PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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坦々とした日常に引き込まれるのはなぜだろう。
朝起きてからのルーティンが日々繰り返されて公衆トイレの清掃の仕事に行く。仕事終わりに銭湯で体を洗って、いつもの居酒屋で一杯やる。寝る前に本を詠む。これが、ほとんどセリフ無く、坦々と進む。そのあたりが何か引き込まれて共感さえ感じる。孤独だけど、自由があり、趣味のフィルムカメラや、カセットテープで音楽を聴く。植木も沢山育てている。生きていくってこういうことなのかなぁって感じた。
評価しないのは見る目が無いんだぞ的なワザとらしさが強すぎます
この作品をいい作品だったと言う事は誰にでもできると思います。日々の労働と小さな楽しみ。起伏の無い人生に時々少しだけ起きる波風。でも、日日是好日という感じで、次の日が始まる。お金が欲しい、幸福の追求せねば、何かを成し遂げなければ…という人生に疲れている人にはなかなか効く映画…に見えます。
ただ、これって「効く映画」なんですよね。実は映画の内容と意図が逆転してしまっている気がします。映画にするためにわざと作り出した淡々とした生活と、イベント。文学かと言われれば、文学的意味性をノスタルジー的感情を含めて強要していて文学ではなくなっている気がします。それがトイレ掃除という職業を対等に見ているようで見下しているクリエータサイドのエゴを感じます。
そして、ラストに泣きのシーンがあるので、今までこの男は人生を静かに楽しんでいたかもと言う、あるいは人生は生きていることに意味がある的なひょっとしたら感じたかもしれない味わいが、生き疲れた人間の希望が破壊されたように見えます。
全体的に内発的に沸き上がった表現したいという欲求よりも、それっぽいものを作った感を強く感じました。要するにきわめてワザとらしい映画だという事です。「評価しないのは見る目がないんだぞ、お前らわかってるな」的な映画の位置づけと相まって、ちょっと気分的に乗っかれないエセ文学臭がする作品でした。
なお、この映画なら役所広司じゃないと思います。他の俳優含めて全員あえて素人を使えばよかったのに。そこも減点要素です。
“完璧な日々“と幸せコレクションの1/fゆらぎ
古アパートに住み、毎朝同じ時間に起き、同様の支度を行い、同僚と清掃の仕事をして、銭湯で汗を流し、飲み屋で一杯飲んで、小説の続きを読み、眠くなったら就寝する。ルーティンで埋められた質素な生活、まるでお坊さんみたいと思いました。カセット音楽や文庫本の娯楽はあるし酒も肉も喰う、修行僧でもないお坊さんも今どきこんな感じ、と考えるとトイレ清掃を浄化と考えると公衆便所は檀家、毎日檀家を廻って念仏を唱えて浄化して、眠りにつくと浄土と俗世の間を微睡(まどろ)んでいる、と考えると平山氏の生活はちょっと仏教的で可笑しく見えて来ます。
修行僧の煩悩を排除した質素な生活を最小限とするとそこを何を足していけば自分のとって“完璧な生活“になるのでしょうか。音楽は欲しい今ならスポティファイ、観るなら小説と映画とネットフリックス、ビールと焼き鳥とカレーと寿司とラーメンは食べたい、そして自由なオートバイの旅。逆に足したくないものは理不尽な事を言う雇用主、イヤミを言う課長、騒がしい住処、変な匂いのする街。これくらいがちょうど良いな、と思うと平山氏よりもう少し収入が必要そうです。もっと欲望を剥き出せば海外旅行高級外車都内タワマンザギンでシースーなどなど、挙げればキリがありませんが宝くじでも当たらないと無理無理、結局のところ収入とのバランスで望む望まざるに関わらず取捨選択した結果で生活が築き上られているはず、時にはしんどい生活を送っていることもありますよね。
