出撃するのだが、本作では、そうでないケースも赤裸々に生々しく描く。彼らの苦悩の深さが得心できる。
百合は懸命に彰を説得するが、大義に殉じるという彰の気持ちは揺るがない。二人の愛は彰の出撃で、戦争の不条理で終わる。
太平洋戦争から78年が経過した。今後も日本が平和を堅持するには、本作のような作品を観続け戦争を忘れないことが大切である。太平洋戦争を忘れないことが戦争抑止の最善手である。
当たり前、ではない時代
雑なSFに伏線つぶし、薄い奇跡。
2023年劇場鑑賞297本目。
福山雅治の曲に合わせた予告でもう泣きそうになっていたのですが、もうそれだけで良かったのかもしれない。
子供を助けて亡くなった父親のせいで生活に苦労していると恨んでいる女子高生がなんとなく終戦間近の特攻兵と出会って恋に落ちる話。
現代人からしたら特攻に関して本当意味のないくだらない死に方だと思うし、ましてやもうちょっと待ったら終戦になるのが分かっていて好きな男が特攻に行くのをもうちょっと一生懸命止めろよと思ったし、終戦のゼロよりもっと特攻に納得行く理由が提示されていないし、父親の行動の理解には繋げないし(内面ではあったのかもしれませんが)、何よりこんなファンタジーが起きてる割に奇跡みたいなのうっすいし、福原遥かわいいだけでなんとか持ってる映画でした。福山雅治の歌の歌詞がエンドロールできちんと表示されて、この映画の内容そのままだったのですが、「やっぱり特攻は戦力無駄に消耗させるだけの愚行だよなぁ」のマインドでみても今ひとつ心に響かずでした。
生き残ってゴジラと戦う方が意味あるよ、やっぱり。
筋書は読めても涙腺は緩むものです
平均以上だけど
誰かの幸せの為に命がけで生きるのだ。
予告編から時代を超えた恋愛ストーリーかと思っていたら、ラブラブシーンはそれほどなかった。メインテーマは時代によって常識や価値観が変わるって事かな。
福原遥演じるJK百合は学校や母に不満だらけだった。ある日腹が立って家を出て防空壕跡地で寝る。最初はなんだココ?って分からなかったけど、後半になって、そうゆう事かって思い浮かんだ。で、目が覚めると昭和20年。なんで?もしかして雷に撃たれて死んで過去に生まれ変わったのか?それとも夢オチ?モヤってしてると水上恒司演じる佐久間に出会う。初対面でメシご馳走するなんて下心あるんじゃねって思ったけど、ほんと優しい兵隊さんだわ。行き場のない百合はその飯屋で住み込みで働く事にする。松坂慶子演じる女将のツルさん、とてもいい感じです。そして店にやってくる常連の佐久間の仲間たち、特攻隊のハラペコペコ隊。みんないい奴だった。久しぶりの伊藤健太郎君坊主頭だった。みんな歌が下手なのが笑えた。戦争で人が死ぬのが嫌な百合と国民の為に命を捧げようとしている兵隊達、どちらの考えも間違っていないのが面白かった。
ラストは突然?うそ!夢じゃなかったのか?じゃ過去にいた百合は消えたのか?もしかしてこれは過去の自分の体験で、現代に生まれ変わった百合に記憶が戻ったのかな?
