グランツーリスモのレビュー・感想・評価
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無双の走り
これが実話!ゲーマーがプロレーサーになるなんて…
スピード感や飽きさせない展開に加えて、シュミレーションマシンに乗り込む一体感が新鮮で、まるで体を共有しているような感覚に陥りました!
家族の中で浮いてる感じとか…実際、こういう状態の子、沢山いるんだろうな…リアルな離脱感…
師弟関係、仲間達との修行の日々…別れ…生死をかけた本番のレース、…その葛藤…
何者かになりたくて、あがく姿はグッときます、胸アツ!!
鑑賞した後の自分の運転がヤバい…
あんな映画見せられると、自分もあんな運転できそうな気持ちになっちゃって💦
コーナリングで無いはずの、あの矢印が視える!!💦
いやいやいや、私は安全運転!!
生涯手放しません……!!
私は特に車…スポーツカーに興味があるとか、レース物が好きとか、そういうのは無いんですけど(^_^;)
映画の中で、スピードと一緒に色んな事を置いてこれました。
映画を見た後の運転速度には、くれぐれもお気を付けて。。。
爽快なシンデレラストーリー!
文句のつけようもなく清々しい!
夢を持ち続けた「ゲームオタク」のシンデレラストーリー。タフなメンタルと肉体を努力で手に入れ、チャンスをモノにする。ライバルと拮抗し、才能を開花させながら一気呵成に駆け上がる姿は、本当に爽やか!
元気を取り戻したいとき、もやもやする時、前に進めない時、また見返したい。
傷だらけのゲームレーサー。
◯作品全体
『グランツーリスモ』ファンである主人公・ヤンの自室から始まる本作。父からのサッカーの誘いを断って自室でゲームを楽しむ作品の導入や「ダメだったらリセットすればいい」というセリフによって、本物のレーサーとは遠いところにいるヤンを映し出す。将来を心配する父に対しレーサーになる夢を話すヤンはどう見ても現実的ではないが、ヤンの並外れたドライブスキルをリアルでもバーチャルでもダイナミックなカメラワークで演出していたのがまず良かった。
ただ、これでそのままプロレーサーになってしまったら他のレーサーたちと同じ。何千回もサーキットのコーナーを経験してきたヤンに足りないのは実体験だ。それはレースの実体験だけじゃなく車同士の接触やクラッシュの危険性だったり、時には観客をも巻き込んでしまうレーサーの責任感も含んでいて、そうした実体験がヤンの身体も心も傷つける。
インタビューの練習でも優しさとか弱さを滲ませていたヤンはそうした実体験に押しつぶされそうになるが、ソルターの檄とソルター自身の過去に触れることで再び前へ進む。この展開はグッときた。傷だらけのまま立ち直れず終わったしまったソルターだからこそ、ヤンに再びハンドルを握らせることができる。物語の展開としては「この作品独自」ではないけど、サーキットの事故現場から再びアクセルを踏む、という演出はレーサーを主人公にした本作ならでは。
ル・マンのレースでアクセルを踏み込めなくなったヤンに対して怒りを与えてアクセルを踏ませる展開は、作品を見ていた時には少し物足りなさを感じたけど、ヤンがシムレーサーとして馬鹿にされてきた経緯であったり、レーサーとしての道を歩むまでやるせない時間を経験してきたことを考えると、確かにここで爆発させるのは憤りなのかもしれない、と感じた。
心と身体で味わった傷がゲーム上の数値ではなく、実体験としての経験値を語る。負の感情さえも力に変えて一つ上の順位を目指し続けるヤンは、まさしく傷だらけのゲームレーサーだった。
◯カメラワークとか
・ゲーム画面からリアルのレースへディゾルブするカットとか車が分解されてゲームをプレイするヤンになるカットとか、双方がリンクするような演出が面白かった。
・レースシーンのカメラワークは駆け引きしてるところで空撮カットが入ったりして少し物足りなかった。車もヤンも熱量があがる演出として、トルクが動いたりエンジン音が上がるのはすごくよかったんだけど、冷静すぎる画面が多かった気がする。
◯その他
・実際にあることだろうし実際にいるんだろうけど、スポーツを題材にした作品に出てくるダーティな相手役は正直魅力的じゃないなあ。話が展開させやすいからだろうけど、アカデミーのライバル・マティみたいな敵対するけど勝負はガチンコ…みたいなキャラの方が見ていて気持ち良い。
思わぬ掘り出し物!「RRR」「トップガン」に比肩するザ・エンターテイメント!
