ファルコン・レイクのレビュー・感想・評価
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【ある夏休み、少年が久しぶりに会った大人びた幼馴染の少女に抱いた淡い恋心を描いた作品。16ミリフィルムで映し出す幽玄な自然美とノスタルジック風味に魅入られつつ、”生と死”の意味をも考える作品である。】
■もうすぐ14歳になる少年・バスティアンは、フランスから家族と共に訪れたファルコン湖畔の避暑地で母の友人とその娘・クロエと久しぶりに再会する。
大人びた16歳のクロエに恋心を抱いたバスティアンは、彼女を振り向かせようと、粋がってワインを飲み、皆の前でお化けの衣装で踊り、幽霊が出ると噂の湖へ何度も彼女と行く。
◆感想<Caution!やや、内容に触れています。>
・一夏の少年が経験する出来事を描いた映画は多い。
大体”未だ経験のない性への憧れや、生と死が身近にある事を知り、成長する。”というトーンが軸である気がする。
・今作も、中盤まではその要素に、ファルコン湖に出るという幽霊譚を絡ませている。
ー 実際に、ハイティーンの男子の一人が湖で泳いでいる時に”何かに足を掴まれた!”と驚くシーンが幾つかある。-
・クロエもきっと、バスティアンに対し淡い恋心を抱いていると思われるシーンが数多く映し出されるが、それよりバスティアンがクロエへの想いを募らせていくシーンの方が印象的である。
ー バスタブの中でクロエがバスティアンの髪を洗って上げた後に、バスティアンに背を向け、自分の茶色の長髪を洗う姿を見るバスティアンの瞬き一つせずに見ている表情。ー
・そして、2人は親密な関係になるが、バスティアンが付いてしまったクロエとの関係に関する嘘がクロエにバレてしまい、クロエは彼に”嘘つき!”と言って、それ以降よそよそしい態度を取るようになってしまう。
・少年少女たちが森の中で行うパーティシーンでも、背伸びしたバスティアンはクロエの気を引くためだろうか、アルコール飲料を飲み、ハッパを吸い、幽霊の恰好をして躍るのだが・・。
<ラストは可なり切ない。
泳げない筈のバスティアンはパーティ途中でファルコン湖に泳ぎに行った青年たちを追い、”ある光景を見た後に”一人湖に入り泳ぎ始めるのである。
カメラはその姿を固定ショットで映し続ける。
そして、両親たちが避暑地から去る車の中にバスティアンの姿はない。
湖畔に残された花束の数々。
桟橋で独りバスティアンが泳いでいったファルコン湖を身じろぎもせずに見ているクロエ。
その背後に森の中から歩いて来たバスティアンが立ち、”クロエ”と呼びかけ、クロエが振りむこうとした瞬間、映画は暗転するのである。
今作は、思春期の少年少女が過ごした、愛おしくも切なく哀しいひと夏を描いた青春映画なのである。>
マージン
かなり攻めた作劇の作品である 今となってはどの作品でも"自慰行為"シーンを差込む事で、人間の本能とその抗いの落とし処を演出する効果があるが、今作は子供っぽい勝負に用いているところが興味深い
ヒロインの女の子の美貌と、しかしあどけなさ残る幼稚性、それが故の成長を拒むことを表現している超常現象への興味や同時にいつまでも拒めない心と体の成長 そんな綯い交ぜを一手にぶつけた主人公へのからかいや他愛のない勝負は、それでも性的好奇心が芽生え始めた男の子にとっては決して嫌な気持にはなれない、寧ろもっと与えて欲しい欲求に苛まれる程だろう
そんな性的ジュブナイル作品と同時並行するホラー感の要素を綺麗に織込んだ秀逸な内容なのである
他のネタバレサイトに書かれている考察とは違い、自分は真っ先に思ったのは、そもそも主人公の男の子はとっくに2年前に亡くなっていて、自分がそれを気付かないのだというシナリオだということ あの湖畔に漂い続け、話が出来るのはヒロインの女の子しかいない それ以外は全て主人公の想像であろうと思ったのだが、おかしいだろうか? そして向う岸迄彼女を追い泳ぐが、辿り着けない事実と、家族の湖畔での黙祷に、初めて自分が死んでいることに気付き、それを教えて貰う為のラストのヒロインへの問い掛け 彼女にふり返り始めのカットオフは、これから教わる残酷さを予感できる演出であった
勿論、解釈の見立ては間違っている事、重々承知しているが、でもこの奇妙なバランスで成り立っている筋立ては、観客それぞれの余白(マージン)を用意してくれているようで、その制作陣の懐の深さに感銘を受けるものである
背中のライン、胸ポチ、ギリギリ迄たくし上げるTシャツ、そして女性の自慰 タブーとされる刺激を表現することへの戸惑いや、観客の受け止め方はそれぞれであろう しかしこういう作品が、果敢に挑戦するイマジネーションの活力に成り得る可能性を充分指し示す事も又破棄できないのだ 狙うからこそのその問い掛けは鋭く観客に突き刺さり、そして泡立つ・・・
日本語字幕はよかった。
大変残念なことに最初のシーンを見ただけで、全体のストーリーは、ほぼ判ってしまった。こんな時、開高健だったらどうするのだろうか。
パリで暮らす4人家族が、母親の友人を頼って、ケベック州の湖畔に近い避暑地のコテージで、バカンスを過ごす。雰囲気としては、ニューヨークの北側の東海岸の感じに近い。そのコテージで、年の離れた弟ティティを持つ14歳を迎えるバスティアンは、母の友人の娘で16歳のクロエと再会する。
