「アメリカの陰陽」蒸気船ウィリー 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカの陰陽
アメリカの愛すべき点と憎むべき点がこれだけハッキリと表れている映画もそうそうない。親方に厳しい仕打ちを受けた腹いせのように動物たちを文字通りおもちゃとして好き勝手にいたぶるミッキーマウスは、第一次世界大戦でヨーロッパに苦汁を舐めさせられた1910年代を経たのちに驚異の経済発展を遂げた1920年代のアメリカの姿とオーバーラップする。伸縮自在のカートゥーン作画は今見ても面白く、当時のアメリカの浮かれっぷりを如実に表している。とはいえそれらの陰では貧民や被差別人種が酷い扱いを受けていたわけで、それらを覆い隠すどころか公然と加害している本作は実に横暴と言わざるを得ない。昨今の過度にポリコレ的なディズニーの制作方針は過去の自分自身への強い拒否反応からくるものなのだろうと改めて思った。
コメントする