愛にイナズマのレビュー・感想・評価
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笑って泣いて感情が忙しい映画
この作品から強く感じたことが2点あります。
1つ目は、理不尽な社会で信念を貫いて働くことの難しさや、やるせなさです。
「長いものに巻かれろ」じゃないですが、経験の長い者のやり方や組織のこれまでの在り方を“絶対的な在り方”として主張してくる人はまだどこかにいることでしょう。その存在の下で、新しい意見や考えをもつ人がいくら主張をしたところで相手にされないという辛さに共感することができました。
2つ目は“つながり”の重要性です。1つ目に挙げたことを乗り越えることができるのは、家族、友達、新しい人との出会いなどなどの人とのつながりのおかげかもしれないと感じることができました。中には、人とのつながりという支えがあったとしても、自分の夢を理不尽な社会が奪ってしまうことで大きな希望を失い、命を絶ってしまう可能性が潜んでいるという命の“儚さ”や“危うさ”とは人生と隣り合わせなのだと思わされもしました。
上記したように比較的重い内容のシーンもありましたが、家族との掛け合いや信頼を置ける人との掛け合いで笑ってしまうシーンが多々あり、楽しく作品をみることができました。
私がこの作品を見たときは、館内に人が多かったので笑いに包まれていたことがあったので、これがその証拠になると思います。
私はプログラムを買ったのですが、そこには監督のこの映画に込められているメッセージが書かれていたので、作品の理解を深めたい方にはおすすめします。
今さらアベノマスクをネタにされても
前作から2週間で公開された石井裕也監督・脚本の新作なのだが、語りたい・訴えたいものがいろいろあるのか知らんが、それらを整理できてないまま出されちゃった印象で、練られた脚本とは到底思えない。
アベノマスクやら給付金やらコロナ禍での社会派風のネタはホントにただのネタでしかなく、1500万円繋がりもぐだぐだ会話もコメディとして一切笑えない。池松君の恐竜好き、若葉竜也のカトリック入信、松岡茉優の赤へのこだわりなどのキャラ設定も意味不明。父・佐藤浩市の取ってつけたような過去バナには1ミリも共感できないし、兄妹たちは消えた母親が心の傷になっている訳でもないし、これ、どこが家族の物語なの?
うんざりするのは、自殺や死の話が無駄にいくつも出てくること。また、振り込め詐欺グループが許せないからと殴り込みに戻るとか、なにかってーとビールで乾杯するとか、今どきどういうセンスなのか。時折挿入されるスタンダードサイズのカメラの撮影画面も意味や効果がまるでわからないし…。
松岡が劇中で使いたいというエピソードを、理由や意味がないと三浦貴大が批判すると、松岡はこれは自分の作品なんだからそれでも入れたいと言うんだけど、これって本作への監督自らのエクスキューズなのかな? 前作・月で少しはがんばってると思えた石井監督だが、茜色やアジアの天使の印象同様、やっぱ自分は楽しめない作風の人だと再認識してしまった。
リアルとリアリティー
仕事が予想以上に早く終わったため、ちょうど良い時間帯の映画を探して遭遇した本作。
全体としては、否定的な意見の方と近い感想で、前半部の嫌なキャラ&展開にイライラさせられて本作を選んだことを後悔しかけるも、佐藤浩市さんの出
番が増えてくるあたりから持ち直し、なんとか最後まで見届けられた……という印象でした。
恥ずかしながら、石井監督の作品は初体験だったので、偉そうなことはまったく言えませんが、合う・合わないで言うと合わなかったです……。
(俳優の皆さんの演技は最高でした!)
しかし、不思議と視聴後にも複雑な後味が残る作品だったのも確かで、いろいろと場面を反芻して考えたくなる内容でもありました。
個人的に、どうも落ち着かなかったのは、冒頭、主人公が「だって私、見たんです」と話す、飛び降り自殺を煽る野次馬の下り。これを見て以降、各所に登場する「え? こんなやついる?」というステレオタイプに感じられてしまう脇役を見るたび、「だって私、見たんです」と監督に言われているような気がしてしまい、それが妙な雑音になってしまった感は否めません……。
確かに、現実になさそうな出来事が、現実に起こることってあると思います。それが、きっとリアルでしょう。
ただ、そのリアルをそのまま映像で突き詰めるのであれば、それはノンフィクション、ドキュメンタリーの領域になるのかな……と思ったり。
(もちろん、それでも、そのまま映像にはできないのだと思うのですが……)
作品をフィクションとして世に出すならば、ただ「私、見たんです」と強弁するのではなく、視聴者が「あ、これは確かにあるかも」というリアリティを持たせてあげることが、やっぱり必要なのではないかと。。
でも、そんなことを思えば思うほど、あのクソいまいましい助監督に加勢をしているようで、またなんかモヤモヤしてしまったり……。
(演じた三浦貴大さんはすばらしかったです!!)
