「評価しないのは見る目が無いんだぞ的なワザとらしさが強すぎます」PERFECT DAYS nyaroさんの映画レビュー(感想・評価)
評価しないのは見る目が無いんだぞ的なワザとらしさが強すぎます
この作品をいい作品だったと言う事は誰にでもできると思います。日々の労働と小さな楽しみ。起伏の無い人生に時々少しだけ起きる波風。でも、日日是好日という感じで、次の日が始まる。お金が欲しい、幸福の追求せねば、何かを成し遂げなければ…という人生に疲れている人にはなかなか効く映画…に見えます。
ただ、これって「効く映画」なんですよね。実は映画の内容と意図が逆転してしまっている気がします。映画にするためにわざと作り出した淡々とした生活と、イベント。文学かと言われれば、文学的意味性をノスタルジー的感情を含めて強要していて文学ではなくなっている気がします。それがトイレ掃除という職業を対等に見ているようで見下しているクリエータサイドのエゴを感じます。
そして、ラストに泣きのシーンがあるので、今までこの男は人生を静かに楽しんでいたかもと言う、あるいは人生は生きていることに意味がある的なひょっとしたら感じたかもしれない味わいが、生き疲れた人間の希望が破壊されたように見えます。
全体的に内発的に沸き上がった表現したいという欲求よりも、それっぽいものを作った感を強く感じました。要するにきわめてワザとらしい映画だという事です。「評価しないのは見る目がないんだぞ、お前らわかってるな」的な映画の位置づけと相まって、ちょっと気分的に乗っかれないエセ文学臭がする作品でした。
なお、この映画なら役所広司じゃないと思います。他の俳優含めて全員あえて素人を使えばよかったのに。そこも減点要素です。