9月末期限のチケットがあったので、上映している映画の中で評価が良かったこれをたまたま鑑賞。
おいおい、何だこれはっ!? 面白えじゃねえか!!
今年のエンターテイメント系映画のマイベストだよ。
4DXが合う!車と合わせて揺れまくるシート、水しぶき。ジェットコースターで落下しているときに思わず笑みがでる、まさにあの感じ! 新しい映画体験だわこれ。
・ゲームをプレイしているシーンから、車の部品がスケルトンで映し出され、実車に移行するというビジュアル効果も素晴らしい。
・GT-Rかっけえ!
・日産&SONY。いい仕事してんなあ!(再開してよ!)
・手に汗握るシーン満載!
・プレステ&グランツーリスモ欲しくなった。もちろんステアリング&ペダル&シートも!
帰り途、ついつい愛車と遠回り。運転楽し。サントラ買うぞ。
ゲームから実物へ。
これが実話だというのが凄いが、音ゲーからピアノを本格的に習いだし演奏会で弾くまでになった息子が間近にいるので個人的には全然あり得る話だと観ていた。当然ゲームと実物のギャップ(身体にかかる負担、失敗すればリアルな車や人が傷つく、リセットボタンのように気軽にやり直しできない)に苦しむが、その世界に立つ一つの入り口としてゲームという経路は確かにあり得る!
「楽しんで上達なんてできるはずがない」「我慢」「下積み」「修行」、、、、
「ゲームからリアルへ」は決してそうではない新たな可能性を見せてくれる。
・リフティングやシュートゲームからサッカー選手へ
・バッティングゲームやストライクアウトゲームから野球選手へ
・手術シミュレーターから医者へ
・企業再生ゲームから、腕利きのコンサルへ
・ロケットのフライトシミュレーターから宇宙飛行士へ!
いつかこんな人たちが当たり前のように輩出されてくる気がして、ワクワクがとまらない。
ゲームのクオリティとチーム日産の発想が融合して生まれたシンデレラストーリー
本作の中心にあるのはゲームではなく、本物のカーレースと師弟の絆の話なので、ゲームそのものがどうすごいのか、という細かい説明はさらっと流される程度だ。
それでも、ゲームをやり込んだ感覚がリアルドライビングで通用すること(それはゲームがそこまで緻密に作り込んであることを意味する)、本物のレーサーとしてのセンスを判別するフィルターになり得ていることで、私のようなプレイ経験のない人間にも「グランツーリスモすごい」と思わせてくれる。
ゲーマーが本物のレーサーになるという夢のような、フィクションだったらなろう系に分類されそうな話が実話だというのだからぐうの音も出ない。元をたどれば、ソニーのゲームのクオリティとチーム日産の柔軟な発想から生まれた物語だとも言える。日本人としてちょっと誇らしい(と、全くの部外者だが言ってみる)。東京ロケもそこそこあるし、平岳大も出てくるし、思ったより親近感の湧く要素が多い映画だ。
ゲームをしている時に陥る実車を運転しているような感覚、本物のレースの最中にゲームのコントローラーを操っているように感じるイメージを、ちょっと戦隊モノっぽくも見えるCGでうまく表しているのも面白い。レース中の順位をゲーム画面のように車の上に表示したりする表現は、実際ゲーム繋がりの話なので違和感がなく、かつレース展開が分かりやすくてよかった。