物語後半の、オレオレ詐欺の主犯格グループに対し、いきなり喧嘩をふっかける家族って、そこだけを抜き出せば「そんなやついないだろ」という話なんですが、鑑賞中は「ん?」と思ったものの、そこまでの抵抗感は感じなかったので、やはり、そこに至る経緯を自分が知っているかどうか=作中で描かれているかどうか、が大事なんだなと。。。
もしかしたら、飛び降り自殺を煽る野次馬も、秘書の親族を人前で侮辱する社長も、必死に解約をお願いする老父と家族を前に笑いをこらえる受付スタッフも、大声で悪事を暴露するオレオレ詐欺の主犯格グループも、映像になっていないだけで、そうせざるを得ない事情があったのかもしれない。
ただ、それが描かれていないだけ。
そしてきっと、そこが自分にとって、物語にスッと入れるかどうかの分かれ道なのかな……とも。。
もしくは、非常にリアル寄りの背景や映像の質感の中に、突然、ステレオタイプ感の強い人物が登場することで、自分のリアリティーラインがぐらぐら揺れて気持ち悪かったのかもしれません。
(これが、映画の冒頭でいきなりオレオレ詐欺グループと家族の大立ち回りから始まって、そこから時間を過去に戻していく……みたいな作品だったら、そこまでリアリティーラインは気にならなかったのかも。別の作品になっちゃいますが……)
そういった意味で、映画を観る、フィクションを楽しむ際の、自分自身の好みがあらわになる、そんな面白い機会になったとも言えるかもしれません。
出演陣は豪華ですし、演技も魅力的。
前半と後半で作品ががらっと変わり、前半部の溜飲を後半部で下げてくれることはなく、なんとなく「私の冒険はこれからだぜ!」的な終わり方ではありましたが、最後は温かい気持ちになれる作品。
前半の嫌な気分は二度と味わいたくないので、もう一度観ることはないと思いますが、これからしばらく、ふとしたタイミングで思い出しそうな、そんな作品ではあったかなと思います。
どこかで吐き出さないと気持ちが悪かったため、駄文をつらねてしまいましたが、万が一、最後まで読んでくださった方がおられましたら、本当にすみません。。そして、ありがとうございました!!
アベノマスクも役に立つ
いろいろ突っ込みどころはありましたが、楽しく観られました。三浦貴大さんのゲス野郎な感じ、この業界で働いていると非常にリアルで笑うに笑えず(泣)。主人公と似たような境遇も経験しているので、非常に共感することができました。マスクは我々が全てを曝け出すことができないことの比喩なんでしょうね。血が滲むシーン、日の丸に見えたのは気のせいでしょうか(笑)。
とにかく前半が辛い。けど終わりは良い
辛い、辛い、生まれて初めて途中で帰りたくなるくらい前半は辛かった。ずっとイライラが続く最初の20分が特にひどく、二章が終わる1時間くらいまで何度時計を見たことか。とにかく嫌なやつしか出てこなくて反撃もないから腹の底から嫌気がさした。後半はスカッとするはずと信じてなんとか我慢。結果、スカッとまではしないけど、まあきちんと上書きされる展開があってホロリ要素も笑える要素もあって、見終わった感触は悪くなかった。
過剰な悪役は常套なのに、これに限って何が自分の琴線に触れたのか、なぜそんなに嫌だったのか。とにかく一番我慢ならなかったのが荒川。今どきそんな台詞言うか?古いんじゃ、と思うのになぜか聴き過ごせない。自分の考えを上から押し付け、自分が正しいと信じて相手を平気で馬鹿にする人に現実でも困っているから、その誇張版が偉そうにしてる姿が幾らフィクションでもたまらなかったのかも。いつかもう一度見てこれが耐えられる日が来たら自分の成長を感じるんだろうか。。
松岡茉優は後半ブチ切れてからが最高。
ブチ切れた彼女を見て、口悪くなるんですねーと平坦に突っ込む窪田正孝が可愛らしい。
オドオド父さんの佐藤浩市もいいし、明かされる家族の秘密とそれに対するみんなの反応もいい。
アベノマスク、確かに小さ過ぎたしひどい無駄遣いだったけど、マスクがない、なんとかしろと大騒ぎする人たちに直面してた側としてはふぅと一息つけるタイミングだったのも確か。最早少し懐かしく、コロナ禍なんだったんだろうね、と振り返る時期なんだね。
