ペナルティループのレビュー・感想・評価
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面白いと思う人にだけ分かればいい、というスタンス
デビュー作に続きオリジナル脚本で臨んだ荒木伸二監督は、この第2作で「これ以上のループものは出てこないよね」というものを作るつもりだったという。確かにサスペンス系のループものでは、主人公が殺されて意識がなくなるとその日の朝に戻っていたり、大切な人が殺されてしまうのを回避するために何度も戻ってやり直すなど、被害者側の視点で描かれる筋が多い。一方本作では、恋人を殺された主人公・岩森(若葉竜也)が復讐のため犯人の溝口(伊勢谷友介)を殺す行為が繰り返される、つまり(仇討ちとはいえ)加害者側の視点でループするという点が斬新だろうか。
ただし、意図的なのか、あるいは予算や尺の事情なのかはわからないが、観客の理解や感情移入を助ける説明になりうるストーリー上の要素をかなり省略しているので、そうした要素を想像で補完しながら鑑賞しないと楽しめないだろう。恋人・唯(山下リオ)との出会いは描かれるが、犯人を殺して復讐したいと思い詰めるほど深い仲になる過程は描かれない。ループが起こる“仕組み”は途中で説明されるが、どんな理由でどういった経緯でその仕組みが作られたのかは語られない。ループ内で殺される側の溝口の意識や記憶をめぐる状況も次第に明かされ、そこから少しばかりユーモラスな転調もあるのだが、そうした状況を実現させる“仕組みの裏側”を想像すると、倫理的なまずさを思ってしまう。
ネタバレを避けるため具体的なことは書かないが、最後まで観てこういう話だったと知らされたところで、独創的というよりは独善的だったかなという感想。CMやMVでキャリアを築いた監督らしく、たとえば水耕栽培工場の広大な屋内で若葉竜也がただ一人働いているシーンなど印象的なビジュアルもあっただけに、面白いと思う人にだけ分かればいいとでも言いたげな間口の狭さがもったいない。次はほかの脚本家のシナリオを演出するか、共同脚本で撮ればもっと視野が広がり客観性が増すのではと期待する。
【今作は復讐の相手を殺して目が覚めると”おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。今日の花はアイリス。花言葉は”希望”です。”とラジオから流れるループの日々を送る男の姿を描いたSF作品である。】
■朝6時に目覚めた岩森(若葉竜也)は”おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。今日の花はアイリス。花言葉は”希望”です。”と流れるラジオを聞きながら、身支度をして家を出て、水耕栽培の会社に行き、恋人・砂原唯(山下リオ)を殺した溝口(伊勢谷友介)を殺害する。
翌朝目覚めると周囲の様子は昨日のままで、溝口もなぜか生きている。状況が掴めないまま、岩森は何度も復讐を繰り返ししていく。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・東大卒の荒木伸二監督の初長編作のディストピア・ミステリー『人数の町』は、可なり異色な作品であったが、今作も可なり異色である。
作品の中で展開される世界には現実感が最初から無いのだが、その理由が再後半の明かされる作品設定はナカナカである。
・岩森と溝口が何度も殺し殺されを続ける中で、徐々に会話を交わし、途中では一緒にボーリングもするのである。そして、溝口が岩森に言う台詞。”今日も俺を殺すのか。”
・砂原唯と溝口は何か関係があるようだが、それは敢えてか明かされない。砂原唯を最初に岩森が見つけるシーンで、彼女は何処かの海岸で、書類を燃やしている。質問をする岩森に彼女は言うのである。”質問禁止。”
■途中から、徐々に物語構成が分かって来るところが、チョイ惜しい。どこかの事務所で”何度でも復讐する”と言う契約書に同意する岩森。
そして、最後半に彼が見ていたのは、”何度も岩森を殺す事で、復讐を果たした気持ちになるVR世界”に居た事が分かるのである。
多分、砂原唯は自分が望んだように岩森に殺されていて、岩森は何処かで生きているのだろう。
だが、ラストの自動車を運転する中で、事故を起こした岩森が、心配して声を掛けた女性に血だらけの笑顔で”大丈夫です。”と答える表情は爽やかなのである。
<今作は”復讐の相手を殺して目が覚めると”おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。今日の花はアイリス。花言葉は”希望”です。”とラジオから流れる復讐の日々を描いた作品なのである。>
伊勢谷友介もここまで落ちたか
あの伊勢谷友介がこんなクソみたいな役に出るようになったか、、、それしか残らないような映画。
そもそも一回殺されるだけでも相当痛くて嫌だろうに、最後は全然「ほら、殺せよ」みたいな感じになっちゃっているだけで、もう白けるんだわ。自分が殺されることに協力的になっちゃダメでしょ、緊張感全然無くなるんだわ、それやられると。
そうなったら、あとはもうどうぞ勝手にやっちゃって下さい、と観客は置いてけぼり。もうはよ終われ、と思うも、面倒くさいことにどんでん返し的なオチまで付けちゃって。もういいんだって、そういうのは、遅いの、もう何したって手遅れ。
あー、伊勢谷友介もお金困っているんかねえ。全然オーラ無くなって、肌も全然ガサガサしているし。やっぱり薬やっちゃダメだよねえ。広末と一緒に落ちるところまで落ちそう。
余白の深さ
ペナルティループ──欲望の代償と人間の成長
海岸で燃える紙片。
その灰の底に、かすかに見えた「極秘」の文字。
この一瞬が、物語全体を貫く暗い影を象徴している。
『ペナルティループ』は「タイムループサスペンス」と呼ばれるが、SFでもファンタジーでもない。
むしろ、未来の技術を背景に、人間の感情と倫理の普遍性を問いかける作品だ。
最初に湧き上がる感情は、悲しみと寂しさ。
しかし事実を知ることで、それは怒りと憎しみに変わり、やがて復讐心へと転化する。
その復讐は、VR空間で繰り返される「死刑執行」という形をとる。
だが、プログラムは冷酷だ。
抵抗は許されず、イレギュラーは即座に修正される。
人間の感情が変化しても、システムは変わらない。
この不一致こそが、作品の核心だ。
面白いのは、ユイという女性の沈黙だ。
彼女は何も語らない。
ただ、海岸で紙を燃やす。
その紙片に刻まれた「極秘」という断片が、彼女の背負った絶望を暗示する。
それは会社を守るためだったのか?
