PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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心の処方箋
この時期(クリスマス、年末年始と孤独を感じやすい時期)観れて良かったな、と率直に思いました。
ソーシャルワーカー(トイレ清掃員)の主人公の日々のささやかな日常が淡々と描かれていきます。
その中で後輩になくなくお金を貸したり、家出した姪を面倒みたり、ガン告知を受けた恋敵を励ましたり、決して人を拒むことなくゆるやかに人とつながる生活を微笑ましくみてました。主人公の清貧な暮らしぶりに好感が持てて、こういう展開のまま終わるんだろうな、って観ていました。
ところが最後に主人公の悲哀が明らかになっていきます。首都高速の車移動と主人公の表情の変化が重なり、私もいろいろな感情が胸に迫ってきました。
だからって、暗い終わりじゃないのがこの映画のミソ。
冒頭に書きましたが、映画を観た後、なんか街の人達ひとりひとりを愛でるようになるといいますか笑
心が豊かになる感じなんです。
日常を大切に過ごそう、って。
「今は今、今度は今度って」。
それが題名のperfect daysにつながるのかな。
主人公が愛した木漏れ日のように、この映画も決して派手じゃないけど、そっと私たちを応援してくれる、心の処方箋のような映画でした。
今年最後に観る作品としてはおススメです。
役所広司、あっぱれ!
ヴェンダースの人間讃歌、万歳!
フライヤーに添えられた言葉が秀逸だ
僕は「陸王」を観てから役所広司さんを好きになった。人柄も好きだけれど、とにかく演技が好きだ。
この映画は、全体を通してセリフが少ない。下手をすれば事故を起こすレベルで「なにを伝えたいのかわからない」と言われてしまいそうな作品だ。
そうならないのはやはり役所広司さんの「演技力」なのだと思う。彼が演じる平山が、いま、何を感じ、どう思っているのかが、表情やしぐさで感じ取ることができる。
心がじーんとあたたかくなるシーンも、寂しくなるシーンも、たくさんある。どのシーンも全部、僕の思い出の一部となった。
ただ、平山の最後の涙は観た人それぞれの平山があるのだろうと思った。僕はまだぼんやりとしていて、ここに残せるほどの言葉がまだ見つかっていないけれど…最近の出来事をその日の気分で選んだ音楽を聴きながら思い出して、涙できれいに流して、朝日をみて、生きていることの喜びを噛み締めたのだと思う。朝日や夕焼けを眺めてなんとなく泣きそうになる…そんな感じもあるかな。
まわりから見れば、彼の一日はいつも同じようだけど、同じ日なんて一日もなくて、少しずつ違くて、少しずつ変化している。
彼は未来より、今を、一瞬を、大切にして生きている。少しの変化を感じて楽しみながら。
『こんなふうに生きていけたなら』
フライヤーに添えられたこの一言は秀逸だ。
エンドロールの途中で席は立たないで。
そのあとの映像で物語が完成するから。
なにを伝えたい映画なのかが分かるから。
夜が明けたら新しい1日
タイトルなし
もともとヴェンダースはそんなに好きではないのであまり期待もなかったけど、役所さんが良かった。喋らない演技だけに。こういうロードムービーもあるんだと思った。石川さゆりの歌はやはりうまかった。
渋谷のトイレがモダンすぎて、そこには文脈があるんだけど、全く言及なく、ただし、ヴェンダースを使えばいいと思ってるあたり、渋谷ネオリベ区がどれだけ馬鹿なのかを露呈していた。
家に鍵をかけずにいつも出ているのが気になっていた。
どうしても男目線の話なので、あまり感情移入できない。
きちんと暮らしてたり、本がきれいに並んでいるのは共感もてるけど、写真まできちんと箱に整理されていてオタク感が。ヴェンダースの夢でもあるのだろう。
ありふれた日常のルーティンの中に見出だす幸せ
まず驚いたのはスクリーンが4:3だったこと。
そして役所広司が一切言葉を発しないこと、延々日常のルーティンが続く。
それでも視界に入る景色の変化に幸せを見出だす。スマホ片手に歩く現代人にもっと胸を張って上を見てみなよと言われてるようで、毎日繰り返しの日々の中にも些細ではあるけれど発見がありそこに喜びや幸福感が感じられる、それを感じることが人間の営みのなかで大事だよと受けとりました。