ケベックはフランス語圏だから、クロエのようなフランス系の人たちはフランス語が基層、ケベック以外のカナダ人とのコミュニケーションのために英語を身に着けている。一方、クロエの友人オリヴァーのような英国系のカナダ人は英語が基層で、フランス語は学んだだけのもの。それに対し、バスティアンのようなフランス人の英語は、付け足し程度。この異なった背景を持つ若者たちが、スマホ以外は親からの干渉がほぼない状態で出会い、交流する。年齢はやや異なっているが。
一番よかったのは、英語のセリフの日本語字幕に(かっこ)がついていたこと。フランス語のセリフの字幕には(かっこ)はなかった。登場人物が言葉を使い分けることで、それぞれの背景・性格がよくわかる。
最初のシーンから予想されたエンディングを迎えたあと、ラストでは、少し救いを求めたのだろうか。しかし、湖の霧がそうであるように、心まですっかり晴れるわけではない。家族や友人のことを考えると、評価は分かれるだろう。
意識と嫉妬。
13歳少年のひと夏の話。
夏の時期、母の友人のケベックの湖畔にあるコテージへ、そのコテージで母親の友人の娘3歳年上のクロエに出会う、そのクロエと同部屋になり女を意識したバスティアンのストーリー。
男女問わず誰しもが通るのではないでしょうか!?年上の人が気になる、意識するって。
私も中学時代に2歳年上、高校時代は1歳年上のお姉さんが気になる時期があったな~なんて思いながら鑑賞。
クロエにワインを飲まされたバスティアン、飲み過ぎで吐いて、そのまま風呂に入るもクロエに頭洗ってもらって身体洗われたら、そりゃ意識するし、たまらないし、収まらなくなるよね!(笑)
女性経験のない13歳少年のもどかしさ、ぎこちなさは、観てるこっち側からしたら「待ってるんだから早く行けよ!」って感じでした!(笑)
あと気になる人が異性と楽しんでる姿は思春期に限らず幾つになっても嫌!(笑)
ラストのシーンは中途半端だったけど、気持ちを伝えに行ったのよね!?
Nature
ポスターのみの情報で鑑賞。小学生くらいの一夏の恋愛劇だと思っていましたが、中学生と高校生の性の始まりを描いた際どい作品になっていました。
母同士が仲が良いので、家族ぐるみでお泊まりをすることになった14歳のバスティアン。その家には16歳のクロエがおり、最初はよそよそしい感じだったものの、時には友達のように、時にはドキッとするような関係性のように、時にはお酒やタバコに走ってみたりと、ギリギリの境界線を笑いながら渡る可笑しくもどこか切ない物語になっていました。
バスティアンとクロエの距離感の描き方が本当に巧いです。2歳しか変わらないと大人になったら思ってしまいますが、中高生の2歳差はとても大きいもので、ちょっとした仕草に気になってしまったり、クロエが積極的な子というのもあってドギマギさせられたり、たまに突き放されると本当に寂しかったりと、自分もここまで壮大なケースは無かったですが、中高生の頃は年上の女性にときめいたもんです。なんだかその感覚が観ている途中に蘇ってきました。
クロエが問いかけた一番怖いものの問いに、バスティアンは自慰行為を親に見られる事と答え、その行為をクロエが実際に行ってしまうというまぁ大変なシチュエーションの後に、「本当に怖いのは一人ぼっちになる事」という答えを出して、その後の展開に繋げていくきっかけになっていました。
風呂場で頭を洗ってもらったりという姉弟みたいな関係性から、胸を触らせて抱き寄せるような恋人のような関係性まで幅広く描写されており、観ているこちらがドギマギしまくりでした。
バスティアンからクロエへの感情は日に日に増していってるのですが、クロエにとってバスティアンは一緒にいたい時はあるけれど、色んな人たちと関わりたいという感じで、特別な人の1人といった感じが描写されていたのも印象的でした。
ダンスパーティでの激しいダンスを披露したバスティアンが魅力的でしたし、クロエも称賛していてとても楽しい時間が流れているなと思いました。
ラストの終わり方は世にも奇妙な物語みたいで、湖を泳いだ全員が亡くなって、湖の近くには花が添えられており…みたいな感じだと最初は思いましたが、バスティアンがクロエを想うばかり、本当に亡霊になって会いに行ってしまったという感情の置き場所を見失ってしまう寂しいラストになっていました。唐突感があったのが惜しいですが、不思議な終わり方をするなと叙情的な気分になりました。
映画の物語の通り、一夏の思い出になる作品でした。シャルロット・ル・ポン監督が制作に携わった作品に気になる作品が多かったので、この機会に観てみようと思います。
鑑賞日 8/28
鑑賞時間 14:35〜16:25
座席 G-7
2023年ベストムービー!⭐️⭐️⭐️✨✨✨
なんとも胸をしめつけられるようなラストでした…叶わぬ青春時代の"想い"がフラッシュバックしたかのようで…もう"拷問"でしたね笑
その日を思い出して涙するというよりも、ただただ胸が苦しくなりました。
主人公のバスティアンは、亡霊となってその思いをずっと抱えたまま湖を彷徨うんですかね…オバケの真似事をしていたら本当にオバケになってしまった…"16歳の女子"は罪深い…
Sweet Sixteenですから。
*原作の漫画をぜひ読んでみたくなりました。
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