白眉は、レースや事故のシーンの迫力(実際の事故の動画を見たが、そっくり映画の通りだった)と、ル・マンの場面で終盤に向けて緊迫したレース展開とともに高まってゆく高揚感だ。
人間ドラマの面は、師匠であるジャック・ソルターとの絆にかなり重点をおいた描写がなされている。
ル・マンに悔いを残した元レーサーが若い才能に夢を託す。この構造はつい最近「春に散る」でも見たが、師弟愛というのはやはり普遍的なテーマなのだろう。ソルターがもうひとりの主人公という見方もできそうだ。それくらい、彼に関しては丁寧に描かれていた。
当初はシムレーサーがリアルレーサーとして通用するかかなり懐疑的だったソルターが、ヤンの才能と努力を見て考えを改め、彼の味方になってゆくさまは見ていて熱い気持ちになれる。
また、ヤンの真面目な父親の、不器用な愛情も印象的だ。親の気持ちもよく分かる。ゲーム漬けの息子が突然本当のレーシングカーに乗るとか言い出したら、まあ普通の親御さんは止めますよ。
しかし、プロサッカー選手だった父の、何かひとつのことを突き詰めるという気質をヤンが尊敬し、受け継いでいたからこそ、レーサーとして結果を出せたのかもしれない。
一方で、ソルターと父親以外の登場人物は相当描写をはしょった感がある。
クライマックスのル・マン24時間レースよりも前のパートは、かなりちょいちょいかいつまんだ感じで進む。特にGTアカデミーに入ってから選抜されるまでは、10人のメンバーが揃ったと思ったら、あれよあれよという間に減っていき、ヤンとの人間関係はほぼ描かれずモブに近い扱いだった。
ヤンの彼女(名前を忘れた、作品サイトにもパンフにもキャスト紹介がない)はヤンとの血の通った絡みがあまりなく、憧れの女の子がレーサーになったら寄ってきてくれた、程度の扱いで、まるで90年代くらいの映画のトロフィーワイフならぬトロフィー彼女のような扱いだ。この子はぶっちゃけいなくても物語に支障ないのでは?
リアルレーサーのライバルであるキャパも、怒りやすくて、レース中に嫌がらせをしてくる、ただそれだけの人物で描写が浅い。
これはおそらく、最も重要なレースシーンと師弟の絆の描写に尺を取った結果で仕方がないとは思うが、工夫の余地も感じた。
物語と実話の違いをひとつだけ書いておきたい。映画ではレースでヤンが事故を起こし、観客の死に打ちひしがれるがソルターの励ましで立ち直り、その後ル・マンで一念発起、トラウマに打ち勝って結果を出すという流れになっているが、実際の事故はル・マンでの3位入賞の2年後に起こっている。この点が、観客の死に関わる事故を作品の感動のために再構成しているとして、一部批評家から批判されているようだ(Gamingdeputy Japanの記事より)。
このアレンジをどう評価するかは見る側の解釈次第だが、現実に観客が亡くなっている事案かつ物語の要の部分なので、事実との違いは知っておいたほうがよいように思う。
ちょっと批判めいたことを書いてしまったが、映画館で見る価値のある作品であることは間違いない。ゲームのプレイ経験があれば、この夢物語をさらに身近に感じられそうだ。