気に入った古い曲をアナログなカセットテープの音が好きという若い女と、スマホのサブスクで探そうとする子の対比も面白い。
寡黙で穏やかな人が起きて寝るまでのルーティンを崩されたときに、戸惑い苛立ちを見せるのも人間なんだと。
そんな営みも誰もが終わりを迎える。その時になにを思うのか、会いたい人は、会って何を伝えたいか、生きるってどう言うことなのか、悩むってなんの為なのか、人との関わりが生きる上で面白味を与えてくれるって教えてくれます。
自分一人で楽しめる本や音楽、けれどそれを共感する人に出会うことも幸せなんだと。
この映画はそんな人生経験を沢山積んできた人ほど共感できるのではないかな。
私も半世紀を生きてきてこの映画を理解できたフリができて嬉しい。
小料理屋の女将の歌は当たり前だけど上手いなと恐れ入りました。
映画の帰り角ハイボールが飲みたくなって買って帰りました。
木漏れ日
『パリ、テキサス』を観て、ヴィム・ヴェンダース監督のイメージって、
静かで淡々としてて、いいロケーションで美しい映像、のイメージだったんだけど、
本作も、静かめで割りと淡々としてますが眠くならなかった。
音楽が印象的で、予告編にも使われたルー・リードや、パティ・スミス、アニマルズ、など、いい音楽が使われ、
東京の風景を美しく切り取って、美しく映画に落とし込んでいます。
ロケーションは浅草の近辺がメインに使われてて、美しく色鮮やかに光るスカイツリーが頻繁に出てきます。
それが、とても良かった。
そして、少しずつ少しずつ、主人公の過去が分かってきて…
静かめでセリフの少ない映画なんだけど、引き込まれて観てました。
エンドロールは最後まで観て下さい。
本作を理解するのに重要な一文が表示されます。
良かったです。
美しい余韻に包まれます。
分からないのに感動!なんだか感謝。
つまんないけど、悪くないドキュメンタリー
置かれた場所で咲くことの幸せ
それでもいいんだ。
平山の歳は知らないが役所さんとは2歳違いである。私もおひとり様である。日々黙々とルーティンをこなしている。休日は一言も発しない日もよくある。
私にもささやかなお楽しみはある。映画もそうだし、簡易ジムではひたすら音楽を聴いている。車での移動の時も。
綺麗な景色を見れば幸せだと感じる。
ただ私は平山のような境地にはなれていない。焦っている。人生の最後が刻々と近づいてるのに結果が出てない気がする。私は何をしてきたのかなぁ。
病気になったら働けなくなったらの経済的不安につきまとわれている。
劇中三浦友和が言う。「わからないまま終わるのかなあ」みたいなこと。ああ、みんなそうなんだ。すごく楽になった。
あと楽曲がすごく良かった。プレイレスト作ったけど、誰か全てわかる人教えてください。
11の物語はどこも品切れでした。
ルーティン
とても綺麗な映像に感動しました
自分には合わなかった
今度は今度。今は今。
感想
久しぶりに
ヴェンダースの国際興行作品を鑑賞した。やはり、監督はモノクロームの映像表現が秀逸であるのだという事を再認識させられた。
但し、今回は現代日本と日本人が主人公なので色彩美や、個性的な建築群、また東京の風景を表現するには鮮やかさが不可欠であり、旅という視点からも印象的となるカラーを選択したのだろう。
だか、監督において、事の発想と映像化の基本路線はモノクロームが主体でありまた、テーマは様々な世界で生きている多様な人そのものであり、人間模様を旅として表現している事は首尾一貫している。
監督の変わらない視点にいつのどの時代の作品も感動を与えられた。今回も人間模様の旅をしている雰囲気を充分に感じることができた。
また、アジアにしか生息していない銀杏や楓の木漏れ日を主人公は好んで白黒写真に収めており、光と影の描写が、作品のいたるところに表現されていてとても感動した。
『自由』の表現と捉え方
『さすらい』ではヒッピームーブメントの名残りとモラトリアム的自由の表現が主体であったと思う。
『ベルリン天使の詩』で全ての、あらゆる、天上界、人間界を含むあらゆる世界で生きる人々が想う『自由』を映像表現し、時に世界を複雑化させる原因が『自由』である事を考えさせられた。思考も表現も成長してそれぞれの立場、世界が理解できるようになったのだ。
