「遠い世界の描き方の一つの手段」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 うぐいすさんの映画レビュー(感想・評価)
遠い世界の描き方の一つの手段
主人公が戦時中にタイムスリップするという切り口に驚いた。アニメや漫画・小説では珍しくない設定だが、小説を原作とした作品とは言え、肩に力を入れざるを得ない太平洋戦争の時代を描くにあたり、こういう設定が許されたことに驚く。
本編を観てみると、当時の人物を主人公にするよりも現代の10代を主人公にしたことで、観客の感情移入をより深くさせている気がした。タイムスリップは物語の肝ではなく、あくまで現代人の百合が当時の人々と生活を共にし主体的に深く関わるために選ばれた設定だったことがわかる。
戦後80年近く経ち、本作の制作陣は戦中世代の孫どころかひ孫や玄孫の世代にあたり、作品のインタビューからも時代劇のような感覚で取り組んでいる部分がみてとれた。戦時下、個人の夢や希望よりもはるかに優先されることがあった時代。個人主義の現代からは想像がつかないような世界を我々が自分事として考える工夫として、本作の取り組みはもっと注目されてもいいのかも知れない。
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