劇場公開日 2023年10月13日

「ロリコンですがなにか」キリエのうた たあちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ロリコンですがなにか

2023年11月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

楽しい

幸せ

時を経ても変わらない他の映画とは比較できない音楽映画とも違うまさに「岩井俊二映画」の集大成とは言いたくないが代表作の一つが生まれた。原作・脚本・監督、そしてクレジットされていないがおそらくは撮影も編集も全てやるからしてこんなにも岩井俊二映画になるのだろう。いろいろ彼独自のバースというか思い込みによる不自然な描写や展開もあるが全部ひっくるめて岩井俊二が好きだ。まず徹底した「反体制」、今作はつれない児童相談所や職質ポリやクライマックスの路上音楽VS警官隊のガーガーピーピー音と岩井さんどうしちゃったの?なんか嫌なことでもあったんか?というくらいに公権力に対しての反抗が歴然。そして彼の一貫したテーマである姉と妹の入れ替わり的ロマンス構造を今回は演じ分けのできないアイナ・ジ・エンドが二役をやることでますます混沌とさせていて妹が姉の名を芸名にするもんだからややこしいことこの上ない。そして震災、孤児になり石巻~大阪藤井寺~帯広~東京と彼の個人的聖地を巡る物語、その小学生時代を言葉が喋れなくなったと言うテイで可憐な少女がうなずき一本の演技で通し彼がいかにロリコンであるかを再認識した次第である。学生映画の如く雨が降ったら雨の設定で、大雪が降ったらそれをまんま生かして「ある愛の詩」風に雪に倒れこむ少女たちの美しいシーンはまさに神の思し召しであろうエンディングで「さよなら」のサビを歌うアイナ・ジ・エンドにただただ泣けるのである。

たあちゃん