レース史上世界一過酷な夢への挑戦を、スクリーンでリアルに描き尽くした驚きの実話
「ゲームのチャンピオンから本物のプロレーサーになった」というニュースを聞いたことはあったが、詳しいことを知らずに何年も経っていた。そして、本作でその想像を超える実話の実態を改めて見せつけられた。
日本発の人気ゲーム「グランツーリスモ」を生み出したプレイステーションと、日本が世界に誇る日産。2008年、彼らはゲームのトッププレイヤーを世界中から選抜し「本物のプロレーサー」を育成するドライバー発掘プラグラムを立ち上げた。その名は「GTアカデミー」。
「楽しんでいるゲームをそのままリアルにやるだけだから簡単? いやいや無理!」と誰もが考えるだろう。死と隣り合うリセットできないリアルなサーキットには、運動技術・体力・精神力をとことん鍛え上げても過酷な世界。無謀な挑戦と思われながらも、「GTアカデミー」に選ばれた者たちは、プロレーサーという夢に向かって選ばれるまで訓練し続ける。ゲーム内で自ら車の組み立てをし、ロードレースの感覚を脳や反射神経などで掴んでいる彼らには「無理」という発想がない。むしろ自信に満ち溢れている。
この夢のために全力を捧げたのは、ビジネスマン、元レーサーのエンジニア、そしてゲームのプレーヤーたち。実話だからこそ、それぞれの威信をかけた様々な人との繋がりと各々の挑戦が、見る者の心を揺さぶる。
過酷なレースの場面は、これまでの「レース映画」に劣らない迫力とアクション。そして本作のプロレーサーの並外れた才能の描写を目の当たりにし、見せ場のシーンの音楽の上手さも掛け合わせテンションが上がるのだ。
プロレーサーに選ばれる主人公の家族関係も所々に描かれていてヒューマンドラマの面もあり、レースファンでなくても心に響く要素が多い。
久しぶりに、地道で豪快な映画を見た気がする。それにしても、あのNISSANのレーシングスーツはカッコいい。選ばれた人しか着用できないところも尊い。
見ていただければわかるが、このハリウッド映画では、例えばオーランド・ブルームが日産本社に来たりと実際の日本のシーンも多く出てきて、日本人だからこそ反応できるシーンが多いのも見どころの1つである。
実話…と思ったら時系列は変えてるらしい
吹き替えも声優豪華なのでオススメ
GTファンとしてはゲームの効果音が鳴ってたり、ラインがでたり、コースがおなじみだったりで頬が緩む
「ゲーマーに実際に〇〇させてみる」というネタは、かなりよくあるが本作は実話ということで、創作のものとは一線を画す
作品テーマ的に、ゲーマーがゲームでの経験で成り上がる演出が物足りないかな、もう少しゲームしているシーンとミックスしたり、やりようはあったと思う
それに主人公と他のキャラクターとの違いを描くとか
挫折する。気づきを得て成功するというプロセスの描写も足りてない。
スポーツ映画チックに演出したかったのだろうがいまいちテーマに合っていない感がある。
面白いけど…
実話を元にしてる映画だけど脚色され過ぎて何処までが本当のことなのかが全然わからない。
ノンフィクションかと思って見始めたためなんだこれはとなってしまった。
ただレースシーンは本物の映像で迫力あり素晴らしい!
