劇場公開日 2024年2月16日

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「有名になった前2作と比べるとリアリティにおいて劣る」ボーはおそれている やまちょうさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5有名になった前2作と比べるとリアリティにおいて劣る

2024年2月18日
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鑑賞方法:映画館

怖い

アリ・アスターさんがある種のカルト作品監督として有名になったのは「ミッドサマー」くらいからと思います。が、偶然にも私はその前の「ヘレディタリー」から目をつけていて、いずれの2作も映画館で不快度MAX(笑)で鑑賞した記憶が新しいです。

カルト宗教、ドラッグ、怨霊、悪霊の類(?)、極度の社会的ストレスなどなど・・要因をあげたらキリがないですが、現代の社会問題に通じる何かしらの原因で狂ってしまった方々が常軌を逸した行動をとるという・・・人間自体の不気味さ怖さを切り取るのが本当にうまい監督さんだと思います。

今回は肥満体でハゲ散らかした見た目中年男性、精神的に不安定極まりなく、強迫観念がいつも頭を埋め尽くしてる様な方が主人公。医師からカウンセリング受けて向精神薬の処方を受けつつ・・・既に出オチの状況です。

仮に現代が舞台ならこの主人公のかなり老けた見た目にもかかわらず、初老のおっさんの私よりかなり年下(1975年生まれとのこと)なんか・・・と設定見て唖然としました。ホアキン・フェニックスさんのうだつが上がらない、情けない人オーラの出し方、演じ方が素晴らしいと思いました。

日々精神的に追い込まれ病んで居てそれどころでない主人公のボーが父親の命日に母親の元(実家)に里帰りするというミッションが浮上。
薬物中毒者、犯罪者、不法移民(おそらく)が徘徊するスラム街のオンボロアパートからの旅立ちからして不幸と苦難と理不尽の連続です。予定通りに行くわけなんかなく状況を打開しようとすればするほどドツボにはまる悪循環。

その環境下において考えられる最悪な結末が面白いくらいに現実化するっていう点で悪夢を通り越してさながらコメディ作品の様です。

彼と彼の母親との過去の因縁、関係性が徐々に明らかになりつつ事態はさらに醜悪な方向に向かっていって・・・というストーリーですが、映像、音響効果含め「不快な表現」は各イベントが分かりやすく大変残酷で明瞭な印象を受けました。

しかし彼が違法なもの含めてドラッグ(手段含む)を常用させられている環境下において「彼の妄想が一部映像化した」との疑念が生じざるを得ず、妄想の映像化など表現の幅を拡げようとしたことで想定外にリアリティさを削いでいた様に感じます。

その点だけみると監督の過去作のある種吹っ切れた現実直視のリアルホラー路線からは外れるのかな、と思いましたよ。

また、これってそもそもホラー、サスペンス仕立てなだけで狙いはそこにないのかも。

欧米って映画の評価なんかみると社会的地位が低い人がさらに失墜するのをバカにして笑う・・・っていう風潮があり日本人の共感性の強い感覚からするとちょっとどころじゃくむしろ正反対なのですが、もしやその範疇の映画なのかも、と疑念もいだきました。

やまちょう
おじゃるさんのコメント
2024年2月20日

共感&コメントありがとうございます。
おっしゃる通り「彼の妄想が一部映像化した」のだと思いますが、現実との境界線が見えなさすぎて、こちらまで気が変になりそうでした。😵‍💫

おじゃる