PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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心地いい映画だった
人生を磨く
行間が多く、セリフは少ない。大きな出来事が起こるわけでも、明確なメッセージがあるわけでも無いのに、なんだろうこの胸のざわめきは。当たり前だと、めんどくさいと思っていた毎日は、こんなにも美しくて素晴らしいものだったのか。なんと言い表せばいいのか分からないが、一生心に留めておきたい、今年ベストの映画だった。
〈こんなふうに生きていけたら〉のキャッチフレーズ通り、平山の人生はすごくカッコイイ。玄関前に必需品を並べたり、毎朝空を眺めたり、小さな照明の下で本を読んだり、どれもこれも自分の日常に取り入れたいものばかり。世界中が生きずらさを身体で感じた、2020~2022。1人で生きることが辛い、苦しいと誰しもが思ったはず。しかし、そんな世界で小さな幸せを見つけるというのは、ある種の生きる術であり、孤独を感じない唯一の方法じゃないだろうか。そんな空白の3年間を経験した我々にとって、主人公の平山は憧れの生き方をしている。無論、その"空白"は今なお続いており、いや、あの病気が進行させてしまったと言った方がいいのか。人の目を気にしたり、孤独を抱えながら生きる世の中で、この映画の世界は一筋の希望であり、この世界で生きることを肯定してくれたような気がした。
主人公を寡黙な人物にすることによって、主人公もその他の登場人物も、全員魅力的で輝いて見える。〈ほとんどの時間が無言の演技で支配している〉と予告で流れる感想にあるように、役所広司はほとんど口を開かない。それでいて、観客の心を震わせることが出来ている。ラストカットなんてすごい表現力だ。大好きなシーンは数え切れないほどあるけど、特にお気に入りなのは三浦友和との影踏みのシーン。日本映画界の重鎮2人が、意気揚々と子どもみたいなことしていて、すごく微笑ましかった笑 2人って共演したことあるのかな。もしあったら作品名教えて頂きたいんですけど...、記憶にないくらい珍しい組み合わせで、海外の監督だったからなし得たことだな〜と思ったり。役所広司と三浦友和の役柄が逆でも、めちゃくちゃいい感じになっていた気がするな。逆パターンも見たい😁
日本を舞台にしているのに同じ日本に思えず、ドイツの監督なのに、日本人監督が描く日本よりもリアルで鮮明に描かれていた。トイレや居酒屋、スナック、コインランドリー等のロケーションのセンスも抜群にいい。ヴィム・ヴェンダースは日本のことを日本人以上に理解している。この国の善し悪しどちらも絶妙なバランスで作品に取り入れているし、なんたって日本を舞台にした作品なのに70年代の洋楽がピッタリハマっている。ヴィム・ヴェンダースが監督だけど、一応本作は邦画という扱いでいいのかしら。もしそうだったら、これまでの邦画で1番音楽が輝いている作品だと断言していい。ここ2日間はプレイリストをリピートとし続けています。
フィルム映画のような縦横比もまたいい。エンドロール後だってカッコよすぎる。本作でしか味わえない養分がたんまり。思いっきり抱きしめたくなるほど、全てがたまらなかった。もう言いたいことがありすぎるけど、ひとつ言いたい。この映画は今を生きる全ての人に送る、最高の人生賛歌作品だ。
世界に生きている全ての人の姿に重なる物語。(1ヶ月後の再鑑賞を追加して)
素敵なロマンスはない。
友情も出会いもない。
しかし普通の人間はいる。
その人は朝起きて、支度をし、仕事にゆく。
仕事が終わり、自分の時間を楽しみ床に着く。
そして次の朝が来て、支度をして仕事にゆく。
毎日その繰り返しだが、幸せに満ちている。
眺め、発見し、生きがいを感じる主人公。
主人公の平山は自分のペースで生きている。
いつもと何かが違うと、ちょっと窮屈に思う。
平山は何故このような生活をしているのか?
カセットテープで音楽を聴く1980年前後の世代、
そこで平山の時間は止まったままなのか?
淡々と進む物語の中に、明確な答えはない。
感じること、見えること。
それは、世代や性別、職業に関係なく、
観ているみんなが「平山」なのだと気が付く。
彼と同じ毎日を送っていることに気が付く。
楽しみや悲しみを持っていることに気が付く。
彼の後ろ姿は自分の後ろ姿なのだと気が付く。
ラストシーンの顔。
彼の心にある感情。心に刺さった傷跡。
家族のこと。仕事のこと。求めるもの。
幸福感。喪失感。重ね合わせた自身の姿。
平山の夜。
誰もが感じる夜。
※
「再鑑賞後に … 」
この作品と長く付き合えるのか?