研究によると刺激が起きる頻度fと刺激の大きさPの関係がP=1/fの反比例、小さな刺激は頻繁に、中くらいの刺激はそこそこに、大きな刺激をたまにという感じでそれぞれ1/fの適切な頻度で起こると快適に感じるそうです(1/fゆらぎ)。例えば音楽とか関連があるようですね。平山氏の場合、綺麗な木漏れ日の写真を撮ったり小さな盆栽を育てているなどなど日々起こる“小さな幸せ“から、トイレで見つけた5目並べで対決したり音楽カセットが結構高値だったり同僚が狙っている女性にキスされたなどなど頻繁には起こらないイレギュラーな幸せ、それら大小合成された幸せの“ゆらぎ“が何でもない生活を充実させているように見えます。とはいえ逆に不快な刺激もある訳で、同僚がいいかげんな奴カセットテープを無くした(盗まれた)同僚にいきなりバックれられて仕事が夜までかかったなどなど本人としては不可抗力のコトもあり、人生は思うようにいかないところもまた刺激的です。
1/fゆらぎを作り出すように大小様々な幸せを程よい頻度で摂取できれば毎日を充実させて行ける、駅前の花屋の花が綺麗だったとか今年の桜の花が綺麗だったとか今日の夕焼けが綺麗だったとか美味しいラーメン屋を見つけたとかボーナスでブランド物を買ったとか最新のオートバイを買ったとか人それぞれ色々な幸せがあると思うのですが、それら大小の幸せを日々発見して自分だけのコレクションにしておくと容易に生活を充実させて行けるんじゃないかと思います。特に「食べること」については幸せの頻度と大きさを自分で御しやすい、と考えると美味しい店は正に“幸せのコレクション“、グルメ番組も流行る訳です。それらに加えて家族の幸せです。昔4人の子供がいる同僚に「子供の数だけ幸せが倍になる」と聴きました。家族もまた大きな幸せのコレクションに出来たなら理想的で最高です。日々折々適宜1/fゆらぎで幸せコレクションを摂取していければ、お金がなくても、やる気が起きなくても、運がついていなくても、何でもない日々を“完璧な日々“に近づけて行けるのかも知れません。
家出した姪が平山氏を頼って尋ねて来て、おそらく独身の平山氏は久しぶりの家族との再会ウキウキしているようで、姪の居心地が悪くならないよう細心の注意を払っているように見えました。滅多に起こらない大きな幸せの到来です。後日高級車レクサスに乗った妹が迎えに来た時の会話からどうやら実家が実業一家のお金持ちで平山氏は上流社会からドロップアウトしたような感じ。と言うことは平山氏はヘブンから堕ちてきた堕天使ルシファーに見えて来て、ベルゼブブ(姪)もヘブンから堕ちてきたんだけどガブリエル(妹)が迎えに来てルシファー(平山)に“大天使ミカエル(父)と仲直りしたら“と助言しているように思えて来ました。あゝこの映画は「カメイド 天使の詩」だったのか!お坊さんの話じゃなかった!
とりあえず幸せコレクションの一つ目は朝起きたら窓を開けて「太陽さーん今日もありがとう!、うわぁー今日もお花が綺麗!、あっ小鳥さーんオハヨウ!」と言うところから始めてみますかね。なんだかハイジとかキャンディで見たようなセリフ、思えば2作品とも“幸せコレクター“のお話でしたか。
麻生祐未
おっさんモーニングルーティーン映画NO1
選曲が泣ける
主人公の平山が持つカセット・テープで、運転中に曲が流れるというシチュエーションが何とも嬉しい(懐かしい)。東京の街がだんだん明けてくる雰囲気といい、これだけで映画が十分に成り立っているような気がする。
選曲がまた秀逸。
・朝日のあたる家(アニマルズ)
・Pale Blue Eyes(ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)
・ドック・オブ・ベイ(オーティス・レディング)
・レドンド・ビーチ(パティ・スミス)
・めざめぬ街(ローリング・ストーンズ)
・青い魚(金延幸子)
・パーフェクト・デイ(ルー・リード)
・サニー・アフタヌーン(キンクス)
・朝日のあたる家(浅川マキバージョン/ここだけ、石川さゆりが唄う)
・ブラウン・アイド・ガール(ヴァン・モリソン)
・フィーリング・グッド(ニーナ・シモン)
ヴェンダース監督の音楽趣味がよくわかるし、ほとんど知っている曲だから嬉しかった。それに、パーフェクト・デイとフィーリング・グッドは重要なテーマ曲。
しかし、最初「青い魚」は記憶のある声だけど、誰だかすぐにわからなかった。エンドロールで見て「金延幸子」とは!なんで知ってるの。欧米では有名なのかしら?多分、50年ぶりに聞きました。
主人公とともに、自分の時間が自由に漂っていくようで、気持ちよかったです。
ヴィム・ヴェンダース監督作品だったとは!
