「原作もこんなに分りにくいのか?」湖の女たち 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
原作もこんなに分りにくいのか?
幻想的な予告編に惹かれ、それ以外は全く予備知識無く観賞。
なんとなく楽しみにしていたのだが・・・
【物語】
湖畔の介護施設で酸素吸入で命をつなぎとめていた老人が、ある日の早朝酸素吸入器が停止したために死亡する。警察は殺人事件として捜査を開始する。
若手刑事・濱中圭介(福士蒼汰)とベテラン刑事の伊佐美佑(浅野忠信)は当日施設に居た看護師と介護士から事情聴取を行う。そして犯人と睨んだ介護士松本(財前直見)を執拗に追及する。一方、濱中は介護士・豊田佳代(松本まりか)にゆがんだ支配欲を募らせ、接近する。
また、事件を追って現地に来た週刊誌記者・池田由季(福地桃子)は、伊佐美が長い間追って来た過去の薬害事件の担当刑事だったことを知る。
【感想】
どんな話なんだ? と思いつつ観始める。
しかし、中盤まで“胸糞悪い”という言葉しか浮かばない展開。何を描こうとしているかも全く分からない。
濱中の豊田に対する行動も、2人の関係性も全く意味不明。この2人には実は過去に何かあったのか? 最後にそれが明かされるのかと思いながら観続けるも、結局それも無く、わけの分からないまま終わる。
最後に事件の真相は仄めかされるものの、留飲を下げるような結末も用意されていない。
結局何を描きたかったのか、理解できないままエンドロール。
エンドロールで、「原作 吉田修一」が目に入る。
吉田修一の小説は一作も読んでいないが、吉田修一原作の映画は過去6作ほど観ている。他の作品も、いずれも「ほっこり」とか「スッキリ!」という作風ではなく、どれも人の心の闇や人の弱さを浮き彫りにしたような作品ばかりだ。が、それでも何となく描きたいことは分かる作品で、特に“怒り”、“さよなら渓谷”あたりは俺には刺さり、今も強く記憶に残っている作品だ。 少なくとも“難解”とか“モヤモヤ”という印象は持っていない。
それを考えると、本作だって「原作はそんなに難解な作品ではないのでは?」と思ってしまう。監督(脚本も担当)が、いたずらに芸術作品ぽくしようとした結果こんな分かりにくい作品になったのではないかと疑いたくなる。つまり、ひとりよがりの脚本・演出にしてしまったのではないかと。
原作を読まずに勝手な想像をするのは失礼かも知れないが、そんなことを思ってしまう作品だった。
残念ながら俺の感受性では全く楽しめなかった。