「死霊の棲む血だまりのアパート」死霊のはらわた ライジング 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
死霊の棲む血だまりのアパート
サム・ライミが描いた禁断の“死者の書”。
その封印が再び解かれる…。
これまでライミによるオリジナル3部作、2013年のリメイク作、2015年にはTVシリーズが作られてきたが、本作は本作だけの独立。
シリーズを見てなくても見れる(シリーズのファンにとってはオマージュやネタ満載だとか)、現代リブート。
その一番の特徴は、シリーズに特別詳しくない私でも一目瞭然。舞台設定。
人里離れた山小屋から、LAの古アパートに。
山奥の小屋という不気味さは勿論だが、ほとんどアパートの一室という密室スリラーの要素を加味。
除き穴からのショット、ダクトを通って部屋に侵入、クライマックスのエレベーターから…などアパートならではの特性を活かした見せ場を設け抜かりなし。
ある夜、LAを突如地震が発生。
その地震によってアパートの地下に陥没穴が…。
その穴から見つかったいずれも古ぼけた写真、レコード、ある本…。
本を開き、レコードを掛けた事で…。
“血劇”の幕が開く…。
アパートに閉じ込められ、解き放たれた死霊の餌食になる人々。
シングルマザーのエリーと3人の子供、長男ダニー、長女ブリジット、次女キャシー。
ある理由からエリーを訪ねてきた妹のベス。
エリーが死霊に取り憑かれ、家族を襲う。
邪悪な存在になってしまった母親と、それを信じられない/受け入れられない子供たち。
ベスが訪ねてきた理由。未婚で妊娠し、その相談。惨劇に出くわす事になり、お腹の子を守れるか。
甥姪たちにも魔の手が…。守りきる事が出来るか。
話自体は単純であってないようなものだが、必要最低限の設定は用意。寧ろ、これだけで充分。
その分、本作最大の見せ場に全力投入。
もうとにかく、これでもか!ってくらいの、血!グロ!ゴア!残酷描写の連打。
本当に絶対に!くれぐれも!コレ系が苦手な人は見ないで下さい。
死霊に取り憑かれ、眼球や肌の色が変わる不気味なショッキング描写。
死霊が口から吐く大量の嘔吐物。
ナイフが身体や腕に突き刺さる。ガラスを飲み込む。痛々しい描写。
死霊の襲撃。目玉を食いちぎり、身体を引き裂き…。
子供に被害は及ばない…なんて安心するなかれ。さすがR18ホラー、子供にも容赦なく。
圧巻は血のエレベーター。かの『シャイニング』の血の濁流を彷彿。(と言うか、完全なるオマージュでしょう)
クライマックスはまさかのフュージョン! 死霊のおぞましい異形。
おっ、こんな所にチェーンソーや粉砕機が。血の終幕を飾るのに使わない手はないね。
シャワーか雨の如く辺り一面飛び散る血!肉片!血!肉片!
リメイク版も痛々しさと残酷描写に容赦なしだったが、本作も負けていない。…いや、以上かも。
ドラマ性やテーマ性などエレベイテッド・ホラーの要素一切ナシ。とことんの恐怖演出や残酷描写には天晴れなほど。
リメイク版もそうだが、またまたライミの抜擢で、新鋭ホラー監督登場。
ベス役リリー・サリヴァンのタフな魅力と熱演、エリー役アリッサ・サザーランドの怪演、子役たちも奮闘。
レコードの声はシリーズお馴染みのあの人!
オリジナルのようなブラックユーモアはなく、リメイク版と同様のシリアス作風だが、出し惜しみナシの強烈グロゴア描写がある意味ブラックユーモアのようなもの。
『スクリーム6』に続き全米でヒットした極上ホラーがまたしても日本未公開…。本作、音響設備の整った劇場で観てれば恐怖もインパクトも凄かったんだろうなぁ…。
ラスト、一応死霊は退治。
あるアパートで人知れず起きた恐怖の血劇は幕を閉じたかに思えたが…。
本作の開幕シーンはお馴染み山奥の小屋での惨劇。湖から浮かび上がった死霊の背景に、堂々と“EVIL DEAD RISE”のタイトル!
そして所変わって、本筋。“一日前”。
そう、このアパートの血劇から、死霊はすでに“ライジング”していたのだ…!