「アルジェリアの女性が置かれた厳しい現実は伝わるが」裸足になって kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
アルジェリアの女性が置かれた厳しい現実は伝わるが
事件に巻き込まれ、足に怪我を負い話すことができなくなったバレエダンサーが、心に傷を負ったり聴覚障害を持つ女性たちと交流しながら自分を取り戻していく話と思っていた。
ところがスクリーンから訴えかけてくるのはアルジェリアで生きる女性たちの厳しい現実だった。主人公フーリアがリハビリ施設で出会った女性たちにはテロによって家族を亡くした女性が多く、聴覚障害によるろう者というより精神的な傷によるろう者が描かれている印象だ。
一方フーリアが怪我をしたときに階段から突き落とした男への捜査の甘さも描かれる。前に観た「聖地には蜘蛛が巣を張る」を連想する。あれも国違えどイスラム圏だった。助けを求めた女性弁護士の消極的な態度や、友人がこの国では未来がないとヨーロッパへ密航しようとするところも含めて、アルジェリアの閉塞感が伝わってきた。
でも、だからなのかフーリアの物語がやや中途半端に感じられてしまった。ダンスを通して皆と交流し、前を向く姿を描く映画としては終わり方がぼやけている。しかも最後の踊りがクライマックスとわかりづらい。いや、それでも感動的ではあった。だからこそもったいない。
ところで、本作でかかる曲で唯一わかったのが「グロリア」。ローラ・ブラニガンが歌っていた曲だが、後で調べてみるとこのイタリア人歌手ウンベルト・トッツィが歌うのがオリジナルだと初めて知った。だから、こっちのバージョンの方が映画でよく使われているのか。40年近く経って初めて知ることもあるんだな。映画とはあまり関係ないけど。
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