PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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評価が分かれる…新しい手法
役所広司演じるトイレ清掃員の日々を淡々と映し出されます。彼は日々のルーティンをとても大切にします。平日には平日のルーティンが、休日には休日のルーティンがあります。
毎日同じことの繰り返しのように思われますが、毎日、違うことがあり、ルーティンに影響を与えます。晩酌に立ち寄る居酒屋が、いつもガラガラなのに、ある日満員だったり、仕事仲間が突然辞めて、残業したり…小さな変化や不都合はあるんです。それらも含めて、この映画は日常を淡々と映していきます。退屈だ!と感じた人もいたと思います。実際、僕の前の席にいた中年夫婦からは不満が漏れ聞こえてました。
この清掃員の過去は一切明らかになりません。
観客が想像しうる材料は、映像の中で散見できます。ただし、それぞれのシーンを解説するようなシーンも、セリフもありません。監督は敢えてこの手法を取ったとインタビューで答えていました。私たちの想像力に任せる。ある意味、観客の脳内もスクリーンとして使う手法は斬新であり、私たちの鑑賞に自由を与える手法とも言えます。
しかし、私たちは説明を好む民族でもあります。ここは賛否が分かれそうです。不親切と捉える人も少なからずいらっしゃると思われます。
妄想癖のある私は、楽しめました。(^^♪
ラストの車のシーンは、感動しました。清掃員は車で出勤途中、感極まってきます。涙目にになり目が充血していきます。決して涙はこぼさない。でも、泣いてるんです。この演技は役所広司しかできない名演です。監督のインタビューによると、このシーンにカメラマンが感動してしまい…撮影がちゃんとできているのか?とても心配だったそうです。
後半、三浦友和が出てきたのには驚きました。こちらも名演技でした。役所と絡んでも決して引けを取らない。そして、相変わらずかっこいいな。他にも有名な役者が結構な端役ででたりして、とても贅沢な映画でもあります。
主人公の清掃員は几帳面な性格である、という風に撮影されているのですが、細かいところで一つ気になったのは、この男がアパートを出るとき、ドアのカギがきちんと掛かっているかを確かめる仕草が一度も無かった点です。ドアの内側のドアノブ中央に突起があって、それを押してそのままドアを閉めるとカギが掛かる仕組みの古いタイプのドアだと思われるのですが…外に出た時、きちんとカギが掛かったか、ドアノブを回して確認すると思うのですが…。まぁ…気にならない人の方が多いか(-_-;)
好みは分かれると思いますが…ヨーロッパの映画が好きな人や小津安二郎の映画が好きな人にはお勧めです!
生活音と詩のような気持ち
トイレ清掃員の何気ない日常を描いた作品。 本年度ベスト級。
楽しみにしていた作品だったけど、自分にはあまり刺さらなかった感じ。
だけど清掃員の平山を演じた役所広司さんの演技には引き込まれた。
起床→木々の水やり→支度→缶コーヒー購入→トイレ清掃→飲み屋で一杯→銭湯→読書→就寝。
こんな繰り返しの中でも毎日違った出来事が訪れる感じ。
平山が就寝した後、モノクロの意味不明な映像は平山が見ている夢なのか?
その夢の意味がよく解らない(笑)
東京の美しい景色と洒落た洋楽が印象に残る。
驚いたのは公衆トイレが美しい(笑)
今の公衆トイレって凄いな!
