劇場公開日 2023年11月10日

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「やりがいって」駒田蒸留所へようこそ ココヤシさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0やりがいって

2023年11月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

5回も転職を繰り返し、今のニュース・サイトの記者の仕事にもやりがいを感じられない高橋光太郎(小野賢章)。
そんな光太郎が編集長の安元広志(細谷佳正)にウィスキー蒸留所の取材を命じられる。ウィスキーの知識がまったくない光太郎は尻込みするが、インタヴュー自体は駒田蒸留所の新進気鋭のブレンダー、駒田琉生(早見沙織)が行い、光太郎はそれを記事にまとめるだけだと説得されて引き受ける。
銘ウィスキー「独楽」で知られた駒田蒸留所は、長野県神城断層地震(?)で設備に甚大な損害を被り、社長の駒田滉(堀内賢雄)は原酒造りを断念して、焼酎造りで急場をしのぐ。兄の駒田圭(中村悠一)はそれを受け容れられずに会社を跳びだし、同業他社の桜盛蒸留所に転職。やがて滉は過労で亡くなり、美大に通っていた琉生が美術の道を諦めて家業を継いだのだった。
うだつの上がらない光太郎は、「独楽」復活に向けて奮闘する琉生がまぶしすぎて、初め反発する。だが、琉生が迷い悩みながらウィスキー造りの道を選んだこと、また「独楽」復活が決して平坦な道でないことを知るにつけ、応援するような気持ちに変わっていく――といったストーリー。
製作陣がウィスキー造りを丹念に取材したらしく、細部の描写は説得力がある。長野の自然をバックにした絵も美しい。
「最初からやりたいことがあってその仕事に就く人」は珍しくて、「たまたま携わった仕事のなかにやりがいを見つけていく人」のほうが多いんじゃないかということを考えさせられる。

ココヤシ