今回の映画では日本人が基本的に持ち合わせている信念の中にある、単なる勝手な『自由』ではない、規律を持ち合わせた『自由』をよく表現している。
多くを語らず信念を持ち、規律を苦とせず、持ち合わせて自分なりの『自由』を謳歌している主人公。
彼の生き方はむしろ時代遅れの感が如実に出ているが、ここには監督なりの人生觀のような、『生き方を常に新しくしなくても良い。温故知新の文明で人は充分に事が足り、むしろ変えなくて良いのだ。』という信仰の様な、敬虔とも言える信念を感じる。
日本人の中には新し物好きで、常に革新を求めて動くという世界観を持った人達が少なからずいて、その様な人達が現代の東京を創った。
その人達の事もリスペクトしながら、監督は温故知新を大切にする日本人も、多いのだという事を今回の作品で教えてくれたような気がする。
よく日本人を理解してなければ、ここまでの映像表現はできない。勿論、役所さんの名演も含めて。
当たり前のように今を生きることがいかに大切な事で、世界でも貴重な事であることが簡単に理解できる。というところで、
⭐️5
2023年度 新作自己最高評価となった。
目に入っても目に止まらない、知らない世界から
世界のあり方が変わったコロナ禍を経験した私たちにならわかる"現代人が忘れがちなもの"を大事に大事に拾い集めるような2020年代の人生讃歌
今度は今度、今は今…何も変わんないなんて、そんなバカな話ないですよ!例えば音楽をカセットで聴いたり、古本屋で買った本を読んだり、いつきけのお店で飲んだり、仕事終わり銭湯に行ったり -- 都度一つ一つのことに時間を使っては(自分は割と"ながら"で並行しがち) -- そんな何気ない日常の大切さをふと思い出させられる。
一周回って"エモい"と"クサい"=(思ったより)いかにも普通の劇映画っぽさを交えつつ懐かしさと新鮮さ、温故知新に我々が忘れてしまったもの。一日一日、一瞬一瞬を大事に生きると生き生きと色づき始める世界。見慣れた景色も途端に変わってくる。目を向け、耳を傾けると見えてくるものをトイレ清掃員の平山が教えてくれる。忙しない現代社会から切り離された、規則正しい生活を送る平山。一見同じ日々、そのくりかえしの中にも差異を伴う反復があって、役所広司さんの(なかなか一言目を発さないセリフの少ない)完璧な演技と佇まいがその機微を掬い取るよう。毎朝、家を出た瞬間に空を見上げる表情や、スカイツリーを見上げる仕草、昼休憩のときに写真を撮る様子、そのどれもが愛しい。
その中でも飽きさせない作り・仕掛けもあって、笑えることもあったけど、そうした海外の人から見た"らしさ"こそ、むしろこういう作品の成り立ちそのもので存在意義とも感じる。中でもルー・リード、パティ・スミス、ヴァン・モリソン…など、朝焼けと名盤カセットの相性の良さ。個人的にも好きなラインナップで、音楽の趣味が最高にツボ・ハマる主人公。従来のヴィム・ヴェンダース作品同様、鼻につく人もいると思うけど、ただ本作の"なんちゃって日本"が鳴りを潜めて、私たちの知る日常風景の中で淡々と、そして丁寧かつ繊細に紡がれるドラマは詩的で情緒豊か、かつ静かに胸を打つものがあった。しっかりとした組み立て・構成があるから、途中少し脇道に逸れたように感じられても、それもまた人生だなと思えるように、最後には感情が溢れてくる。
欲やいっときの感情に踊らされるのでなく、自分ももっとちゃんと生きたいなと。柄本時生の役柄にムカついたけど、そんな感情もまたくだらない。田中泯さんには無論踊らせる。今この一瞬あなたは本当に"生きてる"と胸を張って言えますか?
The Tokyo Toilet
おつかれさん!
木漏れ日
勝手に関連作品『すばらしき世界』『ベルリン・天使の詩』
さすが役所広司さん
ミニマルな中のちょっとした悲しみとささやかな幸せ
おじさんたちの心優しさと、さり気ない繋がりが微笑ましい。
常連同士のアイコンタクトがある生活空間が懐かしい。
外国人監督には微細な日本人の心を写し出すのは難しいだろうことが見える。
何といっても役所さんの顔がデカい!
あの派手で彫りの深い顔は外人だわ。
しかも、カメラがより過ぎだなぁ
そして全ての所作に日本的ミニマリストしての心在らずで忙しない。
唯一楽しめたのは、
三浦友和と影を重ねると濃くなるのか?