ぶっちゃけ退屈な感じでお尻が痛くなる(笑)
睡魔も襲って来たけど何とか鑑賞。
あまり刺さる内容では無かったけど役所広司さんの演技には大満足。
平山が出掛ける時、家の鍵をしないのが気になりました( ´∀`)
ささやかな感動作
1人の男の日常を淡々と描いたなんとも退屈な映画?寝てしまうのを覚悟に観ていた私は退屈どころか、いつの間にかその世界に深く引き込まれてしまいました。私の地元の比較的地味な場所がロケ地だったからなのか?自分の年齢のせいなのか?何故か心に滲みる映画でした。
小津安二郎をリスペクトするベンダース監督らしく、往年の邦画を思わせる様式美に満ちた静の世界ではあるものの、微妙に変化する一日一日を短編小説の様に丹念に切り取った脚本と編集が素晴らしく飽きさせません。そして、ひたすら無口な男を演じる役所広司の抑制の効いた演技力が、ややもすると単調になりがちかな物語を強く支えています。
「ゴジラ−1.0」「鬼太郎誕生」等の大ヒットの裏で、この様なささやかな感動作に出会えた事の喜びに浸りながら映画館を後に、年末の寒空に自転車を漕ぎながら私はこの映画の主人公の様に幸せな涙を流すのでした。
淡々とした日常に射す木漏れ日の美しさ
学生時代に見た『パリ、テキサス』『ベルリン・天使の詩』。蓮見重彦が雑誌リュミエールに難しい批評を書いていたことを懐かしく思い出す。その監督の新作映画を2023年に観られるなんて思ってもいなかった。それだけでも感動ものだ。
トイレ清掃を行う平山の淡々とした日常。だけど、公園から持ち帰った木の苗木を部屋で育てたり、いまだにフィルムカメラを使ってモノクロ写真を撮って整理して保管していたり、曰くありげな過去があった事を匂わせる。
それでも、日常のルーティンは変わらない。そこに射す木々の木漏れ日、時々挿入されるモノクロ画像が美しくもあり、また、過去の記憶を映し出しているようでもある。
CASTは個性的。ホームレスの田中泯、相棒の柄本時生、小料理屋のママの石川さゆり、古本屋の店主の犬山イヌコ、そしてセリフが無いのに輝いていた研ナオコ、みんな愛おしいCASTとなっていて、この映画に豊かな彩りを添えてくれる。勿論、セリフが少ないながらも役所広司の演技は素晴らしい。
久しぶりに心に染み入る良い映画を見た感じだ。
ただ、ラストの三浦友和の登場の仕方がちょっと唐突。だって、探し回ったとしても、広い墨田区、あそこで出会えるはずないもの。淡々とした日常を描きながら、ラストで「作り物感」が出てしまったのが残念だった。三浦友和ならもっと味のある使い方が出来たんじゃないかと、無いものねだりみたいなことを感じてしまった。
あと「ニコは絶対実の娘だ」「ニコは知らないけど平山とケイコは結婚していたんだ」「だから抱擁して別れた後泣いたんだ」と思ったのだけど、公式HP見て、伯父と姪であることが分かった。深読みしすぎてしまった。でも、妹の「本当にトイレ掃除しているのね」とのセリフから、父親から「お前なんかトイレ掃除ぐらいがお似合いだ」みたいに言われたんじゃないだろうか、だから意地になって徹底的に掃除をするようになったけど、今ではそれさえもルーチンになっているって感じじゃないだろうか、とも勘ぐってしまった。これも深読みだろうか。
少ないセリフの一つ一つから想像の世界が広がっていく映画でもあった。
役所広司すげー
あるトイレ清掃員の完璧な日常‼️
