「タイトルの意味と1983年という設定に唸る後半」ハント kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルの意味と1983年という設定に唸る後半
1980年の光州事件は、全斗煥が軍事クーデターで政権を握ったことで起こった。光州事件で市民を虐殺する描写は映画「タクシー運転手」にもあるが、映画でこういう表現が許される社会になったんだなと驚いたことを覚えている。本作はその光州事件から3年。全斗煥の軍事独裁政権真っ只中の話。
官僚、特に暴力装置としての国家機関に属する官僚はどの国も似たようなものなんだろうか。国民のことなんかこれっぽっちも考えることはなく、トップの顔色を伺い出世するための成果を得ることしか考えていない。だからこそ周りとの競争が激しくなるという構造。
この映画の面白いところはそんな基本構造を利用しながら、スパイもの、そしてサスペンスとしてうまく構成されていること。競って北朝鮮のスパイを見つけようとする基本テーマが、いつの間にか大きく変化しタイトルも別のものに見えてくる展開は見事だった。そうか、だから1983年なんだとわかったときにはちょっとした衝撃が走った。韓国映画って、現代史をからめた話が本当にうまい。
もちろん日本が絡むシーンは微妙なところもあることは確か。それでも当時の町並みを再現した感じはなかなかがんばっていた気がする。日本からの留学生がスパイ容疑にかけられ逮捕されるってのは本当にあった話だし、かなり強引なデッチ上げが横行していたらしいからなかなかのリアリティだった。
ちなみに本作では設定的におじさん俳優がたくさん登場するのだが、それが地味にとても豪華(変な表現だけど)。この人も、あの人も、なんとあの人まで!なんて驚きながら観てしまった。
コメントする