「帰る日常のある人の強さ、靭さ」PERFECT DAYS かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
帰る日常のある人の強さ、靭さ
主演・役所広司。
監督は『ベルリン・天使の詩』のヴィム・ヴェンダース。
【ストーリー】
東京の下町に独り住む、無口で実直な初老男の平山。
公衆トイレの清掃人の彼は、毎日変わり映えのしない仕事を、道具を自作するなどして、熱心に取り組んでいる。
一見変哲のない日々には、だけどさざ波のように心震わせる出来事が起きていて、小さく、ときに大きく、平山の日常を動揺させる。
音楽は平山が自分の車でかけるテープ、居酒屋でママの歌う演歌といった、生活に密着した自然なものだけ。
起伏のないストーリーですが、カット割りのリズムがよいので退屈はしません。
音も都会の自然音を多用して、シーンの味わいを強めてくれます。
音楽のセレクトもセンスいいですね。
シャレてて滋味のある、古いロックやポップス。
平山の歩んできた道のりを、わずかずつ見せてくれる感じで。
役所広司の笑顔も、純粋でいい。
この歳でこんな笑い顔ができる俳優という存在の、偉大さに心が震えます。
わき役で好きなのは、本屋のおばさんかなあ。
幸田文とパトリシア・ハイスミスを、一言でピュッと評するあの語り口がいい。
解決しようのない人生のさざ波が、くり返し平山を動揺させ、そしてそれをただ日常をすごすことで受容れる。
完璧ではない一日また一日を、完璧にするための平坦な作業。
ルーティーンを黙々とこなす人の、これが強さなのだなと教えてくれます。
とても美しい映画です。
マッドマックスはお祭り映画、なんかわかります。アニヤのフュリオサの映画の伝説的な神話的な感じがとてもいいなあと思いました。彼女、とても強くてかっこよかった
かせさん、共感とコメントありがとうございます。・_・
淡々と日常をこなすだけでなく、仕事の相棒がトンズラ
してしまった際には必死で穴埋めに回りながら、
「今日だけだよ、冗談じゃないよ」 と
クレームを入れる姿も印象に残っています。
ただ黙々と仕事をこなすだけの自己主張のない人間では
なく、「自分」をちゃんと持っていることが伝わってくる
場面だったかなと。そんな気がします。