「愛を終わらせない方法」四月になれば彼女は ジョーさんの映画レビュー(感想・評価)
愛を終わらせない方法
サイモンとガーファンクルの「四月になれば彼女」は、アコースティックなとても美しい曲。
その曲の中に、「かっては新鮮だった愛も移ろいでいく」という歌詞がある。
誰しも、愛には必ず終わりがあることを感じているということだろうか。
俊(佐藤健)の妻弥生(長澤まさみ)の言葉が意味深だ。
「愛を終わらせない方法は手に入れないことよ」
彼女は愛への回答を残して、俊の前から忽然と消える。俊の元恋人の由春の存在を知りながら。
弥生は、俊に感じた愛の瞬間に涙を流し、その涙は、やがてはこの愛の瞬間もやがては移ろいでいくことを思うから溢れる涙だ、と言う。手に入れないことという逆転的な発想が、なぜか胸を打つ。
俊をめぐって、愛をかなえたはずの弥生と愛をかなえられなかった由春の想いが錯綜する。
その心の風景(獣医の弥生にとっては動物園のキリン、カメラ好きの由春にとっては俊と行くはずだった海外の景勝地)がとても美しく描かれている。さすがミュージックビデオ出身の監督だと思わせた。
俊は、愛を手に入れるとそれだけで安心しきってしまったように見える。弥生は、究極の愛を夢想し、次第に研ぎすまされていく。そこには輝きさえ感じる。彼女自身はけっして移ろいではいない。そう実感した。
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