映画を見る時は、ほぼ何も情報を入れないようにして
(入っちまっても脳みそから追い出して忘れた状態で見るようにして)
そうやって見るものですから、見たあとクレジットで気づき
若い頃「パリ・テキサス」を見たことがあり、意味がわからず、何だこれは?と
名作と言われているのにわからなかった自分に自己嫌悪が襲ってきたりして
それで、ヴィム・ヴェンダース作品は自分にとって「鬼門」だったのだけど
知らず知らず見て、結果、自分も年を取ったせいか
猛烈に心に響いた。音楽も風景も、俳優さんが他の演技も何もかも素晴らしかった。
(特にラストシーンの選曲と演技には目頭が熱くなりました)
自分にも毎日の暮らしのルーティンがあり
二人で暮らしていた母が入院してから半年。一人暮らしをしていて
いよいよ先日母が亡くなってしまったので、一人暮らしが本格的になった今
この作品の主人公の平山ほどではないけれど、どこかしらアナログなところも重なり
毎日が同じようで同じではない、みんな一人ひとりに世界があり
それはとても愛しく、また、尊い毎日なのだと、改めて感じて心に沁みた。
決して派手さはない、というよりむしろ地味な映画ということになるのだろうけど
これこそが「PERFECT DAYS」だと思った。
ボクにはボクの、みんなにはみんなの「PERFECT DAYS」が繰り返される。
毎日を丁寧に生き暮らす。本当に素晴らしい作品でした。
今なら「パリ・テキサス」もわかるかもしれない。そんな風に感じた。
胸がギュッとなった作品
「私にとって幸せってなんだろう」って暇になったらすぐ考えてしまうけど、どう頑張ってもいつ考えても世間の尺度で自分の幸せを考えてしまう。それってつまり私も自分がかんじる幸せを他人に当てはめてしまってるってことなんだよな。明日からは小さな幸せを見つけて、それに心躍らせて生きていきたい、そう思える映画でした。あと、ラストのI'm feeling goodの曲が好きすぎてタイミングよすぎて胸がぎゅうううってなった。映画館でまた観たい
どの世界に住むかは各々の選択
刺さらなかった。 正直、あざといなあ、と感じた。 残念。 有名俳優...
良作なのだろうなあと思う
渋谷の公衆トイレの清掃員という前知識があったので、住んでる場所がスカイツリーあたりとは思ってなくて、うちの近辺だと思うとついつい ここってどこ?あの通りか? ん?これは?
って見てしまうのが難点。
初っ端の通りなんて映像止めて見たくなるくらいだった。
墨田区の文化か立花か 向島方面? 牛島神社? 七福神?
桜橋渡って 浅草に行ってる。
そして 首都高乗って渋谷に行く。
渋谷のインターは最近 入り口が変わったんだけど、、
というか 入り口出口の使い方が甚だ意味不明で 帰りに北上野から乗るの。
渋谷行ってて向島に帰るのに北上野?????まあいいや。
そもそもなんで 首都高で行くのか、うちの近所から渋谷行くのに高速では行かないなあとか思いつつも かつてうちの夫が公的機関で輸送業務してた時に出来るだけ高速を使わねばならない決まりだった(たぶん人身事故が圧倒的に少ないから?) とか思い出して そういう事だろうなあとか
ほんと 土地勘って 邪魔よ。
それにしても たぶん このなんだかよくわからない古ぼけたメゾネット仕様の風呂無しアパート、これもう ないと思う。
残ってて欲しいと思う人多いかもだけど、撮影後 あっという間に影も形もなく消えて 新築高層マンションになっちゃってると思う。
今 そういう時代です。
ついでに言うなら アパート前の駐車場。最大に安くても3万/月 だと思う。
この辺りが割と都心だって事に みんなが気づいたのよね。
東京駅までタクシーで10〜15分
羽田まで20〜30分
新宿まで電車で20〜30分
渋谷も大江戸線と半蔵門線のおかげでかなりスムーズ
スカイツリーと
隅田川
この界隈は もう私にとって地元なのだなあと実感する。
映画の内容に戻る。
浅草に 石川さゆりがあがた森魚の生ギターで歌うスナックがあるなら マジで毎日満杯だろうなあ。
三浦友和が、未だかつてないくらいハマり役。
このくらいの分量で出るのが望ましい。
音楽が 効果音としてでなく 役所広司がカセットで聞くときに流れる そして 車が止まれば 音楽も終わり。
「おじさん」
そう呼ぶ少女が出て来るが、それは 一般成人男性の総称としてのおじさんではなく 本当に 叔父なのである。