主人公が無双するだけの映画。元から天才なので何もかもうまく行きすぎ。
原作未プレイ、実話の元ネタ知らない、車に興味なし。話題になってたのと、私もゲーマーなので鑑賞。
主人公が無双するだけの映画だった。元から天才なので、漫画の主人公のような弱い状態から成長してって強くなる過程を見る楽しみがない。レース中も「どうせあっさり勝つんでしょ」って気持ちが先行して、勝ってもあまり興奮できなかった。
さらに主人公の家庭環境(両親健在、離婚してない)もよく、恋人も居て、欠点がなさすぎる。父との衝突も小競り合い程度だったので、もっと大喧嘩しても良かった気がする。欠点がない主人公って感情移入できないものね...。
ジャック(デヴィッド・ハーバー)は良い味出てて良かった。ストレンジャーシングスで好きになった俳優。
最初はゲーマーを見下しながらも、徐々に心を開いていき、ヤンと友情が芽生えるのは感動した。ヤンからウォークマンをもらうシーンと、ジャックがレーサーをやめた理由を語ってヤンに夢を託すシーンが好き。
原作ゲームや車好きの人からしたら、色んな見方とか楽しみ方があるのかな。決してつまらない作品ではない。だけど、どちらも興味ない私はとくに熱狂できるほどの面白さは見出せなかった。
実話に基にした安定したストーリー
グランツーリスモのトップ・ゲーマーから本物のレーサーを育てるという企画の実話を基にした映画。ストーリー展開としては、オーソドックスで安定した感じ。息子の夢に否定的な父親との葛藤、憧れつつ一歩踏み出せない彼女の存在、ライバルとの競争、本物のレーサー達からの洗礼、事故によるトラウマ、最後のチャンス。実話をどの程度反映しているか分からないが、あるある設定。その後の展開がなんとなく読めるにせよ、レース映像の迫力で飽きることなく、レースの凄さを堪能できる。
ゲームで何千回も経験していたル・マンのレースを最後に持ってきて、彼独自のコース取りを回収するのも予想できたけれど、悪くなかった。
自分はこのゲームをやったことはないけれど、この映画を見ると、やってみたくなった。
強いて言えば、ゲームと本物のレースの違いをあぶり出し、それを克服するような場面を強調するともっと良かった。Gがかかることによって、アクセルやブレーキが遅れるとか、恐怖心が働いて踏み込めないなど。
実話を基に作られたとは思えないストーリー。 事実は小説よりも奇なり...
実話を基に作られたとは思えないストーリー。
事実は小説よりも奇なり。
内容は男子が一度は憧れる無双系サクセスストーリー。
そこに親子愛、友情、挫折、苦悩など映画的エッセンスを混ぜ込んで優等生的に仕上げた作品。
何十人もいるはずのチームスタッフとの関わりを極限まで削りライバルも最小人数に設定することで誰が観てもわかりやすく作られている。
所々ゲームのサウンドが使われていたりオープニングムービーのオマージュ的シーンがあったりとゲーム好きにも楽しめる要素がある。
オーリー歳とったな。
実話なのが驚き
映画だけの話ではなく、本当に実際にやったことというのが最大の驚きでした。
実話だけに感動もひとしおでした。
映画のテンポも良く、レーシングシーンも迫力があり、この作品は映画館で見たかったです。
主人公の頑張りをさることながら、指導者であるジャックとの関係性が最高でした。
Don't think, act!
「逃げるのは恥ではない」「迷ったらアクセルを踏め!」お~!こういう映画だと全く知らず。思いがけない内容だったし実話とは!とても興奮して面白かった。色んなサーキットが出てきて、ニュルブルクリンクが最後から2番目に登場してとても嬉しかった。そこでお客さん同乗で走ってくれるプロのレーシングドライバーでなおかつホテルも経営していたザビーネ・シュミッツさんが数年前に亡くなったのはとても悲しかった。この映画を見ることできたら喜んだろうと思った。
今後どこかの映画館で上映していたら必ず行きたい🏎️
嬉しい作品。日本が世界に認められたような気がした。
この作品はグランツーリスモと言うソニーが制作したプレイステーション用のレースゲームが元になっている。
そのゲーム自体、実写映像と変わらないほどリアリティーに溢れているレースゲームだったがその為か、そのゲームのトッププレイヤーをリアルでレーサーにしようと企画されたという内容である。
