「不思議の国のボー」ボーはおそれている sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
不思議の国のボー
アリ・アスター監督作品は初見です。うわさ通りの奇妙な世界観に様々な感情を抱いた作品でした。
例えるなら「不思議な国のボー」がふさわしいかと。
まるで、主人公のボーが不思議な世界を旅する映画でした。ただし、大人の不条理でいっぱいの…。
冒頭、ボーの人物像や生活環境が描かれ、現実とも非現実とも言えない奇妙な世界観であると思いつつもコメディータッチが可笑しかった。が、物語が進むにつれ少しずつ常識や倫理観とのズレに違和感を抱く。深く考えるほど理解から遠ざかっていくような感覚が次第に強くなりました。これがサイコ作品なんだろうけど。中盤から笑いと恐怖と不可解が入り混じった複雑な心境でした。
唯一、救いはボーでした。変化の激しい世界観の中で鑑賞者側と同じ反応を示すボーにだけ安心感が得られました。それでも過剰反応だったけど。この非常識なサイコ世界と過剰に反応するボーのマッチング感、サイコとコメディは紙一重の世界なのかもしれないと今さら。
その安心感もホアキン・フェニックスの演技力あってのことでした。ナポレオンといい、ここまで人間の感情をさらけ出せるベテラン俳優も最近では少ない。そのうち喜劇を演じてほしいほどに。
鑑賞後はしばらく無心でした。理解に疲れました…。3時間もの長編で思考回路をショートさせて物語を受け入れさせるのが監督の狙いだったのかも。それでもホアキンの演技と怖いもの見たさの好奇心が勝って結末まで集中できました。
結局、ボーが恐れていたものは…
それは鑑賞すれば分かると思います。男性ならなおさら…。奇妙な旅だったけど、すべてに合点がいったような。アリ・アスター監督を通して、映画の可能性を改めて認識しました。
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