PERFECT DAYSのレビュー・感想・評価
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ノマドランドのような感覚
観終わって…この何とも言えない感覚は何だろうと考えていましたが「ノマドランド」を観た時に感じた感覚に似ているような感じがします。
日常が繰り返されて、でも少しずつ変わっていくような…
エンターテイメントとは対極に位置するような作品ですが、私は主人公の行動に共感しまくりました。
映画版「時代おくれ」
皆さんは河島英五の「時代おくれ」と言う唄をご存知だろうか?
主人公平山には妻子こそいないもののまさにこの唄の通りの男だと思った
いろいろ訳ありらしいが余計な事は口にせず日々の暮らしを大事にしてる
三浦友和と遊ぶシーン最高だった
おじさんだろうがなんだろうがもっと子供みたいに遊べばいいんだなと思った
ラストシーンの泣き笑いでオレも大号泣してしまったよ
まわりにさとられないように鼻をすするのはなんとかガマンしたが…
最後の曲オレは知らなかったんだけど知ってたらもっと良かったんだろうな
日本人の監督なら何を持ってきたんだろうか?
オレなら「時代おくれ」にするけどね
とにかく50〜60歳のおじさんなら見て損はないよ!
素晴らしかった。
何もない日々、いつもと同じ日々の中の
喜怒哀楽、嫉妬、不安や恐怖、
きっと満ち足りてない完璧じゃない日々の
結集がパーフェクトデイズになるんだと
人生の一本級に感動しました。
役所広司1人を撮ってる時はとても日本人的で
なんでこんなに日本人を日本人らしく撮れるんだ?
と思ってたら、
他のキャラクター、柄本時生の狙ってる女の子や
姪っ子、三浦友和と絡むと急にファンタジーっぽく
なるところもヴィムベンダースらしいなと思いました。
私も毎日仕事場と家の往復の毎日だけど、
それをつまらない人生だなと思うのではなくて、
一つ一つを丁寧にやって行く事で人生に深みが増して
愛せて行けるのかなと思いました。
(そんな説教臭い映画ではないけど)
すぐ影響を受ける僕は
近くに公園があって、銭湯があって、飲み屋もある。
すでに良い人生を送れてるじゃない!
と思ったのと、アパート借りようかなと思いました。
とにかく素晴らしかった。
ヴィムベンダースにオファーした人に心からの拍手を
送りたいです。
わりとこんな風に生きてます。
12月は忙しくてほとんど休めず、日銭稼ぎに都内や横浜市内を行ったり来たり。仕事の準備なんかもあって映画もあんまり観てません。そしてずーっと気になってたこの映画を、漸くできた休日、今日大晦日に漸く観てきました。
ヒラヤマさんが流す音楽がストライクです。朝日のあたる家、ドックオブベイ、そしてパティ・スミスのカセットテープから流れる音楽(題名わからん)、懐かしい。ヴァン・モリソンの茶色の目をした女の子、ルー・リードの名曲パーフェクト・デイ、最後はニーナ・シモン姐さんのjazz numberフィーリンググッド(気持ちいい!サイコー)。そして東京の美しい映像。僕もこの風景の中で生きてます。パーフェクトでした。一年の締め括りに佳い気分になれました。
日銭稼ぎながら、軽く一杯やって、音楽聴いて、古本読んで…。これって僕のこと?そう思って観たおじ(い)さん沢山いますか?
※アヤ、姪っ子のニコ、ホームレスのじいさん、スナックのママの元夫、いかにもヴィム・ベンダースの映画っぽい登場人物でしたね。
何で解るの〜?!かんとく〜?!