リアルとゲームの違いに苦しみ、仲間達と葛藤しながら自分の譲れない好きなことで成功を納めるサクセスストーリーであり、ゲームやアニメーションが進んでいる日本でも同様の内容がもしかしたら⋯と考えてしまった。
また、日本初のゲームがその様に評価され海外で映像化されることに日本人として喜びを感じ、ソニーに対して誇らしさと尊敬の念を覚えた。
そういう職業でもあったのですね。レーサーというのは。
<映画のことば>
「事故はお前のせいじゃない。俺のせいだ。もっと早くにピットへ…。」
「そんな…。」
「フルークプラッツは、飛行場という意味だ。あそこでクルマは逆風で舞い上がり、不幸な事故に。」
「僕が走らなければ…。」
「レースは、死と隣り合わせだ。」
「僕が運転していた。」
「自分を責めるな。」
考えてみれば、当たり前のことながら、レーシングカーは、より軽く、より速く作られているわけですから、それだけ事故も起きやすくなっているのだと思います。実際のところ。
本作で、ヤンが遭遇したというこの不幸な事故も、現実のもののようです。映画の設定としてではなく。
(実際の事故の映像が、ネットの上にあるような記述もあります。)
ゲーマーとして、ゲームと向き合っているだけなら、こんなふうに、レースを観戦して楽しんでいた人を死なせることも、あり得なかったー。その自責が、痛いほど伝わってくるようでした。画面から滲(にじ)み出て来るように。
レーサーという職業の、いわば「負の側面」を垣間見てしまったヤンの心の痛さは、果たしていかばかりなものだったでしょうか。
ゲーマーを経て、それが、いわば「憧れの職業」であったが故に、その心痛も、格段のものだったと推察します。評論子は。
時として、モータースポーツには付き物の「事故」に辟易してしてしまい、レーサーを引退までしてしまったチーフ・エンジニアのジャックには、そのことについて、焼けるような後悔の念が、拭い去りがたく、自身につき纏(まと)っていたようです。
そして、自分と同じ轍を、ヤンには踏ませたくないー。ジャックのその想いも、また一方で、胸に刺さります。評論子には。
その「相克の痛さ」というのか…。
また、一方では、この世界でも、人が人を想うという、やっぱり人と人と、人との繋がりの大切さ、温かさが、胸に染み入ります。
佳作であったと思います。本作は。
(追記)
<映画のことば>
お前が何者かは、事故ではなく、それにどう向き合うかで決まる。ゴールまで走れ。
けっきよく、ジャックがレーサーとしてのヤンの能力を見いだしたのは、ジャック自身も気がつかなかったブレーキのフェードに、ヤンは気づいていたから。
ジャックは、欧州日産の執行役員・ダニーの反対を押し切ってまでヤンを合格者に選んだ本当の理由は、その点にあったことは、疑いがありません。
何が起きてもジャックは、レーサーとしてのヤンを信頼するー。
その二人の関係性も、観ていて清々しい一本でした。本作は。評論子には。
(追記)
<映画のことば>
「誰も期待していない。気楽にやれ。
お前にならできる。」
ゲーマーからモノホンのレーサーになり、初戦に臨んで緊張の極限にあったヤンに、チーフ・エンジニアのジャックがかけた一言。
これ以上の励ましの言葉は、ちょっと思いつかないのではないでしょうか。
その温かさが、胸に染み入るようです。
(追記)
<映画のことば>
「これは夢?」
「10台玉突き事故と同じくらい現実。」
考えてみれば、レーシングゲームの優れたゲーマーを、モノホンのレーサーにしてしまおうというのは、あながちは荒唐無稽な考え方ではないのかも知れません。
何故ならば、プロ(パイロット、新幹線・電車の運転士)用のシミュレーターだって、言ってみればゲームの「親玉」とでもいうのか、ゲームがもっともっと立派になったものとでも言えるでしょうから。
(追記)
親は、子供が選び取ろうとする進路を、無下に否定すべきではないのだろうと、改めて思います。
本作を観終わって、評論子は。
安定した職業に就いて、波乱のない人生を送ってほしいと願うのは、子をもつどの親にも共通の思いだとは思うのですけれども。
息子が選び取ろうとする進路を最終的には(?)否定しなかったヤンの両親は、その点、立派でもあったのだと、評論子は思います。