消えた女より消せない男
家出をした母親を中心に家族を描きたいと思っていた映画監督の花子は、ネタをプロデューサーに横取りされた腹いせに、本当の家族の映画を撮ろうと10年ぶりに家族と再会する。
配偶者や子供といったクッションがなければ、短気で愚直な父親と変わり者で独り者の長兄、次兄、花子の家族の再会は、確かにきつくてうざい。
きついんだけれども、両親の秘密を知ったとき、家族はなぜか結束してしまったのだ。
ほんとうのことを知ることは得策ではないが、愚策でもないということか。
人の知らなかった部分を知り、態度や行動や噂だけで、ひとりの人間を決めつけることの愚かさを知ったからだろうか。
家族の主観を世の中の客観に変える他人(ここでは花子の恋人正夫)の存在が大きかったのだろうか。
こんな程度で家族が結束するのかと賛否両論はあろう。だが、確かに家族はひとつになったのだ。
父親が、ひさしぶりに再会した家族に向かって、「ハグしよう」という言葉で、ふいに目覚めた。
家族は、はるか昔にはお互いハグしあったのだ。
大人になって、照れくさくて面倒くさくて、ハグする感情や感覚をすっかり失ってしまったのだ。
でも、うざくて面倒くさい家族はまとわりつき、消そうにも消せない。
消えた女(母親)よりも消せない男(父親)。花子の言葉がとても深くて心に沈む。
長すぎました
後半トイレを我慢するのが大変でした。前半の松岡さんと窪田さんのバーでのたどたどしく不器用な出会いとかすごい面白かったんだけど。後半の佐藤さん池松さん達家族との絡みが長すぎて飽きてしまったので1時間30分位にまとめたら見やすかったと思います。全編コロナ禍を舞台にしてもよかったし。アベノマスク姿の窪田さんのキャラはインパクトあっておかしかったし松岡さんもいつものようにクセのある演技よかったです。それと酒を飲むシーン多すぎだと思ったけど監督の趣味ですかね
個人的にはこういうのは好き
コメディと銘打っているが、コメディを主戦場にしている役者さんは出ていないし、内容的にも、どちらかというとちょっとシュールなヒューマンドラマという感じ。
そういう意味では、いかにも東京テアトルらしい作品。
序盤の主人公・花子(松岡茉優)と助監督・荒川(三浦貴大)のやり取りあたりは、脚本家の独りよがりみたいな感じだが、その後は物語として、きちんと成立している。
劇中で「こんな家族はいない」という台詞が繰り返されるが、むしろ、関係性に限って言えば現実世界でもこんな家族は沢山いるのかも?
個人的には、松岡茉優はやっぱり魅力的だなと思う。
ルックスは勿論だが、健気に訴えかける時の鼻に掛かった声がいい。
益岡徹の人情味溢れる表情や北村有起哉の渋い雰囲気もいい。
そういえば、日テレが絡む映画というと今までは人気タイトルが原作にあって、大手映画会社が配給するというのが鉄板だったのが、ここのところ、それが少しずつ変わりつつあるのは興味深い。
愛に赤とアベノマスク
『月』を見たばかりの石井裕也監督作品ですが、『月』とは対極的な面白さがありました。
しかし面白かったのだけど、どう面白いのかを説明するのは難しい作品でもありました。
「役者の演技が皆素晴らしかった」なんてありきたりでつまらない感想も書きたくないしねぇ。(実際に見事なアンサンブルだったのですが…)
まあ本作の場合、個々の演技の巧さが、物語の設定と組み合わせにより、より高いレベルに到達して行くのが見ていて凄く面白かったです。
しかしこれも『月』と似た点なのですが、物語が二重構造になっていて、観客によっては勘違いしやすい(というか焦点がズレる)気もします。なので、見る人の立場によっては賛否が分かれやすい作品だと思います。
『月』の場合だとフィクションであっても実話が元になっているので、現実の障害者や施設関係者が見ると、フィクションとしては見られないであろうし、本作の場合だと映画関係者が見ると、同様の感情になるかも知れません。