の問いに、
西洋絵画と日本画と墨絵の謎々を影踏みで戯れたところは愉快だった。
ならば、
肝心の木漏れ日や早朝の空気、
朝日に雲間の陽光のいい情景があってもいいようだが、
ターナー以下の景色しか映し出せないのは残念だ。
そして、あのカセットテープで昭和アナログを懐かしむのは良いが、
選曲と音量バランスが映像を更に酸化するようで、
なくてもいいのではない?
それに、
モノクロで映写した方が良かったのではないか!?
まあ、こんな不気味で違和感は、
全編に鎮座するあの新東京タワーと奇抜なトイレ群の奇妙さが時代の変遷を色濃く感じさせ象徴的ではあった。
何に充足を感じるかは、
野球と宗教は自由だと飲み屋のオヤジが怒鳴っていた。
敢えて言えば、
寡黙で大人しく、
兎小屋で盆栽いじりして、
薄ら笑いしている奇妙な日本人をよく撮っていた。
それで、平山さんは何をしでかして更生生活に入っているのだろうか?
( ̄∀ ̄)
PERFECT DAYS
「パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」などで知られるドイツの名匠ビム・ベンダースが、
役所広司を主演に迎え、東京・渋谷を舞台にトイレの清掃員の男が送る日々の小さな揺らぎを描いたドラマ。
2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、
役所が日本人俳優としては「誰も知らない」の柳楽優弥以来19年ぶり2人目となる男優賞を受賞した。
東京・渋谷でトイレの清掃員として働く平山。
淡々とした同じ毎日を繰り返しているようにみえるが、彼にとって日々は常に新鮮な小さな喜びに満ちている。
昔から聴き続けている音楽と、
休日のたびに買う古本の文庫を読むことが楽しみであり、
人生は風に揺れる木のようでもあった。
そして木が好きな平山は、いつも小さなフィルムカメラを持ち歩き、自身を重ねるかのように木々の写真を撮っていた。
そんなある日、思いがけない再会を果たしたことをきっかけに、彼の過去に少しずつ光が当たっていく。
東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを、
世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」に賛同したベンダースが、
東京、渋谷の街、そして同プロジェクトで改修された公共トイレを舞台に描いた。
共演に新人・中野有紗のほか、田中泯、柄本時生、石川さゆり、三浦友和ら。
カンヌ国際映画祭では男優賞とあわせ、キリスト教関連の団体から、人間の内面を豊かに描いた作品に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。
日本がもっと好きになる、優しく、重い映画
眠くなるだろうなあと思いながら、とても、楽しみにしていた。
予想通り、途中までセリフがほぼない映画だが、役所広司の表情、動き、すべてが物語っており、ぐっと惹かれた。
そうそう、日常でそんなにたくさん、話さないことのほうが多い。
外を眺めてみたり、なんとなく音楽流したり、(理想的な)日常そのものであり、インタビューのないドキュメンタリーのようだった。
そして、もう一つのメインである、トイレ。
透明なトイレは話題になったが、東京にいながらこんな独特なトイレがたくさんあることを知らなかった。トイレを観ているだけで楽しい。
新しいものと古いもの、変わるものと変わらないもの。その象徴である浅草周辺という舞台で見事に描かれている。
日本人にとっては、というか都会に住んでいる人にとっては、ニコの母のように、「こんなところ」という感覚だった。下町を意識することも薄かったがこうしてみるととても魅力的だ。
これは海外の人から観たPR的な日本として描かれているのかもしれないが、再認識させられる。
細かい日常と話さない平山の対比として、個性的な登場人物たちがさらに印象的にうつる。どれもほっこりするキャラクターで、微笑ましく観られる。
しかし途中から、変わらないようにする平山に、様々な変化が外から訪れる。その不穏さと儚さにこちらまで心のバランスが乱れてくる。
トイレの清掃という、どこかで社会の影と捉えている、自分に対しても何かを語りかけられている気がする。
それがラストシーンへとつながっていく。
静かな映画だけど、じわっと、ずしっと心に届く、映画だった。
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〈追記〉
パンフレットや様々な批評を見てから、2回目鑑賞。
世界観、空気感は個人的には刺さっており、何回でも観たいのは間違いないのだが、やはり綺麗な面しか見せていない、というのはひっかかる。
トイレにもたくさんのお金が注ぎ込まれ、東京都による壮大なグローバルまちおこしの一環であるのは否めない。
トイレ清掃員という労働階級とを扱いながら、問題提起が足りないのもあるし、恵まれている自分が満足してしまっているのに認識させられる。
映画の社会性というのを今一度考えてしまう。
2023年劇場鑑賞113,118本目
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