最初から最後までかなり泣けました。シアター、泣き声でうるさいくらいだった。
幸せの味 幸せの匂い
初めて予告を観たときから目が潤み、その後も予告だけで泣けてきた本作。ずっと楽しみにしていて、公開初日に泣く気満々で劇場へ足を運びました。
ストーリーは、日頃の不満から母とケンカになって家を飛び出した女子高生・加納百合が、防空壕跡のような場所で一夜を明かすと、そこは戦時中の日本で、事態が飲み込めず動転していたところを特攻隊員・佐久間彰に助けられたことをきっかけに、軍指定の食堂で住み込みで働くことになり、当時の人々の思いに触れながら、出撃命令が下るまでの彰と過ごしたわずかな日々を描くというもの。
大筋は予告で観せているので、ストーリーは概ね予想どおりで、さほど意外な展開はありません。それでも心揺さぶられるのは、そこに人が人を思う純粋なものを感じるからだと思います。形の上では百合と彰のラブストーリーではありますが、私の心に最も響いたのは、愛する者のために笑って死にゆく特攻隊員の姿です。そして、涙をこらえてそれを見送る人々。「お国のため」という言葉に嘘はないでしょう。しかし、その言葉のさらに奥にある思いを、誰も決して口にしません。できません。それでも互いに察し合い、笑顔で今生の別れを告げる姿に涙が止まりません。潔く散りゆくことが美しいとは思いません。しかし、そう思うしかなかった、そう思うことで自分に言い聞かせようとしていたのではないかと思います。ツルさんが、娘の墓参りで「娘が孫と一緒に死ねてよかった」というようなことを口にしますが、これも同じだと思います。
そんな中、現代の知識と価値観をもつ百合が、自分の思いを素直に口にします。当然受け入れられるはずもなく、事態を変えることもできません。抗えない大きな力に、やり場のない怒りや悲しみを感じたことでしょう。一方で、なんの変哲もないカキ氷や花に幸せを感じます。その傍に彰がいて、百合の気持ちが穏やかに満たされていたからだと思います。今までの自分がどれほど恵まれ、守られていたか、それを担ってきたのは誰なのか、この時代は百合にたくさんの大切なことに気づかせてくれたことでしょう。それに気づけば、身の回りのすべてのものに幸せを感じられるのです。
そんな不思議な体験を経た百合が、現代に戻って見せる変容と、佐久間彰の実在を示す手紙が、(いささか唐突で強引ではありますが)最後に描かれていたのも良かったです。彰が夢を語った時から、百合がその道を目指すことはわかっていましたし、手紙を読まずに飛び出した時から、それが後でつながることもわかっていましたよ。でも、いいんです。待ってましたよ!そして泣きましたよ!
そんな感じで予想を裏切らない展開だったのですが、実は思ったほどは泣けませんでした。ハードルを上げすぎたせいかもしれませんが、何かもう一つ突き上げるものが欲しかったなとも思います。あと、百合の心情の変化が、シナリオに沿った表面的なもののように見えてしまい、映像の説得力が薄くてイマイチ共感できなかったせいかもしれません。さらに付け加えるなら、序盤で罵倒した父親の献身は、特攻隊の姿を絡めて最後にしっかり回収してほしかったですね。
主演は福原遥さんで、人々との交流を通して変容する百合を好演しています。共演の水上恒司くんは、「OUT」の副総長からガラリと変え、彼らしい落ち着いた演技が役にハマってます。脇を固めるのは、お久しぶりの伊藤健太郎くん、存在感を発揮した出口夏希さん、懐かしの中嶋朋子さん、この手の役のハマる松坂慶子さんら。中でも、松坂慶子さんの演技から、当時の女性の耐え忍ぶような思いが伝わってきて沁みます。
恋愛要素は低めな戦争の悲惨さを訴えた映画
正直この映画を見るかどうかちょっと考えました。元々戦争を題材にした映画はそれほど好きではないのと、どうせ主人公がひょんな事から昭和20年にタイプスリップして特攻隊員と恋に陥って死に別れて現代に戻るベタな話なんでしょ?って感じであまり見る気はしなかったのですが、評価が良いし、予告編を見て少しは気になっていた映画なので見ることにしました。