まあ、我々の様な部外者の観客であれば、あんな人もいるだろうなぁとは思いますからね。
本作の映画プロデューサーや助監督の悪役ぶりや、携帯ショップ店員の応対、食堂シーンの詐欺グループの社会のクズ達の馬鹿丸出しの会話なども、もっと複雑さはあるにしても現実に確実に(しかもかなりの割合で)存在している人種ではあります。
そういう意味では本作の場合、最近では珍しい位にハッキリとした“勧善懲悪”モノとしての設定がなされていて、それが噓臭くない辺りがこの作品の捻りの面白さなんでしょう。
で、何が“捻り”なのかというと、従来の“勧善懲悪”モノって個人の善悪の資質の違いとして描かれていますが、本作を見ていると社会というもの自体が理不尽であり、人間はその理不尽に対してどのように立ち向かうのかが、人によってそれぞれに違うっていう風に描いているのです。
ある人は狡猾に、ある人は暴力的に、ある人は実直に、ある人は無関心に、ある人は無気力に、ある人は鷹揚に、ある人は信念を持って人それぞれの特性を持ってこの理不尽に立ち向かっているのだろう、という事がこの作品を見ているとなんとなく感じられます。
ただこの監督、映画人が映画人をあれだけ酷く描くというのは、実体験があるのかも知れないし、けっこう根に持つ性格なのかも知れません。その辺りは非常に共感出来ましたが(苦笑)
あと、この作品には“恋愛映画”と“家族映画”という側面があるのですが、これについては石井裕也という人が映画に何を望んでいるかの明確な回答なのでしょうね。非常にロマンティストな人なんだと思います。
追記として、“アベノマスク”がこれほどにも(映画の小道具として&社会的意味として)有効利用されたのは初めてみました。
自分に正直に愛に生きようぜ!エレカシの曲も最高!!
最初モヤモヤしっ放しな分、後半のスカッと気持ちの良いシーンが記憶に残る。
周りに流されて、上の人間にあわせて無難な成功を。そんな人生クソくらえ!
自分らしく生きて何が悪い!
正義は正義で何が悪い!!
家族のハグって、そういうかたちも有りか!?最高!!!
最後のエレカシの曲、ハマり過ぎでまとめ上手で最高。
自分の人生、自分らしく生きて行こう!って勇気を貰えた映画。
役者さん達がちゃんとハマってるのも魅力。特に佐藤浩市さん演じる不器用な父親がピッタリ過ぎて(笑)
家族が生きてるうちにいっぱいいっぱいハグしとかなきゃね。
家族愛たっぷりで、心の栄養補給できる映画だと思います。
閉塞を打ち破る面白さの電撃
通常スクリーンで鑑賞。
閉塞感に風穴を開けようと反撃に乗り出す花子と正夫が台風の目となり、家族が本音をぶちまけながら再生していく…
前半の花子の情熱にやられ、後半の花子の家族の姿に笑い涙し、最後の最後感動で残りの涙を全部持っていかれました。
アフターコロナを見据えて脚本が書かれただけあって、コロナ禍が齎したもの、奪ったものについて思いを馳せました。
風刺も素晴らしい限り。マスクのくだりなんて可笑しくて堪らない。まさしくコロナ禍を総括するような映画でした。
2時間半近い上映時間でもとてもテンポがいいから長さは全く気にならず。今年度邦画ベスト級の面白さでした。「キネマ旬報」のベスト・テンには確実に入るでしょう。
ずっと気になっていた本作、ようやく観れましたが、本当に観て良かったと心の底から思いました。観終わると、当然の如く、家族と「存在を確かめるハグ」をしたくなりました。
この俳優陣である理由がこの映画にはある
公開してまだ20日足らずなのに上映館が。。。
長尺の映画って敬遠されがちだけど、それでもこんなにやらなくなる?
松岡茉優推しとしては「勝手にふるえてろ」に劣らず彼女の魅力が満載なのだけど、窪田正孝とか佐藤浩市とか池松壮亮もそりゃ出るしやっぱり素晴らしいよ
中野英雄が劇中で仲野太賀紛する落合に言及するのは今思えばフラグ?
映画の冒頭からしばらくは鬱々としててこんな感じ?って思うけど、映画でもコロナ明けてからの怒涛の展開が笑いあり、涙あり
みんな恥ずかしがらずにハグしようぜ!
楽しい!うまい!
