「素材は抜群」グランツーリスモ pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
素材は抜群
実話をもとにした作品だとは驚いた。
めちゃくちゃ興味ぶかいお話です(どこまでが事実なのかは、わかりませんが)。
とにかく素材は抜群。さて、それをどう料理してくれるのか……。
結論からいうと、期待したほどではなかったです。
優れた映画作品が具えているべき、しっかりとした軸や力といったものを、僕は本作から感じ取れなかった。なんだか表面的というか、ちょっと安っぽいというか……。映像には迫力があったのかもしれないけれど(あった、かな?)、映画そのもの、作品そのものの迫力が足りなかった。
テーマは「夢への挑戦」なのでしょうが、その夢を追う人間たちの描きかた、そして人間どうしの関係の描きかたが浅いようで、あまり感情移入できませんでした。ストーリーの疾走感やテンポを優先して映画づくりをしてしまった結果だろうか。
いいたい放題ついでに書くと、トレーナーのジャックを、前半にもっともっと意地悪な厳しい人間に描いたほうがよかったんじゃないか? その後、徐々に2人のあいだに信頼関係と絆が生まれてきて……というふうに。また、ライバルのキャパも、もっといけ好かない、イヤな奴にしちゃってもよかったと思うけど、どうでしょう。
そのほかに、伏線回収がそれほど効果的とはいえないような印象を受けたこと、画づくりが雑な気がしたこと、BGM過多で少々うるさく感じたこと――なども感動が薄れた原因になりました。あと、残念ながら、僕はそれぞれの役者にも、ほとんど魅力を感じなかったです。
この映画でいちばん僕のこころが動いたのは、ヤンとオードリーのカップルが東京の街を楽しむところだったかもしれません。
外国人の目にはTOKYOの街はこんなふうに映ってるんだ、と新鮮だった。
以上、いろいろと書きましたが、やっぱりカーレースはカッコいいな、とそれは素直に思います。
むかし、村上龍が書いていた「速いものは、美しい」という言葉や、開高健が語った「男が夢中になれるのは、危機と遊び」といった言葉がよみがえってきました。