まあ、確かに内容はほぼ前述の通りだったのですが、恋愛要素はかなり低めで戦争の悲惨さを訴えたすごく良い作品でした。ここは想像していた内容と全然違いました。また現代に戻った後の展開も読めませんでしたね。ここは見事にやられました。
ラブシーンやキスシーンさえも無い、ある意味潔い作品です。恋愛2、特攻隊員の群集劇が8くらいの割合だったかな。
残念ながらタイプスリップの描き方がちょっと雑だったかな。ここは本当に残念というか勿体無いなと感じました。昭和パートのラストはそれくらいかなり唐突でした。ここがもう少し丁寧な作りであれば星4.5の作品ですね。行きと同じように帰りも防空壕で寝て目が覚めたら現代で良かったと思います。
また、細かいですが特攻隊員が零戦に乗って飛び立つシーンもVFXの荒さがちょっと気になりました。
映画のセットもおそらく当時の様子をほぼ忠実に再現できているんじゃないかなと思います。キャストの配役もなかなか良かったのではないかと思います。特に現代パートのお母さん役が中嶋朋子で昭和パートの食堂の女将が松坂慶子ってはまり過ぎです。
通常の映画のエンドロール時に流れる曲ってどこから借りてきて取って付けたような適当な曲が多いのですが、この映画はエンドロール時に流れる主題歌(福山雅治:想望)がめちゃくちゃ良かったです。この映画の為に書き下ろした曲だけあって、「あたらしい夏 百合薫る丘」の歌詞のところでおじさんは思わずウルっと来てしまいました。
やや屈折した蓮っ葉娘が、戦争体験を経て成長する話。
良い作品だった。
80年近く以前だが、この日本で、確かにあった戦争と、その戦争に人生を翻弄された多くの人々が居たという事実。やはり、絶対に忘れてはいけないし、繰り返してはいけない。
他人の子供を救助して命を落とした父親と、特攻兵を重ね合わせるのは少々無理があるように思うのは私だけだろうか。
誤解を恐れずに書けば、前者はリスクを冒して救助したが結果的に亡くなってしまった事故。後者は、自らの死をもって大義名分や名誉を達成するという、自殺。
両者は、根本的に別物だと思います。
また、作品中、現在、過去を通して、鹿児島県が舞台なのに、お国なまりが、全く出てこない不自然さ。
過去の場面で、大阪出身者(板倉)が、部分的に関西イントネーションだったのがせめてもの救いでした。
映画の冒頭部分ですが、母子家庭で母親がダブルワークしたとしても、鹿児島県は最低賃金が東京などと比べ圧倒的に安いので、多分、手取り総額が20万円に満たないものと思われます。この金額では、母子二人が生活するには、食費、家賃、水光熱費、日用品、消耗品、学費、その他、普通に衣食住をまかなうだけで、他の余裕はないと思います。
どなたかが書いておられましたが、「この親子は金遣いが荒いのか?」的なご意見は、見当違いも甚だしいと思います。(コメントを拒絶されておられたので、こちらに書きました。すみません。)
別の方も書いておられましたが、この状況なら、娘もアルバイトで家計を助けるべき、というのは私も思います。
でもタイムスリップから帰ってきた彼女は、きっとアルバイトで家計を助けることだと思いますよ。
数年前、知覧特攻平和会館へ足を運んで、特攻隊の方々が両親や恋人に宛...
壮大な夢オチ
流れに逆らうとは
『アルキメデスの大戦』を観た時に田中民さんのセリフにドキリとしたのを思い出しました
日本人は最後の1人まで戦い続けこの国は滅びる、しかし日本の象徴である戦艦大和を造りそれが撃沈したら、日本はまだ生き残れるだろうと
志願して特攻に行く日本人を見れば納得出来る言葉です
敵国に負ければ女子供も容赦なく殺されるなどとその頃の日本人は思い込まされていた時代
私がその時代に生きていたらどうだっただろうか
戦争は良くないとか人殺しはしてはいけないとかそんな事言えただろうか
きっと時代の波に流されて生きていたのでしょうね
と考えると、「今」はどうなのだろう?
私は「今」をどう生きているのだろうか?
与えられれる情報をある程度鵜呑みにしてやしないだろうか?
