「もはや何を言いたいのかすら理解不可能…。」札束と温泉 yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
もはや何を言いたいのかすら理解不可能…。
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★ 7/13 減点幅を多少修正し上方修正
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今年234本目(合計885本目/今月(2023年7月度)20本目)。
(参考)前期214本目(合計865本目/今月(2023年6月度まで))。
極端な地雷を踏んでしまったという印象はあります。ただこの映画、成り立ちが特殊で(後述)、そのノリで作ってしまったからこうなったのではなかろうか、と思えます。
結局のところ、映画の筋としては、大分県別府市(一応クレジットは出るが「実際のものとは関係がありません」等とも出るし、大分県や別府市の紹介等も一切ない)の旅館を舞台に、お金のやりとりがどうこうという趣旨の内容で、旅館の中で99%のストーリーが成り立つし、原則「時間の入れ替え」の描写もないので理解はしやすいです。
ただ結局のところ法律系資格持ちの観点でいうと何がなんだかわからない点というのがすごく、何のチェックもしていないんじゃないか…と思えます。実はこの映画、最初に「作成:cosaic」と出ますが、ここは、関西圏ではボードゲーム等の販売で知られる企業です。つまり、マーダーミステリー等と同じ感覚で映画を作成して、内容のチェック(特に、最低限の法律的な解釈論)を一切しなかったためにこんなワケのわからない内容になったのではなかろうか、と思えます。
さすがにこれはどうか…というレベルで、もはや「採点拒否レベル」になるのですが、そういうわけにはいきませんので…。
早速採点いきましょうか…。
まぁすごいこと…。70分くらいの映画で、最初の10分くらいで「こりゃ何なのか」と思って途中退出しようかなと思ったくらいです…。
採点に関しては、減点1.9(スコア3.1)を3.0まで切り捨てています。
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(減点0.7/弁護士法72条との抵触)
・ 他人の債権を譲り受けて回収を行う行為(いわゆる回収屋)は、弁護士以外にはできません(行政書士でもできない/ただし、払うことを双方同意している状態で、単に「ついでに当人に会いに行く用事があるから払っておきます」のようなことまでをも規制する趣旨ではない)。これは強行規定であり、いわゆる「回収屋」がリアル日本で摘発されるのと同じです。
※ 「回収の代理」と言っていますが、基本代理権が何なのかも不明(一応は有権代理のように見えるが、見方によっては基本代理権がある中だの表見代理にも見えるが…)で「回収の「使者」」というのが妥当な気もしますが…。
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(減点0.5/遺失物法と報酬の扱い(「1割もらえる」等と言っているところ)
・ 積極的に他人から詐取ないし奪った金銭について遺失物法の報酬請求権(事務管理の特則)が適用されることはありません。
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(減点0.4/民法90条による絶対的無効となる法律行為)
・ このような、映画で描かれている行為は絶対的無効(公序良俗に反する行為)であり、双方同意の追認によっても遡って有効にはなりません(絶対的無効)。
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(減点0.3/旅館業法との関係)
・ 同法6条は「営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない。」とありますので、この映画のようなトリックは成立しません(本名などを書かなければならないので、適当に旅館等を介して違法行為ができるのではない)。