劇場公開日 2024年2月16日

「分からないけど、面白い映画」ボーはおそれている ふぃじーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0分からないけど、面白い映画

2024年2月20日
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★世の中には「分からなくて、つまらない映画」と「分からないけど、面白い映画」がある。本作は間違いなく後者だ。

★アリアスター監督の映画は、ヘレディタリーもミッドサマーも「身近で温かいはずのもの(家族や共同体)が、実は一番恐ろしい」ということで共通していると思うけれど、本作もそこは同じ。ただ、あくまで主人公の主観(幻覚、幻想)で物語が進んでいくので、観客は恐怖より滑稽さや不可思議さに目がいってしまう。多くの人が、本作の感想として「笑えた」「可笑しかった」と言っているけれど、素直な感想だと思う。

★物語を通して、ボーが常に不安であり、その根底にあるものが「罪悪感」であると明らかになる。この「罪悪感」が難しい。アブラハムの宗教を信じる人々は、神に対する罪悪感(原罪と言い換えてもよい)を意識の根底で抱いていると、聞いたことがある。ボーもユダヤ人だ。欧米の人々には理解できるのかも知れないが、日本人にとっては、ちょっと理解しづらい面があるかもしれない。しかし、敢えてその意識そのものを鑑賞(観賞)するスタンスで臨めば、本作は楽しむことができると思う。演技や音楽は素晴らしいし、何より画が美しい。見とれてしまう場面がいくつもあった。

★アリアスターの映画が好きなホラー好きはもちろん、ホラーがあまり得意でなくてもホアキン・フェニックスが好きならば間違いなく楽しめる。上映時間が長尺なのが些か気になるが、ホアキンの全力の演技を見れば納得。監督がカット出来なかった気持ちが分かる。劇場で見たほうが没入感も増すと思うので、上映中にぜひ。

ふぃじー