「美しくもやがて怖し」北極百貨店のコンシェルジュさん LSさんの映画レビュー(感想・評価)
美しくもやがて怖し
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原作未読。美術が私の好きなM. Sasekの絵本『This is London (とか都市名のシリーズ)』を彷彿させ懐かしく楽しい。キャラデが独特だが、動物と人間を同一空間で演技させるには適しているかも。
お客様が大事な相手を思い遣る気持ちを、百貨店のコンシェルジュやスタッフたちが商品提案という形で後押しする。ほろ苦くも心温まるエピソードが最後まで続き何度も涙した。
が、EDへの引きで百貨店が、人間社会から隔絶したような奥深い山森の中にぽっかりと存在していることに驚く。
開幕時、動物と人間が人類の文明様式で共に暮らしている前提のファンタジー設定なのだと気にしていなかった。だが後半、北極百貨店は顧客である絶滅した動物に気持ちよくなってもらうためのテーマパークだと明かされ、ラストがこれである。
顧客とは?実は客の実体などないのではないか。客も百貨店もバーチャルで、人間が「動物たちは満足している」と思うことで絶滅させた悔悟の念から逃れるための場所?
だとしたら、動物を自らの生息環境に帰すのではなく征服者の文明に適応させて消費生活を送るのが幸せ、と考えるのは植民地主義以外の何物でもない。最悪である。
それよりは、絶滅動物を生命工学技術で復活させるプロジェクトの実験体が顧客(百貨店は人里離れた研究施設に併設されている)と考える方がまだマシか。
まあこれらは妄想として、実は人間のエゴについて色々考えさせるテーマではある。
コンシェルジュのスカーフの柄が素敵で、グッズがないかと思ったらスカーフそのものが売っていた。使う機会がなく買えなかったが。
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