PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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人生を表情で表現する
主人公の平山は、日常の中にある小さな幸せに気付き、たくさん集めることが出来る、ある意味幸福な人間なのだと思います。
生活に必要なだけの給与で、自分の好きなことを繰り返し行い、余計なしがらみを持たず生きていく人生。
でも自分の周りは確実に変化していることにも気付いている様子。
終盤、新しい一日の始まりを朝日を浴びながら運転している中で見せる表情。
繰り返す毎日の充実感と喜びの中に、不安や後悔が入り交じったような平山の表情は、役所さんにしか出来ない、人生が凝縮されているようで圧巻でした。
朝は笑顔で迎えたい
タイトルなし(ネタバレ)
平山演じる役所広司さんの寡黙な演技と、同僚である柄本時生さんのチャランポランだけど人たらし系の演技が、思わず微笑んでしまうほど素晴らしい。
平山さんの丁寧な掃除は、心までスッキリする感覚を覚えた。綺麗好きなところと清潔感を大事にしているのかなと言う部分を見て取れた。
寡黙だから車で流れる洋楽と、とてもよく合う。
観客に想像を任せるシーンが2回ほどあったかも。
毎日同じ日はない
極上の音楽と映像でトイレ清掃業者をカッコよく描くという前代未聞の試み
ヴィム・ヴェンダースとジム・ジャームッシュが時々ゴッチャになるなどと言ったら両方のファンから袋叩きにされるだろうと思う。
そのくらいカンヌ映画祭的な映画には疎い。
カンヌ映画祭というと「観た人それぞれに解釈が委ねられる映画」が多い(気がする)。
こちらとしては自分なりに解釈しろと言われると不安になる。
意地悪しないでちゃんと答えを言ってよ、という気になる。
アメコミ映画ばっかり観ててすみません、という気持ちにもなる(笑)。
この映画も「観た人それぞれに解釈が委ねられる映画」だった。
特に何か大きな事件が起こるわけでもなく、孤独な中年のトイレ清掃業者の日常が淡々と描かれている。
何の解答も解決も提示されず、観客は放ったらかし状態である。
ただし、極上の音楽と映像でトイレ清掃業者が描かれるのである。しかもトイレ清掃業者を演じるのは役所広司である。
かつて、これほどまでにトイレ清掃業者をカッコよく描く映画があっただろうか(いや、ない)。
あまりにもカッコよすぎて何だかCMみたいだと思ってしまうくらいなのだが、Wikipediaによれば、渋谷区内17か所の公共トイレを刷新する日本財団のプロジェクト「THE TOKYO TOILET」のPR活動として短編映画を作る、というのが製作の発端だったようで、営利目的ではないにしてもそもそもCMに近い構想が根っこにある映画なのだ。
そしてこの、「あまりにもカッコよすぎる」ということで映画の評価が分かれている気がする。
日本のワーキングプアの過酷な現実を知っている人ほど否定的な意見になるようだが、それも無理からぬことだと思う。
自分も単純肉体労働の経験が10年以上あり、四畳半一間で風呂無しトイレ共同という激安アパートで暮らした経験もある。
そういう人間の目から見ると、この映画の主人公平山の清掃業者としての業務形態も生活レベルもあまりにも現実とかけ離れていて、こんな清掃業者は日本中どこを探してもいないよ、と思ってしまうのは事実である。
だが、それが何だというのか。
アメコミヒーローだって世界中どこを探したっていはしないのである。
いないとわかってても人はヒーローに会いたくて映画館に足を運ぶのである。
日本中どこを探してもいないようなカッコいいトイレ清掃業者に会いたくて映画館に足を運んで何が悪いというのか。
自分も、もし佐藤二朗あたりの性格俳優を使って、本当にうす汚い公衆便所を掃除する孤独な中年のトイレ清掃業者のリアルな日常を洗練されたタッチでカッコよく描くような映画があればそれを観たいと思う。だけど、たぶんそんな映画は作られないだろう。
そもそも、日本の中高年のトイレ清掃業者を洗練されたタッチでカッコよく描くということが前代未聞の試みなのである。
