PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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「よもぎ蒸しのように、静かに心を整えてくれる映画」
日々の喧騒や情報に追われる毎日。そんな中でこの映画は、まるで自分をゆっくり整える“よもぎ蒸し”のような存在でした。
ヴィム・ヴェンダース監督の『PERFECT DAYS』は、主人公・平山の日常を淡々と映し出します。でもその“淡々”が、どこか心地よい。無駄を削ぎ落とした生活に、逆に豊かさを感じるのはなぜでしょう。
静かな映像、最小限の会話、流れるような編集——。すべてが絶妙で、観終わった後には心がすーっと軽くなる。まるでよもぎの香りに包まれながら、ゆっくりと汗を流したあとのような、デトックス感がありました。
エンタメに疲れた大人たちにこそ観てほしい1本。
スマホを手放して、心を温める90分を、ぜひ。
良さがわからない
諸行無常もFeelingGood
物語は、平山のシンプルな生活を淡々と追いかけます。毎朝決まった時間...
物語は、平山のシンプルな生活を淡々と追いかけます。毎朝決まった時間に起き、トイレの清掃に励み、休憩時間には古本を読み、音楽を聴き、木々の写真を撮る。そんな繰り返しの中に、彼の小さな喜びが散りばめられています。ルーティンの一つ一つが丁寧に描かれ、まるで彼の心の平穏を映し出すよう。渋谷の喧騒の中で、公共トイレという地味な場所が舞台なのに、そこに美しさがあることに気づかされます。ベンダース監督は、渋谷の街並みや「THE TOKYO TOILET プロジェクト」のモダンなトイレを背景に、日常の尊さを浮かび上がらせます。
特に心に残ったのは、平山の生活を通じて見せる「小さな喜びの積み重ねが幸せ」というテーマです。古いカセットテープで音楽を聴き、木の葉の揺れを愛でる彼の姿に、人生の豊かさを感じました。
そして、クライマックスの運転中のシーン。平山が涙を流しながら車を走らせる場面は、胸を打ちます。それまで感情を抑えていた彼の内面が、初めて溢れ出す瞬間です。穏やかな日常と心の奥底の複雑な感情が交錯し、喜びと悲しみが共存する人間らしさが伝わってきます。このシーンで流れる「Feeling Good」の明るいメロディと歌詞が、平山の涙と対比され、彼の人生が「完璧」でありつつも完全ではないことを示唆します。家族との過去や孤独、そして日常の美しさと儚さが、涙を通じて一気に表現されていました。
この映画は、派手な展開や劇的な事件はなく、静かな時間が流れます。それでも、平山の小さな動作や表情、渋谷の街の風景、音楽の調べが心に深く響きます。日常の中に潜む美しさや、人生の喜びと切なさを改めて考えさせられました。50代の私にとって、平山の生き方はどこか共感できるものがありました。日々の繰り返しの中で、自分なりの幸せを見つけることの大切さを教えてくれる作品です。
観終わった後、ふと木々の揺れる音に耳を傾けてしまいました。『PERFECT DAYS』は、そんな風に日常を少し違った目で見つめ直させてくれる、素晴らしい映画でした。
ルーティーンを死守する事壊される事
外国人が撮ったと分かる感じ。品の良い公衆トイレとスカイツリーや浅草の古き良き日本を撮るところなんかまさに。ルーティーンにこだわる生活をしている主人公はテレビもスマホもない聴くのは音楽テープという俗世間と離れた生活を送っている。そこまで現代を排除したいのに周りからルーティーンを乱される。テレビ無くてラジオも聴いてない感じ…全メディアを拒否してるみたい。でもiPhoneを店と勘違いするくらいの現代人存在するのかなー?最後の泣き笑いシーンはみんな呆れるな笑でもせっかくルーティーン守って無駄な感情持たないようにしてるのにみんな何だよ泣…って感じにルーティーン死守派の自分には見えた。
タイトルに込められた深い意味
第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されたことで有名になりましたが、いままで見ていませんでした。
いやぁ、カンヌに出るだけの事はありますね。っていうか、間違いなくアカデミーでは無く、カンヌの作品だなと思いました。