60代女、ダブルワークで清掃業をしています。
50代でこの業界に入ってから約10年、毎朝4時起き。トイレ清掃も必須。家を出る時は平山さんと同じく空を見上げます。星が綺麗。今日も行ってくるかと決意しながら。職場に着いたら作業着に着替え缶コーヒー、これも同じ。
もれなく汚い仕事だと人は言うでしょうが、私は「人の心ほど汚いものはない」と思っているから。
休みの人がいるので今日はトイレ5フロア。4時間で男女5フロアはキツイ。平山さんの様に連日だったら死ぬ。本社に泣きつけば人を何とかしてくれる。助かった!!ここもしっかりと描かれていた。
14階からの夜景と富士山が綺麗。平山さんは木漏れ日と風、等感じられるから公園トイレ清掃を選んでるんだよね。
便器、洗面台をガッツリ清掃するとピカピカになるし、達成感ハンパない。心の垢とホコリを拭って、釈迦仏の一弟子、周利槃特の境涯になれる。
平山さんが眠りにつくときユラユラと影絵の様に今日あった出来事を夢見てる。私もよくある。眠りが浅いんだよね。朝起きれないかもという不安からかぐっすり眠れない。使う人がいる限り、トイレ清掃は連日続く。ラストの平山さんの悲喜交交の表情。
毎日ハンドルを握り、清掃道具を積んで現場に向かう。清掃は道具が命。
トイレ清掃の毎日が全て中心。何があっても。
こんなに素敵な映画をつくって下さってヴィムベンダース監督、スタッフキャストの皆様、有り難うございました~又リピートします。
細かい描写、美しい映像、素晴らしい演技をもっと見つけたいです〜✨
ラストシーンの凄味
流石は話題作。
年末に眠気がある状態で観たので途中寝落ちはしましたが、この作品の凄味はラストシーン。
ニーナ・シモンの『フィーリング・グッド』をバックに車を運転する役所広司の表情が全て。
生きるということはこういう顔つきなんだと。圧倒されます。
映画というより芸術を観たという心持ちになるでしょう。
一見にしかず、です。
他、東京の情景とか役所広司の所作とか色々見所はありますが、全体を通じて受けた印象としては、清貧であってもスナックのママへの恋とか姪っ子への愛とか人間の業とも言うべき感情は隠せないし、それこそが人間、生きている証なんだということだと思います。
サニーアフタヌーン
久々のヴィム・ヴェンダース監督作品。渋谷のトイレプロジェクトを映像化する企画から、一本の長編劇映画に発展したとのこと。
60年代・70年代のロックナンバーを使用するのは、ヴェンダースならではの持ち味だが、今作での選曲も絶妙。特に、主人公自身の選曲という形で、早朝出勤途中の「朝日の当たる家」、休日午後の「サニーアフタヌーン」(お馴染みキンクス!)、ラストの朝焼けでのニーナ・シモンと、まさしくシーンにぴったり合わせているのが面白い。
単調に繰り返される日々の行いを丹念に描いているが、ちょっとした出来事や人との触れ合いで、全く同じ日というものはない。
ヴェンダース作品では、小津安二郎からの影響をよく言われるが、今作では特に、「死の影」の存在について共通するものが感じられた。さらに言えば、小津安作品では酒場シーンも見どころだが、今作での石川さゆりの歌唱シーンは、日本の観客へのサービスとも言えるだろう。
ラストの役所広司の表情は絶品。カンヌでの評価を決定付けたのもこれだろう。
東京の原風景を優しさで映す
日本人が撮るより、日本的な映像。美しい。
見た後に自分の身近の風景が美しく見え始めた。
登場者が皆優しさを持っている。
この監督は、人間の優しさを描くのが上手い。
私も平山さんの様に生きたいと思ったことがあったが、無理だった。基本的に欲の塊で、俗に流されてしまう。煩悩が多いのだ。
自分の人生が豊かになった気がします。
正にわびさびの世界
中年男・平山の日常を淡々と綴る物語は平板で面白みに欠けるが、ここまで徹底されると、まるで環境ビデオでも観ているような心地よさを覚える。正に”わびさび”のような映画である。
何と言っても、ラストの平山の表情が印象に残った。
彼のバックストーリーは時折挿入される夢や、後半から登場する彼の縁故者との関係から色々と想像できる。しかし、その詳細については謎が多く、そのせいで感情移入しがたいキャラクターとなっている。ただ、何らかの事情を抱えた男であることは間違いなく、このラストを見ると決して今の人生に満足しているわけではないということも分かってくる。それに気付いた瞬間、自分は何だか泣けてきてしまった。