松岡茉優うまい!この人凄いわ。三浦貴大のやらしさもいい。
ストーリーもいちいち楽しめました。
何回かじんときたけど、海鮮屋さんのオヤジの話のところは特にいい。
最初からの登場人物ではあるけど何者かわからなかったのが一気にわかる感じがよかった。
二兎を追うと疲れる
「月」もそうだったが2つのテーマを同じような重さで描くので、テーマが拮抗して同時に2本の映画を見ているよう。
2本分なので疲れるのに、2本ともスカッとしないので疲労感半端ない。
前半の映画監督のところ、これでもかこれでもかとムカムカする話が続いてフラストレーション溜まった。
あの助監督は職場のSさんかと思いました。
前半で溜め込んだフラストレーションを後半で一気に反撃、からのカタルシス、を期待したが当て外れ。
後半の家族の話もスカッとしない。
安心して甘えが出ているんだろうが花ちゃん家族に怒鳴りすぎ。
全員はっきり聞かない、はっきり言わない、やっていることがズレてて、そういう人たちなんだよ、と思えるユーモアもなく後半パートももやもや多くてスッキリしない。
家族を知らない空気読めない、もしかすると軽い知的障害があるかもな正夫が疑似家族の一員になれて嬉しそうなのと佐藤浩市の父の思いは伝わってきた。
携帯ショップの手続きあるあるで気持わかるけど、カウンターのお姉さんちゃんと仕事しているだけ。無理言って責め立てても意味ないので証明書もってくればいいじゃん。お姉さんに鼻で笑わせて、悪役なの?
私とは相性が良くない映画と思った。
出演者が豪華。親子共演もあって、せっかくなので水谷豊が携帯ショップで奥から出てくる上司、とかあったらいいのに。ないか。
演技力ある俳優さん多く、特に三浦貴大の嫌な奴っぷりは堂に入ってて、タコ殴りしてやりたいほどのほどの好演と思いました。大物プロデューサー役で三浦友和とか…、 ないか。
ココロのままに
東京テアトル配給作品、ここ最近あまりいい思い出が無いので、今作も大丈夫かなと思っていましたが、そんな不安を吹っ飛ばす快作でした。「花束みたいな恋をした」以来の東京テアトル配給作での個人的ヒットだと思います。
コロナ禍での出来事を笑いに変えるという、コロナが落ち着いた今だからこそできるものにも驚きましたし、常に共感&共感の嵐でした。
序盤はキョドキョドしている花子の姿や、街中の人々を追いかけてカメラに収める怪しげな行動や、自殺を図ろうとする人のヤジの嵐だったりと、はじまりの時点では心は掴まれませんでした。
劇中で、助監督が理由がない、意味がない映画なんて存在しないというセリフは、悪しき習慣から生まれた言葉だなと思いました。助監督自体かなり面倒な人間なので、ファーストタッチから嫌いでしたが笑
自分は普段からアサイラム作品(例:シャークネードシリーズ、多頭サメシリーズ、トランモーファーシリーズ、その他爆発系)を多く観ており、奴らは基本的に常識なんてぶち壊す作品で、しっかりと楽しめる(当社比)ので、意味も理由も無くても映画は面白いよなーと思える人間なので、この助監督は言動のトゲも相まってスクリーンに殴りかかったろうかなと思いました。
若いだなんだで済まそうとするし、花子と性的な関係を間接的に求めようとするし、最終的には花子の手がけるはずだった作品の内容をガラッと変えたりと、コイツが監督になっても面白いものはできないだろうなと思いました。何かコイツに1発カウンターがあればなとは思いました。
プロデューサーも適当に言いくるめて責任逃れをしている感じも中々にムカつきました。現実でもこういう人いるよなーと思いました。正夫の親友の俳優が自殺した時も、言動の軽さから人の死を雑に扱ってるのはこっち側だよなとムカムカしました。
物語がガラッと変わり出したのは正夫が登場してからで、これまたキョドる感じのキャラクターだなと思ったら、思わぬところで行動を起こしたり、謎のタイミングで花子とキスしたりと、空気を読まずに色々面白い方向に広げていく感じに癒されました。窪田くんすげぇなと改めて思わされました。
人間ドッグに引っかかってしまい、映画は頓挫し、助監督がそのまま自分のもののようにしたりと、現実でもあり得そうな事で踏んだり蹴ったりな花子を、これまた正夫が喝を入れて踏みとどまってくれたのが印象的でした。
互いに夢をなすりつけて、なんとかなんとか生きようとする姿が美しかったですし、これがきっかけで父親の元へ戻り、バラバラだった家族を強引に取り戻して映画を撮ってやろうと意気込んでから、映画的には後編に突入していきました。