タイトルの『PERFECT DAYS』ですが、どこをもってして“完璧な日”と考えればいいんでしょうかね?何事も無く平凡に過ぎていく日常が良いのか、あるいは、波瀾万丈な色々巻き起こる日が良いのか。なんか、この作品では、どちらも“完璧な日”と言っているような気がしました。
気になったのは、主人公の平山に関する説明が全く無い事。そう言う意味では、出演しているそれぞれの人物についての説明がほぼないんですけどね。まぁ、普通の日常ってそう言うものですかね。とはいえ、終盤、平山に関してはちょっとだけ何やら彼の事が仄めかされます。あくまでも仄めかしですが、それはそれで、なぜ彼がトイレ掃除をやっているのかという謎も付いてきます。
いやぁ、しかし、この平山は役所広司以外では成立しなかったんでしょうね。渡辺謙とか、真田広之とか、他にもできそうな俳優が思い浮かばないわけでは無いですが、それでも、その二人はちょっと圧が強すぎますからね。役所広司ほどの力を抜いた感じが出せないかもしれません。
なかなか面白かったです。
ラストカットの解釈を
おじさん定点観測
生きる
大きな出来事が起こるわけではない。
けれど、同じ日は一日として存在しない
そんな「日常のかけがえなさ」を静かに描き出した映画だった。
起承転結の結の部分がどうなるんだろうと考えながら観ていたぶん、物語としての“満足感”を得られなかった。
この映画の本質から外れた見方だったのだと思う。
予兆のようなものは確かにあった。でも何かが劇的に動くわけではない。
そうやって、静かに流れていく毎日のなかに、じわじわと沁みてくる何かがある。
歳を重ねたときに、また見返したくなる気がする。
そのとき、今とは違う感じ方をするのかもしれない。
いま見えなかったものが、未来の自分にはちゃんと見えるようになっているかもしれない。
そんなふうに、時間とともにじっくり効いてくる一本だった。
人間という生き物そのもの
木洩れ日が差し込む
誰にどう思われるか、ではなく自分がどう思うか
ままならない現実も受け入れて、なるべく笑顔で生きていきたいと思った
そろそろ本当に自分の人生を生きたい
平山さんは家族と何があったのか、あの涙は何なのか知りたいけど、それは平山さんが抱えている大事な事
私は知らなくて良いんだ
日常を大切に、、
おじさんの日常。
•おじさんの日常をずっと流してるだけなのになんでこんなに見入ったんだろう、、
•テーマは変化。自分は同じことの繰り返しの日常に不安を感じたりしていたけど、ちょっとした変化に気づけていないだけなんだとわかった。
•ちょっとした変化に幸せを感じることの大切さと難しさに気づけたいい映画だった、、
日本人が日本人であることとは?
perfect days
2023年 日独合作
ヴィム・ヴェンダース監督
淡々とした日常、ストーリーがないようであるような超薄味
それでも、観終わった満足感はずっしりとありました
日本人が日本人であることとは?
それがテーマのように思えました
判で押したような日々の繰り返し、誰も見ていなくとも仕事の責任を満足できるまで果たす平山
登場する若い世代の男女も日本人だけども、これから日本人になろうとしています
平山だって日本人だけども、いつの頃からか、日本人になったのでしょう
日本に生まれたから、はじめから日本人になれる訳じゃない
両親が日本人だからそれだけで日本人になれるわけじゃない
日本人という存在になろうとして、初めて日本人なれるのだということを本作は言いたいのだと思いました
公衆トイレのクリーンさ
大都市なのに静かさがある
公衆トイレのクリーンさを守るために真面目に仕事をする人がいる
本作には、クラクションも盛んに聞こえず大声で話す人々もいません
日本人には当たり前過ぎて気付きもしません
本作はただ普通無意識にそれを撮ったようにみえます
でもインバウンド観光客が語る日本の印象に、クリーンさ、静かさを語ることがとても多いようです
監督の目にも奇異に見えています
だからそれを撮っています
それはどうしてそうなのか?
それが本作なのだと思います
平山は衣食住すべてにミニマムな生活です
なのに彼は満ち足りています
なぜ独り暮らしなのか?
訳ありのようです
なぜ高い教育のある人間と思われるのに、今の生活に甘んじているのかは語れません
もっとより良い生活への意欲を失っている?
人生に諦めている?
外国人にはそう見える人が多いでしょう
でも日本人にはそうではないと普通に思えます
自分を律して自分の責任を果たすそれだけの毎日で必要十分
でもそれなら何故平山は泣くのでしょうか?
今の生活が屈辱だから?
