「伝えたい思いがある作品だと思います。」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 ふよよさんの映画レビュー(感想・評価)
伝えたい思いがある作品だと思います。
戦争や特攻のことを若い世代に伝えたいという思いが伝わる映画でした。
若い世代は、テレビを見ず、ネットから情報を得ると思いますが、ネットからの情報は、自分の興味があることだけになってしまうことが多いと思います。
この映画をきっかけに戦争のことを考え調べた人もいるのでは?
チープ、浅い、というレビューも見かけますが、まずは若い人達に観てもらうことを意識した重くなり過ぎない作品だと思います。
中高生などが観客に多いのは、原作者や監督が望んだ通りで、若い人達が戦争について考えることは未来のためにとても意義のあることだと思います。
2時間の映画は、駆け足で時間が足りない印象になることも多いので、伝えたいことに重点をおいて描くのが良いと思います。
今回、タイムスリップの説明に使う時間の余裕は無かったと思うので、自分が未来から来たというような説明がない、タイムスリップスルーにしたことは、私は賛成です。
でも、百合と彰がお互いに惹かれ合う過程が少ないのが残念でした。
2人がすごく思い合っていることを感じればこそ、死ねと言う不条理な命令の残酷さ、大切な人がもうすぐ死んでしまうという苦しみが伝わると思うのですが…
でも、そうなったら過呼吸のお客さん続出だったかも?
(2回目鑑賞後追記:初めは2人の恋の過程が説得力がないと思いましたが、あと数日で死ぬ、戦時中にタイムスリップという、それぞれが極限状態での出会いであることを考えると、何度も助けてくれた優しい人、自分に生きて欲しいと願う人、惹かれ合うのに時間も理由もいらないのかもしれないと思い直しました。)
空襲の中、百合を彰が見つけるところ、きっとツルさんに百合が戻ってないことを聞いて、空襲の中、探していたのだと思うのですが、唐突すぎました。
空襲の中、百合を探しに行く彰、百合への思いを表現できるエピソードのはずだったのにもったいないと思いました。
戻って来て、ツルさんと再会して、「この辺りは奇跡的に焼けなかった」の一言があれば、全然焼けてない町への違和感も少なかったかな?
もし、時間の関係でカットになったのなら、ぜひ、ディスクと配信は、それらを入れた完全版にして欲しいです。
タイトルの出方が秀逸でした。
あの青空は彰が見た最後の景色で、最後に考えた事が「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら、(今度は…)」なのですね。
そして、暗転して「あの花が咲く丘で…」の文字が消えて行き、最後まで百合のことを考えながら命が尽きたように見えました。
荒削りなところはあったかもしれませんが、伝えたいという思いが強い作品だからこそ、これだけの反響になったのではないでしょうか?
(2回目鑑賞後追記:場所は鹿児島の知覧だと思われるのに、場所の設定と方言無しの理由を考えた時に、若い世代の人達がわかりやすいように標準語にするためでは?と思いつきました。戦争の残酷さ、平和な日常の幸せ、命の大切さ、それを伝えるということに徹して、方言によるわかりにくさはいらなかったのでは?どこまでも、『若い人に伝える』を徹底したように思いました。)