あるトイレ清掃員の日常‼️近所の老女の箒の音で目を覚まし、布団をたたみ、歯を磨き、ヒゲを整え、植物に水をやり、ユニフォームに身を包み、ドアを開けて笑顔で空を見上げ、缶コーヒーを一本、そしてお気に入りのカセットを聴きながら仕事のトイレ清掃へ‼️お昼に公園でサンドイッチを食べ、仕事が終わると銭湯へ、地下の居酒屋へ行き、眠くなるまで本を読む‼️休日はコインランドリー、写真の現像、古本屋、そして休日だけ通う居酒屋のママの歌声‼️映画は主人公・平山のそんな日常を繰り返し活写していく‼️セリフもほとんどなく、まるでドキュメンタリーのような地味な展開かなと思わせる‼️しかしカーステレオから聞こえてくる音楽は毎日違うし、平山が清掃するトイレは世界的な建築家がデザインした、芸術品と呼べるモノばかりで、同じはずの日常のルーティンに異なる彩りを与えている‼️ホントにトイレを見ているだけで楽しい‼️そしてそんな平山の日常に訪れる思いがけない出来事‼️同僚の恋愛沙汰、孤独を抱える同僚の恋のお相手、家出してきた姪っ子、わだかまりがある妹、平山が密かに恋心を抱く居酒屋のママ、ガンを患っているママの元夫・・・‼️もうホントに全編がヴェンダース監督の優しさに包まれているし、役所さんの名演が常に寄り添っているような名作ですよね‼️毎日同じことの繰り返しのようでも、一日一日違った喜びや悲しみがあり、新たな刺激がある‼️平山が毎日カメラで写す木漏れ日のように‼️時折挿入されるその木漏れ日のカットが、この作品をより美しく、より詩的にしていると思います‼️そして、平山のカセットテープから流れるストーンズやヴェルヴェット・アンダーグラウンド、ヴァン・モリソンなどの名曲の数々も、サントラが絶対欲しくなってしまう素晴らしさ‼️ヴェンダース監督の最高傑作ではないかもしれませんが、最高傑作の一本である事は間違いないですね‼️
「この世界には、たくさんの世界がある。つながっているように見えても、つながっていない世界がある・・・」‼️
IMPERFECT LIFE
平山の暮らしは形容し難い。
仙人とも、清貧とも、“丁寧な暮らし”とも、“衣食足りて礼節を知る”とも、近いようでどこか違う。
物語とは言えないそれを、ただ追っていく。
意味深に出てきた人物、伏線に感じた出来事や台詞は特に活かされない。
脇役はおろか、平山の過去や考えですら全く明かしてくれない。
だが、それでも見ていられるのだから凄い。
役所広司の演技や、一風変わったトイレ、画面の端に差し込まれる紫や緑の光、曲、モノクロのカット…
そういったものが、静かながら確かな抑揚を生み出していた。
序盤は口数も少なく泰然として感じるが、徐々に印象が変化してゆく。
ほっぺにチューされてドギマギした後に、思い出してニヤニヤする中学生みたいな姿がかわいい。
姪との交流や、妹との再会、匂わされる父親との関係が、唯一明かされる過去である。
ママの元旦那が口にする「会っておきたかった」は、分かり易くも胸に沁みた。
そういった流れからの、ラストの笑い泣き。
平山が蓋をしていたもの、日々の綻び、不安、後悔など様々なものが溢れたように見えた。
穏やかな暮らしに見えるが、タイトルは『PERFECT DAYS』であって『PERFECT LIFE』ではないのだ。
ELLEGARDENの『PERFECT DAYS』の詞に通ずるものを感じます。
観進めるごとに、はじめは理解できなかった平山の解像度が上がり、同じ人間なのだと感じられた。
街と人と道路とトイレの素晴らしい時間
まったく素晴らしい時間だった。役所広司演じるトイレ掃除のおっさんの最初の1日のルーティン観てるだけでグッときてしまった。何を大切に、何を感じ、街を眺め、街の中に生き、街の中に見つけ、そんな一日。ベンダースの今がそうなのか。こういうのは日本的なのかと思ってたのが、ベンダースから提示されるとは。
孤独ではあるが寂しさと違う。距離を置いているけど離れてない。「今度は今度今は今」ではないけど、その境界線を大事に生きる人生の断片。その日常を少し掻き乱す人たちの断片から想像できるその先の世界、主人公の想像を良き方に超える、想像外の小さなサプライズが嬉しい。同僚の柄本時生とその彼女、改札脇の飲み屋、行きつけのママさんとその男の話、役所広司のリアクションが本当にいい。ラストのドライビングシーン、その表情が素晴らしかった。
過去の作品に比べて軽やかであるが、やはり映画と街と人、とりわけ道路の景色がとても沁みた。
これでいいのだ〜
独身の末路、日常
高すぎた期待よりは下回ったかな?