そう思い、再鑑賞をしてみた。
見えなかった部分が浮き上がり
前回よりも強く「そばに在るべき存在」
そう感じるようになった。
特に「小さな音」は「光の揺らぎ」と同等に
そこにあり、大きな存在を感じた。
※
淡々と生きることが最高の幸せである!
この映画の極論は、人生は100%完璧で幸福だということでしょうか。つまり今が不幸せだから足りないものを求めて希望や夢だと言って足掻くことなどに意味がなく、今生きていることの幸せを享受し淡々と生きていくのが美しくてパーフェクトな人生なのだということなのでしょう。設定ではトイレ掃除といいう職業です。職業に貴賎はありませんが、行う人にとってはある意味プライドを捨てた職業かもしれません。それをまるで宝の時間のように役所広司は淡々とやり抜いていくのです。もちろん悲しいことや辛いことがあって泣いたり苦しんだりしますが、その全てが満面の笑みに変わっていくのです。生きることの幸せは日常にしかないと高らかに歌っているようです。人生はあるがままが一番幸せなのだとつくづく思いました。劇中いろいろな金言が囁かれます。「変わっていくのが人生であり、変わらなければならない」「今と今度は違う」「木漏れ日は刹那である。一度しかないものである」。役所が木にすごい執着を持ちますが、きっと生命の不可思議を感じているのでしょうか。私は、毎日の日常の繰り返しに眠ってしまうかもしれないと危惧していましたが、最初から最後まで人間の日常を深く描く魅力に取り憑かれたようになって、あっという間に観終わった気がします。ありふれた姪との別れでさえ涙が滲んでくるのです。この作品は間違いなく多くの人の心を打つと思います。それは私たちの日常の美しさを隅々まで描いているような気がするからです。
追記 江東区、墨田区、台東区、そして隅田川の背景が心に沁みます。仕事などで何度も足を運んだ故郷のような場所です。
昨日は丁度
友人の帰国と共に開催された対談企画にお邪魔していた。その席で彼が対談していた相手は、超紐理論で一躍一斉を風靡した素粒子物理学者の橋本幸士先生だった。この橋本先生に僕は企画実施前に話しかけ、アインシュタインとボーアの論争について質問を投げかけていた。その会話の延長で、存在とエネルギーと何物も逃れられない力、重力について気付きを与えて頂いた。それは全てにおいて、量子のなせる世界だったのであるのだが。
本作はその対談の翌日に観た◎
それ故に描かれている世界が非常にわかりやすく伝わってきた。そしてこの映画を描いたヴェムベンダース監督の力と、素粒子の如き役割に徹した、役所氏に心の底から敬意を送る気持ちになれた。特に、素粒子でありながら見えるが故に感情移入し易い人間と言う生き物の心の変化を具に浮かび上がらせ時に迫ってくる演技に驚嘆を感じた!
まさにパーフェクトデイである(^^)
そして最後に本作を観るきっかけをくれた
僕の大好きな曲の一つであるルーリードの
パーフェクトデイに感謝したい🙆
ありがとう。全てが一つへと戻るまでに!