平山は日々に芽吹く小さな奇跡に時折柔和な笑みをこぼすが、それもどこかで無理をしていたのではないか。本当は悲しいはずなのに、それを忘れようとして無理に笑っていたのではないか。そう思えてならなかった。
これは孤独な人間の物語だと思う。平山は他者との繋がりを極力持たず、自分が決めたルーティンの中に閉じこもって生きている。まるで外の世界に踏み出すことを恐れているかのようである。
そして、翻ってみると自分も似たような日常の繰り返しの中で生きていることに気付かされる。だからこそ、最後の彼の表情に共鳴してしまったのかもしれない。
「PERFECT DAYS」というタイトルも実に皮肉的である。”完璧な日々”とはこれ如何に。平山の孤独な生き方を見て憧れる人は余りいないのではないだろうか。
確かに人生は映画のように劇的なことは起こらない。そういう意味ではこの映画はリアルと言えるが、これを”完璧な日々”と認めてしまうと何だか自分自身がわびしく思えてしまい複雑な気持ちになってしまう。
ちなみに、劇中で流れるルー・リードの楽曲「PERFECT DAY」はドラッグ中毒について歌った曲というのが通説であるが、これも実に皮肉的な内容の歌詞である。本作の平山の日常にこれが被さると少し残酷なものに見えてくる。
監督、共同脚本はヴィム・ヴェンダース。
ヴェンダースと言えば、小津安二郎を敬愛してやまないことで有名だが、所々に小津オマージュのようなカットが見られるのが興味深かった。例えば、平山の部屋を捉えたローポジションのカットなどは正に小津的である。
また、平山を演じた役所広司の温もりに満ちた眼差しには、小津作品の常連・笠智衆が連想させられた。飄々とした表情にユーモアを滲ませながら、人間味あふれる人物像を見事に創り上げている。繊細で懐の深い演技が堪能できるという意味では、本作は正に役所広司を代表する1本になっていると思う。
撮影も見事だと思った。平山が住むアパートは東京の下町にあり、すぐ傍には東京の新たなシンボル、スカイツリーが立っている。雑多な下町と近代的な高層ビル群の対比が画面に良いアクセントをつけている。
また、渋谷のユニークな公衆トイレはガジェットとしての面白みに溢れており、浅草地下のディープな飲み屋街や場末のスナック、古本屋、コインランドリー、銭湯等、昭和の匂いを感じさせる風景も面白い。前川つかさの漫画「大東京ビンボー生活マニュアル」のような趣が感じられた。
かつて「東京画」でパチンコ文化をフィーチャーしたヴェンダースだけあって、今回も通り一辺倒な有名観光地ではなく、敢えてマニアックなスポットを選定したセンスが素晴らしい。
作為的
トイレ清掃員として働き、裕福でもなく特段の変化があるわけでもないが豊かで満ち足りた、男の日常の「幸せ」が淡々と描かれている、そして同じように見えても、毎日何かしら起きて、一日たりとも同じ日はないことが分かった、などの評価、というか感想を想定して作られたような映画と思いました。平山のような生活は、理想の生き方のひとつでしょう。
映画そのものに関して、辛辣になってしまって申し訳ないですが、いろいろ、あり得ない。
強引にきれいごとを並べただけ、な気がする。
リアリティーが感じられなく、いちいち作為的で、なんか鼻につく。
主人公が住んでいるアパートがこれでもかとボロい(取り壊し待ちのレベル)、相棒に金を貸したらガス欠になり大事なカセットを売りに行くとか(どう考えても位置的にムリがある)、姪を迎えに来た妹が、運転手付きの高級車を使っていたり(今どきこんな人いる?)、いい加減なやつと思った相棒が障害者に優しい、(実はいいところもある、の描写に障害者を出してくるんだ?)とか、なんかもう、作為的です。
役所広司の年代なら、年金をもらいながら清掃業すれば、風呂なし洗濯機置き場なしだが都内に立地するボロアパートの家賃を支払い、自家用車を持ち、駐車場を借りて、銭湯へ行き、コインランドリーで洗濯、毎日コンビニでお昼を買い、その上行きつけの居酒屋で毎日のように一杯やって、時々美人のママのいる飲み屋にも行くような生活ができるかもしれない、とそこだけは妙に納得しました。
何度も挿入される木漏れ日の映像、ただ木漏れ日を撮るのが好きなだけ?