胃がんを患う父、社長に媚び諂う社長秘書の長男、カトリックな次男、映画制作を潰された長女、花子についてきた正夫となんだかチグハグな家族でやんややんや揉め合ったり、過去の出来事が盛り返されたりして、色々と明らかになっていきます。シリアスな雰囲気を醸し出しつつも、やり取りが軽快なのでコメディにも見えるのが不思議でした。
酒場で呑んで色々告白し、スッキリしたところで、他の席で売春らしき話をしている奴らのことが全員許せなくてアベノマスク装備で向かう姿がなんだかカッコよかったです。長男だからという理由で誠一が全部引き受けて殴りかかるのも兄貴としての誇らしさが出ていたなと思いました。マスクを求めるくだりはやいのやいのって感じで好きでした。
最後の家族でのハグ、亡くなったはずの父が子供たちを先導している姿には思わずウルっときました。ハグを躊躇ってる兄妹たちに正夫が見せた映像が、酔っ払った父を介抱している時に4人でおしくら状態になっているシーンでフフッと笑いが溢れる瞬間がとても良かったです。
どストレートな今作の主題歌はエレファントカシマシ、これまたどストレートな歌詞で映画をまとめ上げてくれていて最高でした。登場人物の道のりがこれでもかとフラッシュバックしてきました。
思わぬ収穫で、観た後に清々しい気分で劇場を出れました。人間ドラマメインな映画でも今作みたいな邦画が多く作られたらなぁと思いました。
鑑賞日 11/14
鑑賞時間 17:30〜19:55
座席 A-4
2人のではなく家族の愛
観るまではタイトルから2人の恋愛ものかと思ったら違ってた。なのでポスターには違和感を感じる。
言いたいことを我慢する主人公(映画監督)が家族を下敷きにした物語を映画化することを願い奮闘するのだが、上手くいかなくなんともモヤモヤした感じで進むのだが、実家に帰ることからやっと物語が始まる。
プロローグがちょっと長めだけど、実家に戻ってからの父を囲む兄弟たちの家族愛がとても心に響いた。
そして主人公(娘)の目を通した父と家族の物語はとても素敵でした。
反発と反抗
お手本のような映画だった。
愛にイナズマが意図することは、まだ噛み砕けてないのだけれど、四角四面の世の中への疑問符がいっぱい詰まってた。
台詞の妙というか、掛け合いの妙というか…発せられる言葉は辛辣で、前半のプロデューサーが無遠慮に放り投げる言葉はムカつく程に正論だ。
それを正論と判断してしまう社会にも思考にもなってんだなぁと、荒んだ我が身を憂う。
MEGUMIさんはすこぶるいい仕事をしてた。
後半の家族パートになってからも、そのスタイルは変わらずで、棘しかないような言葉が射出されていく。
放たれた側は針のむしろのように貫かれるしかない。
そんなシュチュエーションが僕らの日常なのである。
理解できてしまう。
受け止めてしまえる。
ソレってなんだか異常じゃない?と思考の変換器が入れ替わる音が聞こえたような気がする。
さすがと思えるのは、その様々な疑問符を巧みに埋め込んだ脚本であり、それらへの答えもさりげなく入ってるとこだ。
決して断じるわけではなく、監督の解釈が挿入されているように思う。
冒頭から始まり、どこに着地するんだこの作品はと。無軌道にも思える程に目まぐるしくテーマが変わり多種多様なエピソードが織り込まれていく。
俳優陣は見事だった。
虚と実みたいな切り口もあって、皆さんが持ってる虚をしっかりと実に変えてた。
なんだか、弾丸のような台詞に自分が作った鎧を削られていくようでもあった。
そして、これ以上ないだろうと思う程ベタな着地。
それぞれが抱えている課題も目的も何ら解決はしないのだけれど、それが作品の歩む時間なのだろう。
彼らは僕らと同様に生きていくのだ。
そういう風に感じるのは泣かされたからだ。
あまりにベタな着地なのだが、泣かされた。
あの兄弟にやられた。
どんなにとんがったエッセンスで物語が進もうと、万人が共感できるものをラストに用意しておけば、作品は勝手にまとまると言われたみたいだった。
そんな事を実現できる俳優陣がいればこそだけど、それにしても見事だった。
そして、そんな風に思うのも、作品や人に対する春の日差しのような柔らかな視線を常に感じていたからだと思う。
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