石川さゆりママのスナックに行きたい
役所広司がカンヌ国際映画祭の男優賞を受賞した記念すべき作品が、満を持して日本公開となりましたので、早速観に行きました。冒頭役所広司扮する主人公・平山が住むアパートが出て来ますが、木造2階建ての古びたアパートで、ここに一人で暮らす主人公。直ぐに頭に浮かんだのが、同じ役所広司主演で2021年に公開された「すばらしき世界」。あちらは刑務所を出所したばかりの元ヤクザを役所広司が演じたお話でしたが、あの作品でも主人公の住処は確か木造2階建ての古びたアパートだったと記憶しています。「すばらしき世界」の方にはカーテンがあって物語にも深く関わっていましたが、本作のカーテンは端っこに括られた状態で夜も締めずにいたのが違いと言えば違いでしたが、中年男性が木造2階建ての古びたアパートに一人で住んでいるというシチュエーションが共通していて、何となく本作の主人公・平山も、その筋の人なのかしらと連想。だとすると結構賑やかというか動的な作品なのかと思いきや、全く逆に極めて静的で、大事件どころか小事件の一つも起こらないような非常に穏やかなお話でした。まあ予告編とか前評判からすれば予想通りなんですが、平山の部屋の様子から、あらぬ想像を働かせてしまったところでした。
さて内容ですが、平山は極めて寡黙な男で、最初は喋ることが出来ない人なのかと思ったくらい。そんな平山の感情を、表情だけで観客に伝えた役所広司の演技は流石というところ。下町(多分亀戸)に住む平山が、渋谷区にあるデザイナーズトイレの清掃をする日常を淡々と描くストーリーでしたが、登場人物の多くは、男女に関わらず寡黙な彼に惹かれる人が多く、話が進む毎に観ているこちらも平山の人間性に魅せられていくという不思議な創りになっていました。その要因は、平山という人物が、何があっても泰然自若とし、心穏やかに暮らしている姿に、周りの人間が心洗われる思いをすると同時に、一種の憧れを感じたからではないかと感じたところです。唯一彼が感情的になったのも、仕事の相棒であるタカシ(柄本時生)が突然退職してしまい、タカシのシフト分をカバーしないといけなくなった時だけでした。これは、体力的な問題もさることながら、変わらぬ日常が壊されたことに対する怒りだったように思えました。
そんな平山ですが、一体どんな人物なのか、読んでいる本や聞いている音楽から、結構インテリっぽい感じであることは察しが付きましたが、後半姪っ子(中野有紗)やその母親(麻生祐未)である妹が登場し、何となく概観が分かるに至り、尚のこと彼の存在やその日常が愛おしいものに思えてきたところでエンディング。いや~、年末に良い作品に会えて非常に幸せでした。
そう言えば、劇中平山が通う小料理屋というかスナックが登場します。ママは石川さゆり。お客が弾くギターの伴奏で石川さゆりが熱唱するシーンがありましたが、こんな店があったら毎日通うよなって思いました(笑)石川さゆり以外にも、細かいところまで豪華なキャスティングをしており、気付かなかったところでは研ナオコまで出演しており、エンドロールで彼女の名前があったのにビックリしました。
平山が今話題のダイハツ・ハイゼット カーゴのカセット(!)で聞く音楽の選曲も絶妙だったし、キャスティングも微に入り細を穿ったところまで気を配っており、ホント非の打ち所がない作品でした。
そんな訳で、評価は★5とします。
退屈な映画なのでお薦めはしませんが
せっかくの冬休みですから、家族や友人たちと映画を楽しみたいならば、『SPY×FAMILY』や『翔んで埼玉』とかのほうが良いかもしれません(私は観てないのでよく知りませんが)
逆に今作『PERFECT DAYS』は、独りで静かに、自分の人生に照らして観ると味わい深くなりますので、やはり若い世代には向かない気がします
ネタバレになるのであまり詳しくは書きませんが、「今度は今度、今は今」「影が重なってるのに何も変わらないなんてないでしょう」などの台詞が、最後の朝焼けに照らされる主人公の涙目(涙は見せない)につながります
プロフェッショナルな製作スタッフ・俳優さんたちの、本物の映画を堪能したいという方は、ぜひどうぞ
すばらしき世界
彼は誰の目にも止まらない、さながら透明人間
住む世界が違うのだ、世の中にはそんな世界が多くあると彼は言う
誰がどう決めるのか?
何が違うと世界が変わるのか?
そこには何の意味があるのか?
分からない事だらけだ
違う世界との繋がりは何も無いわけではない、薄らとその影は重なっている
そしてきっと重なる影は濃くなるはずなのだ
どちらかが欠けても成り立たない世界
民さんが優しく踊る、彼の世界も繋がっている
交わることはなくても繋がっている
作品を見て思い出した詩があります
ご存知の方も多いことかと思います
改めて今一度読んでみるとやはり心にズシリときます
もう、何十年も前の詩ですが色褪せず今も変わらぬメッセージが届きます
きっとその頃と今と何も変わらぬ世界がここにあるのでしょうね
この映画や詩を作らなければならない世界
そんな世界も今の一部なのですから
『便所掃除』 濱口國雄
扉をあけます
頭のしんまでくさくなります
………………
まったりと違う生き方を観る映画
人生宝探し!