主人公が眠りについたときに現れる心象風景のような映像も、特に意味もなく肩透かしでした。
トイレ掃除するのに素手で始めるのにびっくりした。手袋しないのか? 特に、コロナ禍を経た今、素手というのはありえないと思う。汚れた作業着を洗わずに吊っておくだけっていうのも、衛生観念上大きく違和感があり、こういう人がいたら本人的には完璧に幸せかもしれないが、あまり近づきたくない。
毎日の描写が延々続くが、いつになったら終わるんだろうかと思ってしまった。
そもそも、日常の小さな幸せに満足して満ち足りて生きている人を描写するのになんで「トイレ清掃員」なんだろう。底辺に見られがちだが実は満ち足りて幸せです、というテンプレみたいだけど、トイレ清掃員の何を知ってるんだろう。上から目線で失礼な感じがする。
そこそこのお年を召した外国人映画監督が思い込んだ美しい日本と日本人な感じで、私には違和感が多々ありました。
(追記)
星をつけたときになにかのはずみで1.5になっていました。
大変失礼しました。
多くの人にとって、PERFECTな日々を送るには生活の心配がないことだと思うので、意外と浪費家な平山の生活を支える収入の点で説得力のある描写があれば、それと掃除するトイレがあんなにおしゃれで綺麗じゃなくてありがちな汚さ臭さの描写があったら、もっと星多くつけられるのにと思いました。(トイレプロジェクトの一環なのでそれはムリでしょうが)
うーん、いまひとつスッキリしない。
ヴィム・ベンダースが描く外国のシーンはなんかオシャレで好きです。
が、日本人なので今回の作品はいまひとつスッキリしませんでした。
作品の合間に定期的に流れる夢なのか木漏れ日なのかよく分からない映像。
神社から持ち帰った苗に毎朝水をかけてるけど、苗がそんなに成長してないリアリティの無さ。
缶コーヒーのプルタブを開けるのが早すぎるとこ。
三浦友和が河川敷に突然現れて「私は癌です」と告白した後、平山と影踏み遊びをする不自然さ。
ニコを迎えに来た妹を平山が唐突に抱きしめるシーンはそこはあえて抱きしめない方がよりリアリティがあったのではなかろうか?
と、つらつら細かいことを挙げて批判してきましたが、全体としては良作だと思います。
飲み屋の大将の仕草や古本屋の女性店主のコメントは思わずほっこりさせられました。
音楽と東京の風景も良かったです。
あと、最後に一言だけ。
トイレ掃除する時、マスク着用は必須ではなかろうか?