それとも、彼女自身の正義を貫くためだったのか?
もしその秘密が明るみに出れば、困るのは会社ではなく、会社が握っている「人質」なのだろう。
ユイはその構造を知りながら、数年間、沈黙を続けてきた。
そして、追われる身となり、駅で「帰る」と言いながら、逃げるように主人公の車に戻ってきた。
主人公は、ユイの秘密を知りたかった。
しかし、彼女は決して語らない。
「質問禁止」──その言葉を繰り返す彼女に対し、主人公はやがて悟る。
彼女が話さないことは、もうどうでもいい。
彼女が言った「あなたが作ってくれるオムライスもペペロンチーノもみんな好き」という言葉だけが、永遠の真実だ。
死にたいと願い、殺されるまま殺された彼女。
その背後にあった絶望は、最後まで語られない。
だが、その絶望の中で、彼女は主人公との幸せなひとときを作ることができた。
この思い出を抱いて、彼女は死を選んだのだ。
ペナルティとは何か?
タイトルにある「ペナルティ」は、単なる罰ではない。
主人公は、復讐という欲望に駆られ、未来のサービスを利用した。
その瞬間、彼は自分の感情をシステムに委ね、自由意志を一部放棄した。
この選択こそが、彼に課せられたペナルティの始まりだ。
「喪黒福造」的な構造──欲望を満たす契約の代償として、彼はループという罰を受ける。
毎日同じ殺人を繰り返すことで、復讐心は虚しさに変わり、やがて「殺すことをやめる」というイレギュラーを生む。
この過程は、欲望の代償としての精神的ペナルティであり、彼の成長の条件でもある。
ユイもまた、覚悟を決めていた。
秘密を守るために死を選んだ彼女と、欲望を超えて「質問禁止」を受け入れた主人公。
二人は異なる形で、自分の欲望を超える覚悟を示した。
だから、この作品は「罰」よりも「成長」を描いているが、成長の条件としてペナルティが不可欠だったのだ。
そして主人公は学ぶ。
VRではなく、生きている現実の中でこそ、幸せは見つかる。
事故で顔から血が流れても、「生きている」と感じることが、幸せの第一歩なのだ。
「大丈夫…ですか?」
「大丈夫で~す」
──それでいいのだ。
ボウリング場のシーンはちょっとだけ良かった。
今日は死ぬのにはいい日だ
予告編で重大なネタバレしてる
新たなループ作品
何処が現実かわからなくなっていく
コンセプトがぐちゃぐちゃ
復讐の連鎖
↑こう書くと誤解されそうだけども、そういう引きでも良かったかなぁなんて余韻を持ちながら劇場を後にしたもので。僕は好きですね。最近の邦画"こぢんまり"ループものは秀作が多くて嬉しい。そもそも日本人のSF感覚にはピッタリ来るのかも知れませんね。「サマータイムマシンブルース」も含めて以前から粒揃いですからね。
「観たことないもの!」という程ではないのですが、途中まではユーモア含めつつ混沌としていって後半一気に畳む剛腕は嫌いじゃないです。前作の「人形の町」が畳み方で個人的な趣味に合わなかった事を孕みつつの鑑賞なのでフラットに観られたのも良かったかな。若葉くんはやっぱり最高。伊勢屋氏、久々で嬉しかったしやっぱり好き。がんばってね。
タイムループで何度も同じ人を殺すんだけど結構笑える作品。 本年度ベスト級。
こんなにも笑える映画だと思わず。
笑えてホッコリする作品だった。
本作の構成がお見事。
序盤から訳が解らない展開なんだけどタイムループを繰り返す毎に本作の全容が解き明かされて行く感じ。
若葉竜也さん演じる何だか怪しい施設で働く岩森。
恋人の砂原が殺され、その犯人をある理由によりタイムループで何回も殺して行く展開。
何度も殺される溝口。
前回の殺され方を知っておりそれを回避するシーンが面白い。
何回も殺し殺される二人の感情の変化に笑える。
もはや友達の様(笑)
殺された砂原が怪しい感じなんだけど真相は解明されず、スッキリとはしなかったのは残念。
ラストのオチは何が言いたかったのか?謎でした。
アイリスの花言葉は希望。
黄色いアイリスは復習と言うのを覚えてしまいました( ´∀`)
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