「続けるか、やめるか」駒田蒸留所へようこそ akkinaさんの映画レビュー(感想・評価)
続けるか、やめるか
不自然に絶叫して興醒めさせられるようなキャラクターもおらず、上質なウイスキーを嗜むかのように、終始静かに味わえる作品だった。
さて、高評価なレビューの中には、序盤の光太郎のダメっぷりにイライラしたという意見も少なくない。たしかにもっともな反応だとは思うが、個人的には、ああした人間臭さの露呈をそこまで嫌悪する気にはなれなかった。
というのも、程度の差こそあれ、誰しも多かれ少なかれああいう一面を持っているのではないだろうか。いい年をした大人なら表立って口にはしないものの、態度の端々から察せられる場面は決して珍しくない。
加えて、「仕事で自己実現できない人間はダメだ」といった昨今の風潮も、そうした感情を増幅させているように感じる。そこへ、まさにそれを体現しているかのような存在――琉生と協働することになったのだから、思わず悪態が口をついて出てしまったのも無理はない。
本人も好きであの態度を取っていたわけではなく、これまでは単に巡り合わせがよくなかっただけなのだろう。信頼できるビジネスパートナーや上司を得たことで、ようやく本来の持ち味を発揮できるようになった、という見方もできる。
これはあくまで持論だが、人間は良くも悪くも、周囲の環境に大きく左右される存在だ。たとえ不本意な形でのスタートだったとしても、環境次第では今回のようにうまく回り始めることもある。そうして山あり谷あり、紆余曲折、照る日も曇る日も重ねていくうちに、それがいつしか「天職」へと変わっていくのだろう。
一部の人にしか通じない話で恐縮だが、こうした感覚は本作の制作会社・P.A.Worksが手がけてきた過去の「お仕事シリーズ」にも通底している。「花咲くいろは」や「サクラクエスト」は望んだわけではない場所からの出発だったし、「白い砂のアクアトープ」も中盤に似た構図が描かれる。「SHIROBAKO」でも、メインキャラクターは夢を叶えているものの、周縁には同様の背景を持つ人物が配置されていた。
人生の岐路に立たされたとき、「何をするか」と同じくらい、「誰とするか」も重要な指針になるのだと、改めて思わされた。やっている「こと」には満足できなくても、共にやっている「人」に価値を感じられるのなら、もう少し踏みとどまってみる余地はあるのかもしれない。