え?「お前はいろいろうるさい」って😆
木漏れ日のような光と影の素晴らしさ
トイレ清掃員の日常を描いたヒューマンドラマ。どこにでもいるような平凡な男の日常の姿だけで引き込まれるのは主演の役所広司に魅力に尽きるのではないでしょうか。木漏れ日のような光と影にの素晴らしさを表現している良作です。
2023-210
光と影にこだわったカメラワークと何気ない日常を映画として描く監督の力量
トイレ清掃員の日常という、一見地味なテーマも、監督の力量でこんな素晴らしい作品になるんだなーというのが率直な感想。
まず、光や影、日常の何気ない風景の中のきらめきというか、美しい瞬間を、役者の演技とともに切り取るカメラワークが素晴らしい。
何気ないけど、相当考えて撮ってるんだろうなと思わせられる。ヴィム・ヴェンダースが東京を撮ると、こうなるんだ、という目線で見るのも面白かった(余談ですが、首都高の走行シーンって、海外の監督は好きですよね‥)
ただカメラワークだけじゃなく、ストーリーも良かった。
近所のおばちゃんの竹ぼうきの音で毎朝目を覚まし、トイレ清掃の仕事をしながら、趣味の読書や写真、そして音楽、銭湯、行きつけの飲み屋に通う日々。
孤独だけど、ちゃんと生きる楽しみを持っている主人公と、それに関わる人達。トイレ清掃の仕事の後輩、姪っ子
、そして妹との関わり。
なぜ今のトイレ清掃の仕事に行き着いたのか、その根本に、父との確執があった事を匂わせるシーンがあって、涙が‥
ほとんどセリフの無い役所さんの演技が素晴らしい。
誰が相手か最後までわからないけど、トイレの鏡の隙間に挟まれた紙の上で日々、○×の陣取りゲーム?が繰り広げられていくという、サイドストーリー的な要素も良かったし、
それと飲み屋のママ役が石川さゆりと、豪華!ママの生歌が聞けるなら、そりゃ通っちゃうよね〜。
見ていて暖かい気持ちになれる良い映画でした。
「完璧な1日」の再発見
役所広司さんがカンヌで主演男優賞に輝いたことで、年の瀬から新年にかけて国内で最も注目を集めている作品と言えるのでは。
役所さんの本作での芝居に関しては、他にもたくさんその凄さを見せる作品があるので、日本の映画ファンにとっては「?」と感じるところもあるかもしれません。ただ、ラストで見せる悲喜交々の表情を同時に見せる芝居には唸らせられます。このシーンが海外でも評判になっていたようです。
主人公の平山は渋谷の公衆トイレの掃除が仕事。仕事のある日は決まった時間に起き、決まったルーティンで仕事に出かけ、仕事後の銭湯から夕食、寝る前の読書まで、ほぼ決まった毎日を送り、休日も掃除や洗濯、買い物など毎週ほとんど変わらない生活を送っている。そんな男の日常の中に、”PERFECT DAYS (=完璧な日々)の要素がいくつも描き出されていきます。
まるで「こんな幸せもあるよね」と語られているようで、ストレス社会に生きる人や、生活に刺激が無いと感じている人たちに救いを与えてくれているようです。
恥ずかしながらヴィム・ヴェンダース監督の作品は『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』しか観たことがなく、監督がそうした「救い」を描くことを意図していたのかもわかりませんが、「何もないような日常こそが完璧な一日なのでは」というメッセージを感じずにはいられませんでした。
あと魅力的だったのは主人公が毎朝の出勤中にカセットテープで聴く音楽。60-70年代の洋楽が中心で、本当にうまい選曲。特にアニマルズやパティ・スミス、ルー・リードがフィーチャーされ、個人的には大好物です。ヴィム・ヴェンダース監督によると、主人公の平山が聴く可能性のなさそうな曲は排除すべく、かなり入念に曲選びをしたとのことですが、やはりマニアックな曲もあり「いや、多分聴いていないでしょ」と突っ込めそうなところもありましたが、いずれにしてもサントラは買いです。