日本映画界が見向きもしない、と言うより目を背けてきた題材、まさに臭いものに蓋をするような感覚で避けてきた題材で外国人監督に映画を作られてしまったのだ。それもメチャクチャ洗練された、カッコいい映画を作られてしまったのだ。
こんなものを見せられてしまったら、いったんはヴィム・ヴェンダースに「恐れ入りました」と言うしかないではないか。
外国人監督が日本を舞台にして撮った映画の中ではずば抜けた傑作と言っていい映画だと思う。
この映画は過酷な現実を無視した夢物語かも知れない。確かに映画の中には過酷な現実をしっかりと見据えるような、そういうタイプの映画もあるだろう。
だがこの映画は、いささか人生に疲れている中高年男性にほんのいっとき夢を与え、ほんのいっとき休ませてくれる、そういうタイプの映画なのだ。
それがこの映画の全てではないにしても、この映画は人を夢の世界にいざなうタイプの映画だと自分は思っている。
そんな現実離れした夢の世界は自分には必要ないという人もいるとは思うけれど、そういう人たちはそもそも過酷な現実としっかり向き合える強い人たちであり、映画というひとときの夢を楽しむ装置自体を必要としない人たちだろう。
根っからの映画好きである自分は、少なくとも、独身かつ中高年の単純肉体労働者の過酷な日常を洗練されたタッチでカッコよく描くような別の日本映画が現れるまでは『PERFECT DAYS』を推奨し続けることにする。
自分は音楽に詳しくないので個々の曲についての言及は避けるが、極上の音楽が抜群のセンスによって絶妙に配置されており、この音楽と映像の融合に浸るだけでもこの映画は観る価値があると言えるだろう。
日常に感じる幸福感は西洋人も東洋人も差がない
『ベルリン天使の詩』の監督さんが日本の公衆トイレの清掃員を主役にした映画をとって、それを役所広司さんが演じるというので、必見だ!と思っていた作品です。でも、(日本のトイレ清掃員を貧者のキリストとして聖人とみなして描いた作品だったら重くてしんどいなあ、西洋人富裕層のメルヘンだよ…)とみる前から深読みしすぎて疲れてしまって、結局映画館に行かず、気が付いたら、見るのを避けていました。
25年になって実際に見てみたら、難解さを感じないシンプルなお話で、子供がみても理解できるストーリーでした。心が癒される場面も多くて、なにより役所さんが素敵で見るのが楽しかったです。
清掃員の平山さんはこの仕事が好きなんだというのが分かってきて、でもインテリっぽい人で、昔はお金持ちだったんだろうなあというのが分かるように描かれています。なのでホワイトカラーの仕事を辞めてお給料の安い清掃員をやっているので、わけありなんだろうなあと察してみたい。でも、清掃員の仕事をしている平山さんの人生は充実していて、とても幸せそうに見える。
深読みが止まらない作品で、映画を見終わったあと、一緒に見た人と自分の深読みを発表し合って、語り合いまくりました。
それで、この作品は平山さんが劇中で読んでいる「本」と平山さんが聞いている「音楽」のリストが公式HPにあるので、平山が何を思い何を考えている人間かを深堀りしたい人は、公式HPに紹介されてる本を買って、音楽を聴いて、映画の内容を思い出しながら楽しむことができます。
映画で使われている音楽はほとんど洋楽なので、平山さんが聞いていた音楽の歌詞の和訳を探して読んでみましたが、(ああ、この作品、本当に難しく考える必要のない映画だったのかも)と改めて思わされました。
なんで難しく考えようとしてしまうんだろう……。
そういえば監督の代表作ともいえる『ベルリン天使の詩』も、子供が見ても理解できるお話だったのに、当時の学生の間では深読み大会だったし、ヴィム・ヴェンダース監督作品はなぜかそうなってしまいます。
でも、冷静に考えてみると、役所さんは今年69歳で、69歳で働き続けたいと考えて仕事を探すると、警備員か清掃員が多いという話を聞いたがあります。だから、別に「貧者のキリスト」でもなんでもなくて、69歳の日本人の普通の日常を淡々と描いた作品ともいえるのかもしれないし、あまり難しく考えるの止めようと思いました。
穏やかな気持ちになれる、リラクゼーション的作品
今日(2025/02/08)から数日間かけて観ました。
無口で影のある男が主体の作品ですが、彼が本作の主人公というべきなのか、少し考えてしまいます。