自分で自由に選択しているようで、でもそれはもしかしたら流されているのかも知れない
いつの世も変わりは無いのかも知れない
そんな事を思ってしまいました。
若い人に見てもらいたい作品
戦争はやめましょう
原作は読んでいません。特攻隊を描いているので切なくて悲しい物語ですね。タイムスリップした原因は描かれていないので、そこは無しとしても、現代の高校生の百合が、戦争末期の時代に行ってすぐに順応するのにびっくりです。結末を知っている百合が特攻に反対するのは当然の事で、負けると分かっていて敵艦に突撃などあってはならない事です。本当の特攻隊の人達はどんな想いで出撃したのでしょうか?きっと国のためなどではなく、愛する人や家族のためだったのでしょう。あの時代を見た高校生の百合は、今までの考えや価値観が一変してしまいますよね。だから、現代にいた百合のお母さんに対しての対応が前と後では全く違います。ずいぶんひどい娘だなと思ってた百合が、後でお母さんに自分の想いを伝えるシーンはグッときました。百合、千代、ツル、特攻隊の人、役者さんみんな良かったと思います。特にツルさんの松坂慶子さん、あたたかでした。改めて戦争の愚かさを考えさせられる映画です。
かなりの良作。この時期に放映されがちな戦争映画のおすすめ枠。
今年408本目(合計1,058本目/今月(2023年12月度)9本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
この時期にも、戦闘に関係する映画が多く放映される傾向があります。理由はご存じの通りです。
原作小説を映画化したということですが、その過程に「多少の変更」(主人公の学年変更、父親の扱いの変更)がある点があるようですが、どちらも映画の趣旨からして理解できる程度の変更で、当事者(ここでは、著作者も含め)が納得しているなら、無茶苦茶な改造でない限りOKではなかろうか、と思います。
映画のストーリーについても「特攻隊」という語は出るものの、外国での放映を想定しているのか、「極端に」どちらかを悪・善とみなすような描写は少なくここは良かったです。日本を「善」とするような映画は海外では放映されにくく、その結果「良い作品が海外で知られない」という事情があるからです。
どうしてもストーリーの主人公が高校3年生であるという関係上、「取り方によっては」「ちぎら君みたいな枠?」という疑問も出てきそうですが、一応は「そういう層も取り入れるフシもありつつ、多くの方に見て欲しい」という変更趣旨もあるのかな…と思いました。この手の映画は若い方に多く見て欲しいです。どうしても年配の方や50、60いった方はもう「常識扱い」の者が多く出てくるからです。この意味で「想定年齢層に配慮した最低限の設定等の変更」については個人的には(著作権などがクリアされているなら)問題なし派です。
採点に関しては以下を気にしたものです。
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(減点0.1/特攻隊を「志願」する)
・ 通常、特攻隊を「志願」するという概念があまり考えづらい一方、実在したのは確かですが、この「志願特攻隊」の「志願」の意味は一般的な「自由意志による希望」とも異なるとされるもので(現在では当事者の声が集まってきているため、わかってきている)、この部分は明確に描いてほしかったです。
(減点0.1/主人公のお父さんの扱いについて)
・ 映画通り母子家庭であることは示されますが、映画内では「なぜなくなったのか」についてもふれられます(この点は小説と同じ理由?)。ただ、この「お父さんがなくなった理由」と、主人公が体験するタイムスリップ先での特攻隊においては、同じ「誰かのために身をささげる」という共通項はあるとしても、「誰か」が明確ではない点(「国」という対象は観念しづらい)等考えると、趣旨は理解できますが、父親の件は民法698条(緊急事務管理)と、特攻隊の件は当時の戦争のやり方という「そもそも扱いが異なるもの」です。
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(減点なし/参考/宣伝ビラ(投降推奨ビラ)について)
・ 小説の映画化にあたっては原作が最優先されますが、この時期になると「この場所を空襲するので逃げてください」というような国民に配慮したビラや、「あなたが今日おさめた税金も、毎日のように勝てもしない米軍に対する兵器として作られています」といったビラ(厭世ビラ。嫌になって戦争をやめさせるという趣旨のもの)がばらまかれることが多く、実際に空襲は「それほど多くはなかった」とされます。もっともこれに対し「こんなものは拾ってはいけない」と、「毒が塗ってある」等と言い張り拾うことを禁止した日本側のこうした対応により、無駄に人が亡くなるということはありました。
この点は当時のいわゆる記念館であれば必ず記述があるものであり、この観点からもしっかり描いてほしかったです(映画の描き方だと、アメリカ=絶対悪、のように見えるが、実際はアメリカも原爆を落とすのは手間で仕方がなく宣伝ビラ(厭世ビラ)で士気をさげる作戦にも出た上で(そして拾わないようにと教えられた国民がそれを守らなかったため)、原爆投下といったことにいたっています。
(減点なし/参考/現在の鹿児島県での母子家庭の過ごし方)
・ 現在(便宜上、R5)の鹿児島県の最低賃金は897円です。900円で計算したとして、一般の母子家庭のアルバイトでは、さらに仮に子が学校の前/後に(学校の許可を得て)バイトをしても手取り20~23万年であり、それで「2人暮らしで」優雅に過ごすというのはとてもではないですが、ちょっと無理ではなかろうかと思います(どなたかが書かれていたのでこの点調査済み)。
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