海外でも話題になっている作品ということで、本作でロケ地となった渋谷区内の公衆トイレはロケ地巡りの聖地にもなるかもしれませんね。ただ、登場するのは"The Tokyo Toilet"のプロジェクトで設置されたおしゃれな公衆トイレばかりなので、海外の方には日本の公衆トイレが全てこんなにキレイなトイレであると勘違いもされそう(海外に比べれば比較的どこもキレイではありますが)。本当はもっと一般的なトイレが出てきた方が作品をリアルに感じられたのかもしれません(本作は元々同プロジェクトがきっかけで生まれた作品なので、仕方ないところもあったのかなとは思います)。
他にもなぜ、現代ではを描いた本作を4:3で撮ったのかなど細かい疑問もありますが、とにかく印象に残る、観て良かった作品でした。
生きること自体アナログだ
仕事納めの日にTOHOで
終業と同時に年末最後の挨拶もそこそこに
18:05開始の回に滑り込み
鑑賞ポイントが6個たまってロハが嬉しい
ヴィムベンダース監督の作品は
大昔に観た夢の涯てまでも以来
人が寝ている時に視る夢を映像にするといった話
東京国際映画祭に絡んでいて
当時ノリノリだった監督で期待されたものの
酷評されて興行的にも大コケしたような記憶
で本作は結論としては今年観た中では上位に入る良作
アナログ男の真骨頂
序盤に繰り返される男の日常
(平日)
・外の道路を掃くほうきの音で目を覚ます
・歯を磨く
・髭を剃り整える
・霧吹きで盆栽に水をやる
・仕事着に着替える
・玄関でカギと小銭を持って外に出る
・空を見上げる
・自販機で缶コーヒーを買う
・車に乗り込む前に蓋を開けて乗ったらグビリ
・車でカセットを聞く
・仕事のトイレ掃除を真面目にやる
・昼休みに神社のベンチでサンドイッチと牛乳
・木漏れ日をオリンパスのフイルムカメラで撮る
・ときどき新芽を盆栽用に持ち帰る
・銭湯に行く
・駅地下の一杯飲み屋で酎ハイとつまみ
・床に着いて文庫本を読みふけって眠る
(休日)
・作業着をコインランドリーで洗う
・古本屋で1冊100円の文庫本を買う
・DPE店で写真を受け取りフイルムを出し
代わりのフイルムを1本買いカメラに装填する
・出来上がった写真を観て気に入ったものだけ缶に入れて
残りは破り捨てる
・小料理屋で女将と話しながら一杯飲る
こういうのが幸せだよなぁとしみじみ共感
そういうルーティンが乱れる
・同僚に金を貸す
・姪が家出してきて自分のアパートに泊まる
・同僚が突然辞める
・同僚の後任が来る
・麻生祐未とか三浦友和
それによって生じる心の揺らぎも拒否しない
全編に流れるアナログ愛
スクリーン画面の縦横比が3:4のブラウン管仕様だし
カセットテープとかフイルムカメラとか
いまの世の中でアナログでいることは実は結構贅沢で金もかかる
DPE店で2~3千円くらい出していた
主人公が就いた仕事がトイレ清掃であることもアナログだ
デジタルだなんだといってもものを食べて排泄する行為はなくならない
生きること自体アナログだ
普通はトイレ清掃人に浴びせられる心無い言動や蔑視を殊更クローズアップして
怒りや憐みを喚起する表現をしそうなものだがそうならない
主人公は穏やかに微笑む
主人公が目覚める前に視る夢のような映像は
不穏なようで実はそうでもないような
夢の涯てへのセルフオマージュのような気がした
実は名家の跡取りでオヤジと仲違いして家を出たような過去を示唆
結婚しているのか 子どもはいるのか
最後の涙の意味もよく分からなかった
分からなさ加減も気にならない 色んな人の解釈を聞いてみたい
エンドロールの最後に木漏れ日についての説明が出てくる
二度と同じものは見れないと あぁなるほど
余白が多いいい映画だ これから気づくことがまだあるかもしれない
(ここから映画と無関係の記録)
終了後はドンキで第③ビール2本を買い込み駅のベンチでグビリ
屋根があり風がしのげて大層気分よし
家に戻って風呂に入って2次会 仕事納めはいい日になった
優しさ・強さ・孤独・切なさを感じました
まず第一にヴェンダース監督の愛情溢れる日本の風景描写に感謝します。
平山が姪っ子に話した言葉とラストシーンの表情が印象的でした。
純粋な感性を持つ姪っ子には平山の優しさが分かるんですね。寡黙な平山が自らの人生観を力強く語り幸せそうでした。でも姪っ子も成長過程でその感性を失っていくのかな?
