「かなりの良作。この時期に放映されがちな戦争映画のおすすめ枠。」あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
かなりの良作。この時期に放映されがちな戦争映画のおすすめ枠。
今年408本目(合計1,058本目/今月(2023年12月度)9本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))
この時期にも、戦闘に関係する映画が多く放映される傾向があります。理由はご存じの通りです。
原作小説を映画化したということですが、その過程に「多少の変更」(主人公の学年変更、父親の扱いの変更)がある点があるようですが、どちらも映画の趣旨からして理解できる程度の変更で、当事者(ここでは、著作者も含め)が納得しているなら、無茶苦茶な改造でない限りOKではなかろうか、と思います。
映画のストーリーについても「特攻隊」という語は出るものの、外国での放映を想定しているのか、「極端に」どちらかを悪・善とみなすような描写は少なくここは良かったです。日本を「善」とするような映画は海外では放映されにくく、その結果「良い作品が海外で知られない」という事情があるからです。
どうしてもストーリーの主人公が高校3年生であるという関係上、「取り方によっては」「ちぎら君みたいな枠?」という疑問も出てきそうですが、一応は「そういう層も取り入れるフシもありつつ、多くの方に見て欲しい」という変更趣旨もあるのかな…と思いました。この手の映画は若い方に多く見て欲しいです。どうしても年配の方や50、60いった方はもう「常識扱い」の者が多く出てくるからです。この意味で「想定年齢層に配慮した最低限の設定等の変更」については個人的には(著作権などがクリアされているなら)問題なし派です。
採点に関しては以下を気にしたものです。
--------------------------------------------------------------------------
(減点0.1/特攻隊を「志願」する)
・ 通常、特攻隊を「志願」するという概念があまり考えづらい一方、実在したのは確かですが、この「志願特攻隊」の「志願」の意味は一般的な「自由意志による希望」とも異なるとされるもので(現在では当事者の声が集まってきているため、わかってきている)、この部分は明確に描いてほしかったです。
(減点0.1/主人公のお父さんの扱いについて)
・ 映画通り母子家庭であることは示されますが、映画内では「なぜなくなったのか」についてもふれられます(この点は小説と同じ理由?)。ただ、この「お父さんがなくなった理由」と、主人公が体験するタイムスリップ先での特攻隊においては、同じ「誰かのために身をささげる」という共通項はあるとしても、「誰か」が明確ではない点(「国」という対象は観念しづらい)等考えると、趣旨は理解できますが、父親の件は民法698条(緊急事務管理)と、特攻隊の件は当時の戦争のやり方という「そもそも扱いが異なるもの」です。
--------------------------------------------------------------------------
(減点なし/参考/宣伝ビラ(投降推奨ビラ)について)
・ 小説の映画化にあたっては原作が最優先されますが、この時期になると「この場所を空襲するので逃げてください」というような国民に配慮したビラや、「あなたが今日おさめた税金も、毎日のように勝てもしない米軍に対する兵器として作られています」といったビラ(厭世ビラ。嫌になって戦争をやめさせるという趣旨のもの)がばらまかれることが多く、実際に空襲は「それほど多くはなかった」とされます。もっともこれに対し「こんなものは拾ってはいけない」と、「毒が塗ってある」等と言い張り拾うことを禁止した日本側のこうした対応により、無駄に人が亡くなるということはありました。
この点は当時のいわゆる記念館であれば必ず記述があるものであり、この観点からもしっかり描いてほしかったです(映画の描き方だと、アメリカ=絶対悪、のように見えるが、実際はアメリカも原爆を落とすのは手間で仕方がなく宣伝ビラ(厭世ビラ)で士気をさげる作戦にも出た上で(そして拾わないようにと教えられた国民がそれを守らなかったため)、原爆投下といったことにいたっています。
(減点なし/参考/現在の鹿児島県での母子家庭の過ごし方)
・ 現在(便宜上、R5)の鹿児島県の最低賃金は897円です。900円で計算したとして、一般の母子家庭のアルバイトでは、さらに仮に子が学校の前/後に(学校の許可を得て)バイトをしても手取り20~23万年であり、それで「2人暮らしで」優雅に過ごすというのはとてもではないですが、ちょっと無理ではなかろうかと思います(どなたかが書かれていたのでこの点調査済み)。