「岩井監督(俊二)!!」キリエのうた CBさんの映画レビュー(感想・評価)
岩井監督(俊二)!!
限りなく魅力的な絵を描く、さすが岩井監督!という映画。そしてなんとも魅力的なキリエの歌声。最初は「え、壊れた楽器なの?」と思わせられたあの歌声に、なぜこんなに惹きつけられるのだろう。こういうのを、魂を掴まれるような、というのだろうか。
そして、よきにつけ悪きにつけ、これもまた岩井監督らしい、散文詩のような流れ。今回も、時間の前後こそあれ、しっかりしたストーリーがあるにも関わらず、話の流れを振り返ることをしないというか、そんなことには大した意味がないとさえ思えるんだよね。
自分は詩的な映画よりも、小説的な映画が好きだが、それでも、散文詩と映像が見事に溶け合っているような岩井監督の映画たちは、嫌いではない。そう、まるで美術館鑑賞に行ったか、今回で言えばコンサートに行ったような印象だ。
北海道の高校で親友として過ごし、東京で再び出会った二人。路上ミュージシャンとそのマネージャーとして過ごす二人の姿を、二人がそこに行き着くまでのカットバックをまじえながら描く話。2011大阪、2023東京、2018帯広と時空は前後して進む。
描かれようとしているものはなんとなくわかる。望むでも望まざるでもなく、"よりどころ" が何もない人たちの、ただ、揺蕩う(たゆたう) 二人の姿を描きたかったのだよね。そして、俺は勝手にそこに、"どうしようもない悲しさ" や "強さ" を見たりする…しかしおそらく真に描かれようとしているものはそういった、"方向が定まっているもの" ではないのだろうなあ、などと考え、今度は俺が一人、揺蕩うのであった。こんな感じって、いかにも岩井監督の映画。あ〜、めんどくさ。
おまけ
エンドロールの冒頭が、アイナさん(ジ・エンド) なのは当たり前として、広瀬さん(すず)、堂々と最後でしたね。なんか、感動。この作品で凄いわけじゃないけれど、めちゃ難しい中学生役をやっていた頃 (「三度めの殺人」「怒り」。「海街diary」もおまけで入れとくか) から大女優まっしぐらだなあ、と感じているので、なんか嬉しく、かつ感動でした。
おまけ2
黒木さん(華) を筆頭に、頼れる俳優たち! 村上さん(虹郎) もすっかり、欠かせない役者ですねえ。
おまけ3
ラストの路上ミュージシャン集結ライブのみなさん、めちゃ本物ぽい音楽だったけど、もしかしてみんな本物なのかな?
おまけ4
岩井監督が、この映画で一番撮りたかったものは、幼い頃の主人公だったんだなぁと、光が溢れる(こぼれる) 教会のシーンで、俺、確信しました。
こんばんは
コメントいただきありがとうございます。
独特な雰囲気のある作品でしたね。
冒頭からラストにつなぐ白銀のシーンは静まり返った大地にさよならの歌が舞い降りているような世界観で見入りました〜。