そうではないことは彼の生活から分かります
平山の語られない訳ありの理由が彼の涙の理由なのだろうと思えました
低賃金なのだから、それに見合う適当な仕事で十分
しかし日本人はそうは考えません
だからと言って日本人が全員平山のような人間ではないのも当然です
それでも平山のような人間が数多く集まっているから、東京はこのように成り立っているのだと、そのことを説明しようとしているように思えました
今度は今度
今は今
(過去は過去)
(欲を求めればきりがない)
平山の過去は語られません
居酒屋のママの元夫のお話はそのヒントだったのかも知れません
影と影が重なって濃くならない訳が無い
少なくとも平山は自分を影と思っているようです
それでも与えられた責任は確実に果たす
アヤは平山から少し学んだようです
家出して来たニコは平山から日本人になるとはどういうことかを懸命に学ぼうとしています
タダシは知的障害のある少年に優しくできる良い面を持っていますが、日本人にはまだまだ、なっていないようです
もう少し時間がかかるようです
ラストの朝日に向けてバンを走らせる平山の笑顔
今日も自分の役割を果たすぞという満ち足りた泣き笑いの顔です
社会に関係して貢献する喜びです
自分は、決して影じゃない
より良い社会は自分を律する生活から始まる
それが結論のラストシーンであったと思いました
外国人監督が撮った「邦画」
渋谷の公衆トイレの刷新プロジェクト「THE TOKYO TOILET」をモチーフにした映画。このプロジェクトについては何度か報道も目にしており、いかにも「日本らしい」取り組みだと感じていた。映画はその「日本らしさ」、とりわけ「TOKYO」らしさが上手く詰め込まれている。近代的で華やかで賑やかな大都会の隙間にある庶民的な下町・銭湯・古アパート。ハイテクな公衆トイレの側にある穏やかな日常、そういった一見相反する性質のものが器用にミックスされている様子がよく表れている。この映画に限らず、多くの映画や写真などでも表されるものでもあるが、だからこそやはりそれが「TOKYO」なのだろう。
ストーリーは小さな起伏がありながらも淡々とした主人公の日常を淡々と描いている。
その雰囲気はもはや「邦画」であり、監督の感性が日本に合っているというのが窺える。
ストーリーの起伏が小さいながらも画面に見入ってしまうのはやはり主人公を演じる役所広司の力量が大きい。ちょっとしたしぐさ・表情がその人物の感情の些細な起伏を表す。トイレ清掃の様子・部屋の佇まい等々、彼の性格を表現する設定は随所にありよく練られているが、それ以上に役所広司の存在が役を雄弁に語るのである。
物語としては小さな起伏の詳細が「雰囲気」で伝えている感もあり、それに関しての感動はないが、見終わったあと「一人の人間を見た」実感が残る。
(ただ、そういう「役所広司ショー」と言う意味では「すばらしき世界」の方がより優れていると思う)
他の役者さんについても地に足の着いた実力のある役者が揃っている。
(石川さゆりと田中泯は本来の才能が生かされた役)
特筆したいのはアオイヤマダ。この人は本業はパフォーマーとのことだが物凄く存在感がある。また、役柄としても「ド派手でガールズバーで働く女の子が案外良い子」というのもなんだか「TOKYO」らしくて良いと思う。
ベンダースだけにトイレ?
ただ単にトイレ掃除を見せられる映画。
先ずは
1.酒のんで自転車は乗るな!
2.トイレ掃除してるのに、手袋してない。
3.そもそも、手袋が工作用の手袋じゃん。
4.作業着なんで一着しかないの。3日に一回の洗濯って汚い。
5.トイレ掃除してるのに、昼休み手づかみでサンドウィッチなんか食べるな!汚い。
6.食事中にこの映画は見ない方が良い。
そもそも、ヨーロッパには公衆トイレがないので、彼等には珍しいんだろう。
それでいて、ラーメンをすする音を嫌う。郷に行っては郷に従えなんだけど、不条理と思う。
タルコフスキーや小津安二郎の継承を狙っているんだろうが、アラが出てしまった。台詞のない顔だけの演技なら、トイレであらぬ事をやっちまった芸人でも使えば人件費削減できたのにね。
7.メゾネットタイプで風呂なしのアパートなんてあっても浅草あたりじゃ高いだろ
ロード・ムービーと言うより、ここにもジャパニーズショートコントの毒が!