ニーナ・シモン「Feeling Good」に心震える!あまりにも深いありふれた日常のその意味とは・・・
feeling good「最高の気分だわ〜」
ラストに流れるニーナ・シモン歌うこの曲に全てが集約されている様に思う。
(他の方のコメント見ていないので重複した感想になるかもしれません)
ニーナ・シモンは1950〜70年代のジャズ、フォーク、ブルース、R&B、ゴスペル歌手、ピアニスト、公民権活動家、市民運動家。そう彼女の人生はそれこそ差別や偏見の波に翻弄された人生だった、クラシック音楽家を志したニーナは名門カーティス音楽院の入学を拒否される、溢れた才能があるのに黒人でありしかも女性のミュージシャンであるという事でその存在は音楽業界において忌避されるようになった。それが、当時のアメリカの音楽業界であり、アメリカ社会の現実だった。
「feeling good」その曲のタイトルはとても明るく意気揚々なタイトルなのに曲調は決して明るい曲では無い、重苦しい中から搾り出すような魂の叫び、それはまさに彼女の人生でもあり差別や偏見に晒されていた人達全ての叫びであったのだろう。
この作品でも淡々とした日常、朝家を出る時空を見上げて微笑む平山(役所広司)の表情は一見幸せな様にも見える、しかしその実は・・・ラストに車の中で微笑むその目にはみるみるとこらえきれない思いが溢れ、こぼれ落ちそうになる。
多くの“言葉”が無くてもその表情に込められた思いはあまりにも深すぎる、深すぎる、深すぎる。
人それぞれ背負ってたものは色々あるだろう、でも自分の人生の中であんな風に微笑みを浮かべながら涙を流す事はあっただろうか?
平山のありふれた日常、あの微笑みの裏には「ただ、トイレ掃除をするおじさんの話し」なんかでは無い「微笑みながらも涙が溢れてしまう様な日々」があったのかと思うと、えも言われぬ何かが込み上げてくる・・・。
そして
もう一つ裏に込められたキーワードは「アナログ」かもしれない。
平山が音楽を聴くのはカセットテープ、写真はフィルムカメラ、デジタルが当たり前の現代において日常使っているものはアナログなものばかりだ。
アナログってどう?古い物?デジタルより劣ってる?いやそんな事は無い、CDとレコードの音にしても自然界に存在する音は基本的に全て「アナログ量」の信号、デジタルはあくまでアナログの信号である音のデータをデジタルデータ化して「近似」する形で記録しているに過ぎないのだ、つまり人間が聴き取れ無い、必要が無い音=情報は排除されてるという事だ。
自分達が見たり聴いたりしているものが全てであり真実なのだろうか?身近な音や映像にしても気付かぬうちに“不要”とされた情報が削除されている、世の中の全ての情報も結局のところ真実の全てであろうはずが無い。
気づかぬうちに排除されているがその隙間に間違い無く存在するアナログ=真実の情報そのものを見極める事がとても大切なことなのではないのだろうか。
勝手ながらそんな風に解釈した。
Oh, freedom is mine, and I know how I feel.
It’s a new dawn, it’s a new day, it’s a new life for me.
And I’m feelin‘ good.
ああ、自由をやっと掴んだわ、そしてこの気持ちを噛み締めるの。
夜が明けて、新しい一日が始まる、私の新しい人生。
最高の気分だわ(〜ってもう言葉には表せない!)
多分もう一度この作品を観たら、涙が止まらないかもしれない。
あの箒の音もいつか聞こえなくなる
何故トイレの清掃員になったのか?
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