「タイトルなし」愛にイナズマ えみりさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし
松岡と窪田君の過去サイコーの演技だったかも。窪田君は、意地悪で悪い役もできちゃう人なのに、こんな役もやれるところがすごすぎる。池松君も良かったけど、池松君は他にもあるかもしれない。とはいえ、ペコペコしたり、長男としてまとめようとしたり、恐竜博士になったり、本当に演技がサイコー。
コメディとしてもサイコーの映画だった。
あべのマスクが赤く染まって国旗みたいに見えてすごいと思った。
赤がこのファミリーのトレンドカラーなのは、正義感に血がたぎるからなのか。
プロデューサーと助監督は、石井さんが本当に見聞きしている現実かも。リアリティあった。ムカついた。助監督が後で家に来て、セクハラしに来る感じ、ほとんど説明ないけど、怖かった、わかった。
指でカット、なかったことにするという仕草もリアリティあり。
自殺をけしかけるようなことは現実にありえないと助監督が否定したことと、佐藤浩市が妻のことで詐欺するなどありえないと食って掛かるシーンが共鳴していた。精神分析の否定の例が最も当てはまる例だ。
食堂の親父が、ペラペラあと一年と喋っちゃう脚本は見事だ。
石井の映画を久々に見たのだけど、こんなふうに結構パラノイア的だったかとびっくり。
コロナによって突発的なことが起こるとするモチーフ。その時の気分だったのだ。子どもが大人に注意し排除するシーンも怖かった。
『月』でオダギリジョーが、バイトの上司にひどいというより冷徹な言葉を投げつけられるシーンを想起した。
バーテンダーの俳優さんいい。太賀くんもとても良かった。
ウィキの使い方もいい。
このきょうだいが羨ましかった。
イナズマは、カメラと等価で、隠されたものを浮かび上がらせる。
池松君はインテリなので、映画評的確。また、石井常連俳優として作品を支えている。一番伸び伸びやってる感。
佐藤浩市さんは、あんなにたくさん映画に出ている人なのに、カメラの前でカメラに居心地悪そうにし、茉優ちゃんに、クソだと言われるシーンはすごい。茉優ちゃんが、窪田に指摘されるように、家族の前では、ボロクソに家族を罵るシーンは、彼女の甘えがあって、前半のシーンとの対比でとてもいい。茉優さんは、意外とひねくれた役が多かったのかも。こんな真っ直ぐな役こそできる人なのだ。
家族たちが罵り合うシーンのテンションはすごかった。
そして、家族が認め合い、ハグし合うのを、ニヤニヤ見ている佐藤浩市さんの表情はサイコーだった。佐藤浩市は、シャイなシーンがいい。みんながハグするのを見てニヤニヤしているシーンは映画史上サイコー。前半で娘が電話に出ないと言ってるシーンと重なっていいのだ。あれは父親の視線だったのに、俺もしとけばよかったという気持ちが出てくるところ、それを演じられるところもすごい。
ブルーシートや石で覆われている家の形象もすごい。
英語のタイトルはmasked heart。どちらのタイトルもいいかも。