主人公の平山は、過去には全く違う仕事をしていたであろう人物ですが、彼の過去〜現在への流れについて一切触れていない。
そこに作者のメッセージは無いのですね。部屋の片付けに例えるならば断捨離の様な映画に思えた。今にだけスポットを当てているから鑑賞している側が想像力を使うなぁ。嫌いではありません。
過去に色んな事があったからこそ、平山は多くを語らない人物になったのでしょうか。
彼は、ただのルーティンの繰り返しの様にみえる日々の中で、周囲の小さな変化に気付いて上手に楽しみ、そして喜び、密かな恋をしてる。
沢山の人の中には、注目を浴びる人もいればそうで無い人も勿論いて、でもどんな人にも気付く事さえ出来て、楽しむ工夫も出来るなら、身の回りには小さく芽吹いた自分なりのstoryが溢れてる。
「お金が無いと恋も出来ないのか」と言い仕事を突然辞めて行った若き同僚が、主人公の年齢に達する頃に置かれた場所で咲く事の出来る人に変わっているでしょうか?
身の回りには宝が埋もれてる。
探し当てられるかはその人次第。
宝に気付ければ人生は何倍にも楽しめる。
物事を正面から受け入れる主人公とそれを見事に演じる役所広司が印象に残る良き映画でした。
心地の良い説明不足
大きな出来事はなく、朝のシーンは、間違い探しくらいの再放送。
住んでるアパートは『すばらしき世界』ともあまり変わらない。
アヤちゃんの事、神社のOLさんの事、カセットテープの顛末など、答え合わせはない。
姪っ子が来たあたりで新展開かと思いきや、1人にしちゃいけない事や、過去に父親と何かあったはずだろうことも語られることはなく、全て観客の想像にお任せします。
ただ清掃員のおじさんの日常を観るだけなのに、あれもう終わり?というくらいに観てられるのは、小津安二郎監督に影響を受けたヴィム・ヴェンダースだからかな。
まだ薄暗い早朝の自販機や植物部屋の紫のライト、朝焼け夕焼けなどいろいろな光が美しい。
撮影班と照明班の連携で、なんて事ない日常の風景が、素晴らしい映像美に仕上がってる。
日常劇場
まるで歯医者の診療椅子に身を預けながら眺める環境動画のような、取り立てて何かが起こることもない日々の暮らし振りがスクリーンに描き出される。
でも人間って大体そんなもんだろ。燦燦と降り注ぐお日さまの下に立ち続けるのは疲れちゃうし、影に影を重ねて暗から黒へ沈んでしまうのは怖くてしようがない。
木洩れ日の下、目を細めて見上げるくらいが身の丈に合って丁度良い。そんなことを想わせてくれる作品でした。
樹を愛でる、ひとっぷろ浴びて仕事の疲れを癒す、流した汗は馴染みの店で「お帰り」と声を掛けられ、喉から流し込んで補給する。
このように好意的に受け入れられる要素は沢山有りました、その反面、夜瞼を閉じてから映し出される残像のような振り返りのシーン、登場人物たちがふとした瞬間浮かべるけげんな表情、そして流す涙の意味がもう一つ理解足らずでおいて行かれるような気分も多少なりともありました。
そうは言っても、ワタシには馴染みのある江東・浅草(それも銀座線浅草駅のカオスな地下街!)・渋谷などの風景に「そうそう、アソコだ!」と心躍ったり、田中泯さんの素敵な踊りに物凄い存在感を感じたり、胸に染みる作品でした。
観る人によって受け取る感情は千差万別、評価が分かれるかもしれませんね。
何が始まるでもなく、何が終わるわけでもないが
幸せは自分で決めて良い
10のうち10の生活
徹底してデジタルを排除した生活
単調な繰り返しに近い生活
煩わしい人間関係を避けた生活
でもそこには、アナログの温かさがあり、モノトーンな時の流れとは違い、何かたしかなつながりが実感できる暮らしぶりが見えました。
それはまさに理想的な生活に見えました。
ヒラヤマさんは、「分からないことばかり」で終えることになる人生で全く正反対な生活を送っていたかもしれないところ、何かを覚悟した上で単純で単調なように見える生活を選んだんだと想像します。
単純で単調に暮らすことは、特に今の時代には決して簡単なことではないはずですから。
「何も変わらないなんてありえない」ことも理解して、そんな生活を大事に楽しんでいるように見えました。
似たようなリズムでの生活が続くなかでも、当然、静かながらも喜怒哀楽があり、決して同じ表情で過ごしていくということはなく、その一つひとつの表情にみせられました。
木漏れ日を見上げる表情、無機質な高速道路を見上げる表情、そんな細やかな違いでヒラヤマさんを表現されていたのが印象的でした。
それにしても、東京にはいろんなかたちのトイレがありますね。
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