ラストシーンの平山の表情にはこれまでの自らの人生、その時々の感情を思い起こして感極まっているように見え、その姿に孤独という言葉も浮かび切ない気持ちになりました。
日常を大切に思う
少しセンチメンタルで、
でも、いっぱい温かくて、とても優しい気持ち。
起きた時に、木漏れ日を見た時に、空を見上げた時に、
笑顔になれる平山って素敵だ。
そして、ラスト、平山の泣き笑いに尽きると思った。
最初のトイレ清掃から帰ってくる車中のシーンで、
なぜだか泣いちゃいました。
悲しさとは違って、音楽のセンチメンタルさも加わって、
涙中枢を刺激されてしまったみたいで...。
なんで泣いてんねんって、心で自分にツッコミ入れた。
でも、音楽って悲しい曲じゃなくっても、歌詞がわからなくっても、
泣いてしまうことあるよなー。そんな選曲が上手い!!!
サウンドトラックも最高だったなー。
普段は、役所広司さん、顔圧が強すぎて、少し敬遠してしまうんですが...。
カンヌで男優賞を取ったのも納得の平山さんでした。
渋谷のトイレで、押上の道端で、ひょっこり会えるんじゃないかと。
そして、ラストの泣き笑いの顔は、本当に素晴らしかったです!
なんだか、これを打ちながらも、思い出して泣けてきちゃいます。
あのシーンを見ながら、
欲張らずに、一日一日を、その時間時間を大切に思おうっ!て、
そんな気持ちにさせてくれて、なんだか幸せだなーって思った。
あと、ヴィム・ヴェンダースさんの影の使い方や、
光の加減や、色味がとても心地好くて好きだなー。
間の取り方とか、セリフの感じとかも、同様に心地よく、
小津安二郎監督を思い出させる部分もありつつ、
監督の作品らしさというか外国っぽさというのかなー、
きちんと主張されていて、さすがのヴィム・ヴェンダース監督!!
ポスターもカッコ良い!色彩感覚が違うのかな…。
また、78歳という年齢に驚いたんですが、年齢なんて関係なく、
才能って枯れるどころか、どんどん、磨かれていくのですね!
まだまだ、これからも監督の作品がたくさん観たいです!!
2023年の映画納めに最高の作品に出会えました。
ありがとうございます。
布団を畳む所作だけで心に刺さる映画
東京の公園のトイレ清掃業務を生業とする男の毎日を描く。
朝目覚めからの一連のルーティーンだけで心に刺さるものがあるのは
この映画がはじめて。
布団を畳む所作が美しい。いや、彼のすべての所作が美しい。
住んでいるアパートもはっきり言ってボロだが、
部屋は整然としている。
彼の毎日を淡々と描きながらも、
少しだけいつもの違う、心がゆれる出来事が起きるのだが、
最後は穏やかな形で終わる。
同僚の男にお金を貸したことと、その彼が別の少年に好かれていること。
カセットテープを盗まれながら、返してもらい最後はキス。
突然の姪との同居と、妹との再会。
同僚の突然の退職による多忙なシフトと、翌日のヘルプの女性。
居酒屋女将の元夫の出現と、彼との影踏み。
1つ1つのエピソードが優しい形で終わる。
そして、映画を観て、優しい気持ちになれた。
これかなり好きだわ
同じような毎日にちょっとだけのゆらぎ。平凡な日常を繰り返し見せられているのに、なんでこんなに時間を忘れて観入っているんだろうな?と不思議な気持ちになる映画でした。
それにしても役所さん演じる平山氏のなんて可愛らしい事。やけ酒チューハイ3缶と吸い慣れないタバコ買う姿にキュンとくるわ。
私は家事のマイルールが強すぎて、「起きてすぐ布団をたたんで重ねると湿気が…」とか「顔拭いたタオルがヨレてるの直したい」とか「畳の掃除の大雑把さ…」と、どうでもいいところで気になってしょうがなくなり集中が欠ける事多々あり。
平山氏も私とはまた違う強いマイルールがあるんだろうな。彼の過去に何があったのか具体的にはなんの説明もなかったけれど、生きづらさを抱えてきた人である事はよくわかる。
今年最後の映画をこの作品で締められたのはとても良かった。
全852件中、561~580件目を表示