湖の女たちのレビュー・感想・評価
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3つのストーリーに分散されて、頑張っている主役の松本まりかさんが可哀そう
① 松本まりかさんが演じる介護士が、刑事と謎の恋に落ちる話
② 政府を転覆させるぐらい大問題なのに、若い雑誌記者が一人で取材を任されている薬害事件の隠蔽
③ 身勝手な連続殺人事件と、警察の雑な冤罪未遂事件
の3つのストーリーが、並行して描かれています。
確かに、タイトルは「女たち」なので、それぞれに関わる女性全員を描きたかったのかももしれませんが、共通点は、「湖」=どこにも流れることのない行き詰まった状況だけ???
いやいや、この映画の主役は、①の松本まりかさんが演じる介護士じゃないの? そのわりには、刑事と謎の恋に落ちるような状況に至った理由も軽すぎるし、それまでの人生で何があったら、そんなことになるのか?も、ちょっとしたセリフで説明されるだけで、極めて消化不良です。
一方の、②や③は、動機を明確に説明しているけれど、どちらも、中途半端な終わり方で、①のストーリーを活かすこともなく、何のために必要な物語なのかもわからない。
せっかく、松本まりかさんが、体を張って、渾身の演技をしているのに、これは、本当にもったいない。①のストーリーだけで、映画を作り直してもらいたいと思いました。
まさか原作どおりとは思わなかった。映画としてはもっとおもいきった改編が必要だったのでは。
吉田修一の原作は彼の作品の中ではあまり出来の良いものだとは思わない。あちらこちらから持ってきたモチーフ(薬害エイズ事件や731部隊など)を強引につなぎ合わせプロットを作り出したものの文庫本400ページ弱の枚数では収まりきれず万事、中途半端に終わった感がある。特に分かりにくいのが濱中圭介(映画では福士蒼汰)と豊田佳代(同じく松本まりか)の主役2名であって、彼らの考えや行動は原作でもクリアに描けているかというとそうでもない感じがする。映画化にあたって期待したのはこの2人を実像化して説得力をもたせることであった。
映画を観た感想は、役者2人の奮闘により(松本まりかさんは役柄に戸惑っている感じがひしひし伝わり痛々しかったが)ある程度は成功しているような気がする。彼らの位置づけは「暴力で支配するもの」と「支配されるもの」であっていわばこの世の中の二極構造を体現しているのである。でも映画化にあたっては、周りのストーリーをもっと刈り込んで、この2人を浮かび上がらせて欲しかった。それが映画の映画たるところだと思うのである。
介護施設での殺人や過去の薬害事件、そして更に遡るハルビンでの事々、これらのことを解明する役割として伊佐美刑事と雑誌記者の池田がいる。それぞれ演じている浅野忠信と福地桃子はどちらも好演ではある。ただ彼らは世界が如何に暴力に充ちているかを示すガイド役としているわけであって、彼らに焦点をあてすぎると筋を追うことのみに観客は目をとらわれてしまう。
ちなみに原作では池田は男性である。インテリで雑誌記者としては若干線が細い感じがする池田を女性に置き換えたことは差し支えないものの、池田が闇討ちにあうところはカットすべきではなかった。伊佐美と池田は世界の暴力を映し出す鏡でもあるから。
結論として述べると、映画は原作のプロットを忠実に追いすぎたあまり肝心の主役2人をシャープに浮かび上がらせることに失敗した。映画だけを観た人にはこの2人は変態行為にのめりこんだとしかみえないのでは。
このこと一つにより本作は失敗作と断じることができる。
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