お母さんのお兄さん。
住む世界が違ってるとは 一体どういう事か
なぜ泣くのか
想像するしかない。
役所広司がインテリで 元は違う暮らしだった。
渡してるお土産(お礼?)が くるみっこ って事は横浜方面から来てる?あれって元は鎌倉殿ってお菓子なんだよね。
(すみませんけど 地価に関しては墨田区 横浜には負けてないんですが? まあ墨田区と言っても我が家のある両国地区とこの向島界隈は少々違うとしてもよ、我が家の長女家族はうちの近所でのマンション探しを諦めて横浜市(とは言え青葉区)に地価にして3分の1、同価格としては面積3倍の物件を購入したのだ。まあ どうでもいいですけど。)
まあいいや。
会うと涙が出る関係。
それはどういう経緯だったのだろうか。
姪に 大きくなった そう言ってるという事は 相当の年月 会ってないのだ。
何があったのか。会えてない理由は何か。
全然 教えてくれない。
Spotifyをどこかのお店と思うほど情報に疎く 削ぎ落とせるだけ削ぎ落として 自炊もせず コインランドリーで洗濯し 薄いせんべい布団を毎日畳む(万年床にしない)。
シーツ変えない エアコンない 冷蔵庫たぶんない。キッチンはもはや洗面所で一階の部屋はそれまでの過去を詰め込んだ物置。その過去は無かったことにして二階の二部屋で静謐に暮らす。(姪が来て物理的に過去に潜り込まねばならなくなるのは作為的なんだろうか)
目の前にある自販機のコーヒーが朝食代わり。
昼はコンビニのサンドイッチ。
そう言えば、古本屋も。
こんなに文学に長けた本屋の主人がいたら 私も通うわ。
私の知る限り 古本屋の主人で読書する人に会った事ない。
まして b◯◯kオフなんて クソofクソ。
そして 昭和丸出しの銭湯。
多分 この男 妖精
そりゃあ 住む世界 違うよ 現世とはね。
なんか文句ばっかり出て来て 自分で驚いてる。
10年前、だったらまあ こんな感じだったかも知れないとして
渋谷区の恐ろしいほどにデザインされた 美しい公衆トイレを掃除する仕事。
こういう人からも 税金と 高額な社会保障費を差し引き
過去最高の税収を海外にばら撒く。
あーーーまた愚痴を言ってしまった。
けれども 空気感は 良かったのだ。
役所広司でなければもたない間を全編通して見せつけられ、端端まで名優を使う贅沢さ。
いい映画 だったのよ 本当に。
Perfect
主人公は多くは語らない
彼の思いやストーリーは、鑑賞者の想像の中
彼は毎日几帳面に生活をし、決して裕福ではない
だが、自分が誰か、どんな習慣をもっているかを知る人が近所にいて、仕事であるトイレ掃除を丁寧に、丹念にやる
趣味のフィルム写真も定期的に現像してはフィルムを買ってその場で詰め次に繋がる
文庫本は読み終えたら古本屋で次の100円の文庫本を買って読み始める
彼の生活と同じく、絶え間ないルーチン
彼が毎晩見る夢は、その日の印象的な出来事がモノクロで流れていく
そして近所のおばあさんのルーチンである竹箒の掃き音で目覚める
影は重なったら濃くなるか?彼の中では濃くなるのだそうだ
その理由は、そうならなければつまらないから
ぐっとくる
数多くのキャラが出ては消えていくが、彼らの人生も深くは描かれない
でも、誰もがいろいろなストーリーを抱えているのだろう
そんな、いろいろな人の人生が主人公の人生に少しずつ重なり、影を濃くして、彼のパーフェクトな日が成り立っているのかもしれない。。。
チグハグとんちんかん映画
嘘みたいに綺麗な公衆便所
素手でゴミを拾う清掃員
かと思いきや掃除手袋のままペンを持ちマルバツゲーム始める
使い切り洗剤は高い
毎日コンビニランチ
毎日自販機コーヒー
都内3k駐車場付き
都内車持ち車通勤
毎日居酒屋
粗食の割に良い体付き
人とコミュニケーション取らないタイプかと思いきや人肌恋しくてママの酒場通い
綺麗好きで便所仕事着週1しか洗わない
自転車もう1台どこから
ありふれた下町ノスタルジック
現像した写真を躊躇いなく破る
臭すぎるセリフ
主人公の実家が金持ちってとこがミソ
素朴で質素な暮らし風だがかなり贅沢
理想詰め込みすぎてこれじゃあまるでファンタジー映画じゃないか
リアルもくそもない
役所広司の演技と映像の綺麗さでなんとか最期まで観れたけど、終始ツッコミまくり
金持ちぼっちゃまだからこその余裕
素朴もクソもない
きのう何食べた?の方がよっぽどリアルだわ