早朝から出勤。仕事用の車はカセットテープが再生できる旧式。心地よい洋楽が流れるなか現場に到着。
公衆トイレの清掃員という、過酷で孤独な仕事に就いており、仕事終わりに一杯ひっかけて、就寝前に寝室で読書をして眠る。本当に絵に描いたような地味な生活。そんな中起こるわずかな変化やものごとに、自分自身の生活を重ね合わせ、気づくと彼に感情移入して魅入ってしまいました。
『かもめ食堂』、『ツユクサ』、『きのう何食べた?』などのようなゆっくりとした空気の流れが心地よい映画です。
監督が外国人(ヴィム・ヴェンダース)ということもあり、日本人にはない日本ならではの美しさ、おかしな所などを映像やキャストの振る舞いを見られます。
落ち着いた雰囲気の良い映画だと思います。アマプラからどうぞ👋
タイトルなし(ネタバレ)
「PERFECT DAYS」ってどういう意味なのかな、と考えてみた。一日、一日を、精一杯生きるってことかな。同じことの繰り返しに見えるけどいつも何か違う、平凡で大切な毎日を、命を尽くして生きる。
何にも分からないのが良いね。
役所広司はなぜトイレ清掃の仕事をしているのか。父親とどんな確執があったのか。姪っ子はなぜ家出したのか。柄本時生はなぜ突然仕事を辞めたのか。田中泯はなぜホームレスになったのか。飲み屋のママ石川さゆりと、元夫三浦友和はなぜ離婚したのか。皆んなそれぞれのPERFECT DAYSがあるのだ。不器用で、苦くて、それでもいつか必ずお別れする時が訪れる。サヨナラは名残惜しい。
バックで流れる往年の名曲や、古本屋で購入して来る文庫本を丁寧に紐解けば、そこに「なぜ?」に対するヒントが隠されているかもしれません。
映画を見始めてしばらくは、妙な違和感がありました。映像がすごく生々しくて、自分もそこに居るような感覚になるのはどうしてだろう?と。なんか質感が違う。最初は、自分が東京でずっと働いていたからそう思うのかな?と思ったけど、ドキュメンタリー風に撮影したと知って納得しました。使用するカメラが違うんでしょうか?凄く良かったです。匂いや音、風、光、雑踏の生活音も肌で感じられるようでした。
あと、現代的なスカイツリーと、昭和にタイムスリップしたようなレトロな街並みとの対比が面白かったです。ああ東京ってそういう街やんな…一歩路地裏へ入れば混ぜこぜで、そういうとこ大好きだ、、と思いました。無関心なくせにノスタルジックで、切なさが込み上げる不思議な街。
若い時はあまりピンと来ないかもしれません。歳をとってから見ると、きっとグッと来ちゃうと思います。人生は思っているより短い。最後のシーンは本当に言葉になりません。役所広司の素晴らしい演技に涙が止まりません。
自分の生活を直視させられているようだった
贅沢な暮らし
トイレ掃除で生計を立てる平山(役所広司)の毎日の暮らしを、ただただ追う映画なのだけれど、この映画を見終わったあとすごく満ち足りた自分がいた。役所広司さんの表情の演技がとてもよく、平山の生活がとても「贅沢」で「豊か」に見えた。
お金はない。けれど、暇はある。
けれど、平山は退屈していない。
古書店で本を買っては、毎夜少しずつ読んで、朝には植物に水をあげる。昼食は神社の一画でとり、光や影、木々を浴びてはたまに写真を撮る。目的はない。誰に自慢するわけでもない。平山は、それを“快”としてただただ享受する。
そんなルーティンのような毎日も、同じようで同じでなくて、姪が現れては嬉しくなったり、恋情で寂しくなったり、勝手に仕事を辞められて怒ったり、人にちょっとだけ優しくしたりする。でも、それは確かに平山自身の感情で情動で、いちいち感情に機微があることは、実はとても豊かなことなのだと思った。
日々新しいものが生まれ、競争し、いつも焦燥に駆られるような毎日。SNSや広告に煽られて、ないはずの欠落を刺激され、消費や承認で埋める日々。だけれども、「今すでに満ちている」と知っていれば、光や影、木々、感情の機微でさえも、享受するばかりで、それは「贅沢」になる。
だから、こう考えるとよいのかもしれない。
「もうすでに、誰の日々も完全である(PERFECT DAYS)」、と。
終始退屈な映画だったと感じる方もいると思うが、是非観て欲しい。 仕...
