劇場公開日 2023年12月22日

  • 予告編を見る

「やっと見ることが出来た」PERFECT DAYS タチアナさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0やっと見ることが出来た

2025年4月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

知的

ヴェンダースの映画は80年代くらいから見始めて、それから遡ってデビュー時から辿る位ファンだった。時々とんでもない駄作を撮ることもあるけれど、それでもその青臭さも含めて好きだった。それで今作。オリエンタリズムではないリアルな東京がヴェンダースのフィルターと役所広司の演技でみられる。カンヌ映画祭で受賞もしている。見たドイツ人は皆よかったという。それでも、なかなか素直に映画館に行けない心のブレーキがあった。あまりにも身近な日常が対象として選ばれているので、それが理想化されることへの反発があったからだ。やっと配信サービスでみて、やはり先入観にたがわない感想を抱いた。ヴェンダースの「脳内理想生活」と現実の日本との乖離を感じずにはいられなかったのだ。ルー・リードのカセットを聴く60代の日本人なんてほぼいないし(日本の高齢者は演歌しか知らない)、パティ・スミスの歌詞を理解し、口ずさんで涙するガールズバーの店員なんていない。朝二時間だけの清掃業で生活はできない。平山は年金受給者なのか?不労所得でもあるのか?外から見ると1Kのボロアパートの内部がなぜ二階建てになっていて広いの?ミニマリストばりの質素な部屋には生活感がない。小津映画からタイムスリップして現代に降り立ったかのように、それでも太陽の光を避け、カーテンを閉めて植物を育てる平山は、やはり現実離れしている。この映画が映し出す東京は、ロードムービーの名手であったヴェンダースが老境に入り、辿り着いた仙人境なのだう。

タチアナ
PR U-NEXTで本編を観る