「温故知新」ならぬ「ウ○コ知新」だね。
すごい映画を観たな。。。
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「すごい映画を観たな。。。」PERFECT DAYS msnb76さんの映画レビュー(感想・評価)
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msnb76
4.0泣ける 知的 癒される
2025年4月9日鑑賞 CS/BS/ケーブルで鑑賞
2025年5月7日投稿
編集
すごい映画を観たな。。。
ネタバレ注意
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以前『東京ポッド許可局』でマキタスポーツ・プチ鹿島・サンキュータツオのお三方が熱っぽくこの映画について語っているのを聴いていたので知ってはいましたが、今回 日本映画専門チャンネルで初めて視聴しました。
視てた時は「思ってた通りの “おっさんの日常的映画” だなぁ」という淡々とした進行でしたが、まず始めに (トイレ清掃員で主人公の) 平山がトイレ内で迷子の男の子を発見し、トイレから手を繋いで一緒に出て、親を探そうとしたら母親が駆けつけてきて、平山に礼もないどころか (トイレ清掃員だからか) 除菌ウェットティッシュで男の子の手を拭いた時、私は思わずテレビに向かって「ふざけるなよ!!」と怒りで叫んでしまった。だが平山は、そんな母親をよそに微笑んで手を振る男の子に微笑み返す。
ここで最初に平山に感情を持っていかれた、感情移入が始まった事を後で自覚した。
上手い!👏👏
・・・後はまぁ、 だらしない若手清掃員のタカシ (柄本時生) に振り回される平山にも可愛らしさや「おかしみ」があって感情をひたすら持っていかれる。
基本的には今の日本の『格差社会』を浮き彫りにする映画 (特に妹のケイコ (麻生祐未) が運転手つき高級車でやってきて、平山の軽1BOXとオーバーラッピングするシーンが象徴的) なのだけど、浅草地下街の中華料理屋の大将 (甲本雅裕) や、スナックのママ (石川さゆり) や姪のニコ (中野有紗、 彼女が味があって凄く良い) に慕われていたりして『救い』がある所が良い。
その妹のケイコが平山を慕って家出してきた姪のニコを迎えに来る、『格差』が浮き彫りになる終盤のシーンが、あらゆる意味での『クライマックス』だと思うが、ケイコが「お父さん、もうよく分かってないの。昔とは違うから。施設に行ってあげて」と言い残し、高級車で去って行った後、平山は嗚咽する。六十男が嗚咽するなんて余りないこと。「きっと過去になにか大きな禍根があるに違いない」と、平山の過去に思いを馳せさせるが、決して詳細は明かさない。
……この辺は、神経質かつ気ぃ遣いが多い日本人 (の脚本や監督) なら、詳細を明かしてしまうのでは、とも思った。
そんなこんなで完全にこちらが『平山のファン』と化した最後に、軽1BOXで仕事場のトイレに向かって運転する平山のアップの2分間。絶妙に表情が変わっていく、「泣き笑い」とも言える表情の変化だけで心の機微を表す、役所広司の技量にすべて委ねられたようなラストシーン。
……思い返しただけで涙が溢れてきてしまう。
残念ながら “大俳優” 役所広司の素晴らしさに触れる機会が今までなかった私が「ようやく」その凄さに触れられた喜びまでをも同時に感じる。
私が貧乏人だからここまで感情移入できたのか。功成り名遂げた金持ちは、感情移入できないのか。できたとしても、貧乏人ほどの割合ではないのか。いや「貧すれば鈍する」と言うので、その割合は案外変わらないのか。
見終えた後も、いろいろと気にさせる映画でもある。
最後に、マイナス1は、友山 (三浦友和) が、なんで平山の居所を掴めたのか、「後を付いてきたの? でも平山は自転車だったよな?」とモヤモヤする分… かな。
淡々と淡々と
悪友の2023ベスト映画で「本当に何も起こらないけどそれがいい。ラストの役所広司の顔のアップがいい」とのこと。
何も起こらないと聞かされているがゆえに1年以上食指が動かずようやく鑑賞。
良く言えば現代の雨ニモマケズ。
悪く言えばヤマなし意味なしオチなし。
あまりにも話をしないから口が聞けないのかと思ってしまったぐらい喋らない役所広司。
トイレのパターンと浅草あたりの飲み屋の紹介のようでもあり、TOKYO下町ガイドのよう。
話になんの進展もないから感想としては以上。
もっと尺が短くても成立すると思う。
この中の役所広司のように質素で無欲な生活を美徳とすると、この30年成長しないニッポンを肯定しているようで氷河期世代としてはなんか嫌。
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