耳を澄ます
個人的に大好きな「パターソン」にとても雰囲気が似ていた。
平穏で静かな日常を送る平山の視点から見える世界は澄んでいて自然が煌めいている。
平山の毎日を充実させるのは、
・陽の光
・植物
・古本
・ハイボール
・サンドイッチ
・カメラ
・カセットテープ
・缶コーヒー
・人間観察
などなど
平穏な変わらない毎日だからこそ堪能できる。
心の幸せを得るのに、決して贅沢な生活はいらない。
しかし、姪との再会という"イベント"で、平山の表情は一気に明るくなる。平穏な生活で感じる幸せよりも、人との温もりで感じる幸せのほうが遥かに大きいことに気づく。
姪を迎えに来た妹とのやりとりから、人と距離を取るようになった彼の悲しい過去が垣間見えた。
厳格な父のもと育てられ、その期待に応えようと仕事人として忙しなく働いていたのか。。
一族経営の会社で妹とともに父のもと仕事をしていたのか。。
しかし、実利主義で忙しない環境に気を病み、厭世的な生活を送っているのか。。自宅の雑多な荷物の山からそんな背景が想像された。
明らかにはされないが、いろんな想像が頭を巡った。
姉と抱擁を交わした後の涙がとても切なかった。。
本当は大切な人と時間をともにしたいのだろう。でもそれをしたくてもできなかった過去があって、住む世界が違うと信じて、孤独感に蓋をしているのか。。
その後、突然辞めた同僚の尻拭いで朝から晩まで忙しなくトイレ掃除をする場面では、口調は荒くなり、仕事人時代の平山の姿が垣間見えた気がした。
最後の涙はなんだったのか。
美しい朝の景色に感動したのか?世界の美しさに涙が溢れたのか。
日々の幸せを噛み締めると同時に、抑え込んできた孤独感に苛まれ、単調に終わってしまうかもしれない自らの人生に悲しみの涙を流していたのか。
個人的には後者と感じた。
淡々と進み、説明もないのであれこれと想像を膨らますことができてとても良い。
表情だけで機微を表現する役所広司の演技が素晴らしかったです。
理想の世界
リアルじゃないけど、どこかリアルな映画。
観る前に、オチの無い、観てスッキッリするタイプの映画では無いことは感じていたので、がっかりすることも無く、伏線回収を期待すること無く、映像の良さや演技の上手さ、この監督の巧さに集中しながら飽きることなく観れました。面白かった。
前半、平山さんの毎日のルーティンを何度も観せられるんだけど、それがなんでかわからないけど、良くて。
あれ家の鍵閉めないのって、オートロック方式?地味に気になりました。
後半にいくにつれて、、おやっ?っていうシーンがいくつかあって。それが観終わった後に、「あれはなんだったろう……」ってなる。
例えば、姪っ子と自転車に乗ってるけど、2台も自転車あったの?とか、お互いに好意を持ってそうだった飲み屋の女将さんと男が抱き合っているのを目撃した後に平山さんが川でお酒飲んでるところにその男が現れ元夫で余命も短いから会いにきたんだと告げられるとか、、。ちょっとリアルなようで、リアルからズレている。希望的観測をこめた平山さんの妄想??とか思ったり。
本当は妹や姪っ子に会いたいけど会えないのがリアルなのかなと思ったり。
あと、毎晩見ているぼんやりした白黒の夢とか。窓のカーテンを全開で寝ているとろとか。随所随所に、「ただ淡々と毎日を自分なりに楽しんで生きている男」以外の要素が散りばめられていて、何かあって精神的に不安定になったような訳あり過去とか、そんな人生の影を抱えながら生きている様子を勝手に感じさせられる。
あとから考えると、平山さんの表情が全て語っているような気もして。
本当に役所広司さんの演技力が凄くて、本人ですよね、平山さんていますよねって、思うくらい。
観終わった後に、残ったのは、ほんのちょっとだけ恐いというか、狂気じゃないけど、もっとあったかいでもちょっと重い何か。あの日々のルーティンは平山さんの心の平穏を守るためなのかもしれない。
最近はこういう映画より明るくても暗くてもわかりやすい映画をよく観るし、こういう映画は好きじゃない時もあるけれど、この後に残った感じ、なんか分からないけど嫌いじゃないという。
論理的には考察できない感じ。やっぱり監督のヴィム・ヴェンダースさんと俳優さんの上手さが凄いなぁと思う映画でした。
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