終始退屈な映画だったと感じる方もいると思うが、是非観て欲しい。
仕事はトイレ清掃員、勘木を好み、木漏れ日をフィルムのカメラに収め、銭湯に通い、馴染みの飲み屋に寄り、文庫本を読んで寝落ちする。決して贅沢な暮らしでは無いけど、最小限の日常で趣味やささやかな楽しみを出来るほどの稼ぎで幸せを感じることが出来る。生きていくことが出来る。
これは普通の事だけどこの生活で満足したり、納得し、幸せを感じることができる人は中々いないと思う。実際私はこういう暮らしに憧れを抱きながらも、結局は贅沢な暮らしをしたいと思ってしまう。
だからこそ私はこの映画がすき。頑張らなくていい、こういう暮らしでいい、これも幸せなんだと教えてくれるから。
何処にでもある哲学
単調な繰り返しの毎日、木の葉、木洩れ日、朝のホウキの音、影など至る所に深い意味と楽しみがある。主人公はどうやら良いところの子で父親に反発してこういう生活をしているらしい。テレビもなく植木と本と写真が楽しみのようだ。東京の公衆便所は様々で面白ろい。多分彼はこの生活に満足し、夢を見ている。日本なのに日本でないような所がある。ハグするところ。日本人はやらない。ハグしたい時があるけれど。でもなんだか見た後に何かが浮かんで残っている。
パーフェクトな日常の中に流れるもの
いまいち評価がわからない作品。東京都心でトイレ清掃員として暮らす60代男性の日常が淡々と映像で映し出される。潔癖で、質素で、単調な日々。それが彼のパーフェクトな毎日なのだ。チャランポランな仕事の同僚に困らされたり、姪っ子が突然やってきたり、行きつけの飲み屋の女将さんの元夫が現れたりと出来事は起きるがドラマは無く、日常に戻っていく。そんな彼の心、感情が揺れたのが妹から入所した父(認知症?)の様子を聞いた時と飲み屋の女将さんの元夫の命が短いという話を聞いた時。淡々と過ごす日常の中でも確実に訪れる老いや死という問題が、時間と共に流れているということを実感させる。
こうした淡々とした映像の中に、その背景にあるであろうドラマを様々に想像し考えを巡らせることが、この作品の面白いところなのかもしれない。
本当に何もない言葉さえ発しない序盤部分が一番心地よかった。
何もないを演技した役所広司は凄いなと思った。
ただ、自分がこの映画を観たタイミングとか波長がたまたま合っていただけで、退屈だったって人の感想にも納得出来る。
残念だった点は、平山が実在していてその生活をのぞき見しているような気分でいたのに、突然人の意思が見えてしまうような瞬間がいくつか見受けられた部分。
ラストの影踏みや平山が歌い出すところ、突然の若い娘からの好意等、それらの部分のわざとらしさに制作者の意図が見え透いて、さっきまで生きていた平山が急にお芝居をさせられている役所広司になってしまった。
歌う部分の不自然さについては監督が外国人である為しょうがないのかもしれないが、若い同僚の彼女に好意を持たれるという、おっさんの気持ち悪い願望が透けてしまったのはいただけなかった。
うーん分からない
❇️『些細な事が幸福感になるバイブル!』
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