「復活」をキーワードに、ド迫力のレースシーンでエンタメに振り切った作品。
ゲームの「グランツーリスモ」はプレイしたことがない。
おそらくゲームのファン層が好きなものが全部詰まっているのだと思う。
そして、一般的な映画ファンが好きなものも全部詰まっている。
本作のレースシーンは実際に車を走らせて撮影したとのことで、非常に完成度が高い。映画館で観たら大興奮だろう。
主人公のヤンは「グランツーリスモ」オタクの青年。引きこもりではないのだが、フリーターのようなことをしながら「グランツーリスモ」ばかりやっている。父親は彼を社会復帰させたくていろいろと口出しをするのだが、ヤンの夢はカーレーサーになることだ。それを口にすると、現実を見ろと言われてしまう。
一方、英国日産のマーケティング担当ダニー・ムーアは、日本の本社でプレゼンをしていた。日産の経営を立て直すために「グランツーリスモ」で選抜したゲーマーを本物のレーサーに育てて、レースに出場させるというプランだ。その提案は認められて、夢のようなストーリーが展開していく。
ヤンはグランツーリスモオタクで、レーシングチームが日産なので、プレイステーションと日産のプロモーション映画のようになっている。本編中ずーっと、プレステと日産のロゴが映っている。以前のジャッキー映画で三菱自動車の看板が必ず映っていたが、あの比ではない。ダニエル・クレイグ版の「007」もセレブ向けの広告みたいな映画だったが、あれよりも広告量は多いと思う。
日産は2020年は大赤字で、2021年には黒字になっている。
本作がどの時期に制作が決定されたのかわからない。
いずれにせよ、ニート同然だったヤンが成長していく物語であることからわかるように、本作のテーマは「復活」だろう。
2020年はコロナ感染が広がりはじめた時期でもある。そして、コロナ禍において映画産業も大打撃を受けた。映画館もどんどんつぶれた。
そして2023年5月に、WHOがコロナの緊急事態宣言を解除。
本作は2023年8月25日にアメリカで公開。ようやく規制が解除されたタイミングで本作のような「復活」をテーマにした、映画館で観たいレースシーン満載のド迫力映画が公開された。
時代の空気を読む能力に長けた人材が製作サイドにいたのだと思う。
製作費94億円。興行収入190億円。
本作は8月11日公開予定だったが、7月に公開日を見直して、25日に延期した。7月21日から「バービー」「オッペンハイマー」が公開になるから延期したのだろう。賢明な判断だと思う。
こうして考えてみると、本作は商業ベースであらゆる方向から考え抜かれて作られ、公開された作品なのだとわかる。
rottentomatoesでは批評:65%、観客:98%。いかに娯楽に徹したかよくわかる結果になっている。
ニール・ブロムカンプ監督は「第9地区」以降あまりパッとしない印象だったが、これで盛り返したと思う。
上質な映画館と共に心ゆくまで感動する映画体験
自身の23歳の誕生日プレゼントを兼ねて109シネマズプレミアム新宿にて鑑賞。自分がクルマ好きになったのはこの為じゃないかと思うくらい、ロマン溢れる映画だった。最高の体験だった…。
小学生くらいに隣の友達の家でやりこんだグランツーリスモ3や自宅でやってた4、6と思い出は深い。また、ヤン・マーデンボロー選手は日本のカテゴリーにも参戦していたのでその存在と経緯は知っている。しかしながら、GTアカデミーの創設から観れるとは。夢だけでなく、その代えがたい熱き情熱にも震わされる。
単純な夢物語にならず、様々な視点から生まれる緊張と感動はスポ根と括りには収まらず、1つのプロジェクトととしての偉大さを感じさせる。世界を駆けるサーキットとたぎる轟音。クルマ好きで良かったと感じさせてくれるエキゾーストは聴いててたまらなかった。そして何より、その没入感はプレミアムで観て良かったと何より感じた。
1つのことを続ける者を馬鹿に出来る奴は居ない。同時に、誰かの支えがあってこそ立てる舞台がある。また誰かが栄光の表彰台に立つ時、私の心を震わせてくれる。そうだ、シャンパンはまだ取っておこう。
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