「すごい映画を観たな。。。」PERFECT DAYS msnb76さんの映画レビュー(感想・評価)
すごい映画を観たな。。。
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「すごい映画を観たな。。。」PERFECT DAYS msnb76さんの映画レビュー(感想・評価)
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msnb76
4.0泣ける 知的 癒される
2025年4月9日鑑賞 CS/BS/ケーブルで鑑賞
2025年5月7日投稿
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すごい映画を観たな。。。
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以前『東京ポッド許可局』でマキタスポーツ・プチ鹿島・サンキュータツオのお三方が熱っぽくこの映画について語っているのを聴いていたので知ってはいましたが、今回 日本映画専門チャンネルで初めて視聴しました。
視てた時は「思ってた通りの “おっさんの日常的映画” だなぁ」という淡々とした進行でしたが、まず始めに (トイレ清掃員で主人公の) 平山がトイレ内で迷子の男の子を発見し、トイレから手を繋いで一緒に出て、親を探そうとしたら母親が駆けつけてきて、平山に礼もないどころか (トイレ清掃員だからか) 除菌ウェットティッシュで男の子の手を拭いた時、私は思わずテレビに向かって「ふざけるなよ!!」と怒りで叫んでしまった。だが平山は、そんな母親をよそに微笑んで手を振る男の子に微笑み返す。
ここで最初に平山に感情を持っていかれた、感情移入が始まった事を後で自覚した。
上手い!👏👏
・・・後はまぁ、 だらしない若手清掃員のタカシ (柄本時生) に振り回される平山にも可愛らしさや「おかしみ」があって感情をひたすら持っていかれる。
基本的には今の日本の『格差社会』を浮き彫りにする映画 (特に妹のケイコ (麻生祐未) が運転手つき高級車でやってきて、平山の軽1BOXとオーバーラッピングするシーンが象徴的) なのだけど、浅草地下街の中華料理屋の大将 (甲本雅裕) や、スナックのママ (石川さゆり) や姪のニコ (中野有紗、 彼女が味があって凄く良い) に慕われていたりして『救い』がある所が良い。
その妹のケイコが平山を慕って家出してきた姪のニコを迎えに来る、『格差』が浮き彫りになる終盤のシーンが、あらゆる意味での『クライマックス』だと思うが、ケイコが「お父さん、もうよく分かってないの。昔とは違うから。施設に行ってあげて」と言い残し、高級車で去って行った後、平山は嗚咽する。六十男が嗚咽するなんて余りないこと。「きっと過去になにか大きな禍根があるに違いない」と、平山の過去に思いを馳せさせるが、決して詳細は明かさない。
……この辺は、神経質かつ気ぃ遣いが多い日本人 (の脚本や監督) なら、詳細を明かしてしまうのでは、とも思った。
そんなこんなで完全にこちらが『平山のファン』と化した最後に、軽1BOXで仕事場のトイレに向かって運転する平山のアップの2分間。絶妙に表情が変わっていく、「泣き笑い」とも言える表情の変化だけで心の機微を表す、役所広司の技量にすべて委ねられたようなラストシーン。
……思い返しただけで涙が溢れてきてしまう。
残念ながら “大俳優” 役所広司の素晴らしさに触れる機会が今までなかった私が「ようやく」その凄さに触れられた喜びまでをも同時に感じる。
私が貧乏人だからここまで感情移入できたのか。功成り名遂げた金持ちは、感情移入できないのか。できたとしても、貧乏人ほどの割合ではないのか。いや「貧すれば鈍する」と言うので、その割合は案外変わらないのか。
見終えた後も、いろいろと気にさせる映画でもある。
最後に、マイナス1は、友山 (三浦友和) が、なんで平山の居所を掴めたのか、「後を付いてきたの? でも平山は自転車だったよな?」とモヤモヤする分… かな。