劇場公開日 2024年2月16日

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「めっちゃ面白かった」ボーはおそれている Raspberryさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5めっちゃ面白かった

2024年9月2日
Androidアプリから投稿

母親は極めて巧妙なやり方で、子どもを依存的な幼児のまま支配し、思う通りにならない時は報復として子どもに罪悪感を植え付ける。

昨今、過指示・過干渉・過保護に育ったの多くの人が大人になってもなお、脳内母親の支配に苦しんでいる。

本作は超猛毒級の毒親育ちのボーの物語。同時に、満身創痍のボーを通して現代のアメリカが表現されていて面白かった。支配者の猛毒にやられた庶民の生活は完全に破綻し、倫理も宗教もヒッピーも機能しない。企業だけが儲かる社会。狂った幼児性。

さて。
「チャンネル78を見て!」え?トゥルーマン・ショー?だけど、ボーはここではまだ自分の人生が母親にスパイされてることに気付かない。

森では、ひょっとしたら実現できていたかもしれないパラレル・ワールドを体験する。あれ?愛する三人の息子がいるのに、オレはセックスしたことないぞ?

そして、帰宅して全てを理解する。ボーの人生の関係者はみな母親の会社の社員だったこと。屋根裏部屋に閉じ込められていたのは自分の半身と男性性(父親)だったこと。

子どもの愛情は全て母親が享受すべきものだから、マーサを排除し、エレインを排除。息子に対する母親の恨み節を炸裂させる。そして、自分に愛を注いでくれなかった息子を告発し、厳粛なる裁きを陪審員に求める。

ボーの人生の関係者はみな母親の会社の社員なのだから勝ち目なし。
唯一の味方の弁護士が居なくなり、ボーの精神は崩壊した。

ところで、どんな映画もこれから始まる映画が何を語るのかはオープニングで表現される。本作は、羊水から出た直後の主観ショットだった。
母親が子どもを出産した喜びが全く伝わってこない。怒り、苛立ち、鬱屈とした思いだけ。
一人の人間として存在することを祝福されなかった男は、母親の羊水に呑み込まれておしまいということか。

Raspberry