「違和感の正体に気づいた時の気持ち悪さ」PERFECT DAYS イシノイシカワさんの映画レビュー(感想・評価)
違和感の正体に気づいた時の気持ち悪さ
アマプラの配信で視聴。
映画公開時からレビューを見たり聞いたりして評判がいいのは知っていました。
ざっと見ての率直な感想はなんとも言えないおじさんのカッコよさ。
毎日同じような生活なのにそれを違った視点や切り方で見せる映像の綺麗さ。
俳優陣の演技の上手さ。そういった感想を抱きました。
最後の平山の涙はどんな涙なのだろうという疑問も残しつつもいい感じに終わったと思っていました。
他人のレビューを読んで平山の涙の訳を考察していました。
と同時に自分の中に一つの違和感が残っている事に気づきました。
それは「実は金持ちの家の出だった事」
これがなんだかもやもやしていました。
レビューを読んでいるとこんな事が書いてありました。
「監督はこんな感じの男がいいよね」と言っていたそうです。
これがどこまで本当でどんな意味なのかは定かではありません。他人のレビューに書いてあっただけですから。
ただ、これを聞いた時に自分の抱いていた違和感の正体に気づいたのです。
話は少し逸れますが、SNSに流れてくる広告で漫画の広告ってやつがあります。
漫画を数ページ読ませてアピールしてくるそんな広告です。
そこで見かけてちょっとエッチな感じにつられ無料分で読んだ漫画がありました。
それはオタクのモテなそうな男が主人公。
しかしそんな男がかわいくてスタイルもよいオタクの女子と知り合い、その日のうちに体の関係をもってしまうのです。
しかし付き合うとかそういう話は無し、オタク話で盛り上がり毎日のように会い体の関係を続けていく、しかし女は男の気分を害するような事は全く言いません。
他の男を匂わせたり、その男に対しての否定を一切しません。
そんな男にとって都合のいい夢のような妄想の話。
この漫画のタイトルが「こういうのがいい」
わかりますか?
作者の理想を漫画にしてるっていう事で、このタイトルってのは作者の言葉だと受け取れるのです。
そう考えた時、この漫画の気持ち悪さに鳥肌が立ちました。
いい体でめんどくさくなくて、共通の趣味で話が盛りる事ができ、自分の事を一切否定しない、そんなセフレがいたらいいなという話を悶々と漫画にしているんです。
作者の現実はわかりませんが、そういう作者像ができてしまったんです。それが気持ち悪い。
話戻ります。
今回のパーフェクトデイズもその漫画と同じなんじゃないか。
そう思った瞬間、違和感や他の事が全てつながったんです。以下羅列します。
・人との会話が苦手、しかし仕事は一生懸命やる。便所掃除にやりがいを感じている。
・自分の中に一本の芯のような、趣味というかライフワークのような、クリエイターのような部分がある。それは人には分かりずらい所まで行ってしまっていて、自分の中の合格が出ないと破り捨ててしまう。しかもそういう創作を何年と続けている。
・自分の趣味嗜好に興味を持ってくれる若い子に突然キスされる。
・家出をした姪は自分を頼ってくる。
自分に興味深々、自分のいった言葉が姪の心に刺さる刺さる。
まだ居たいという姪を無理やり母親に返す。
・実はいい家に生まれているが父親とのいざこざで家を継がずにいる。
父親に言われた「おまえは便所掃除のような底辺の仕事を続けていればよい」と言われたが父親への反抗心もありずっと便所掃除を続けている。(これは僕の妄想)
そんな状況を知っている妹も兄の心配をし続けている。
・好意を持っていた飲み屋の女将の元旦那が「あいつの事は頼みますよ」と言ってくる。
・辛い事はたくさんあるけども楽しい事もある。涙を堪えて踏ん張る男
これらが全て都合よく作られた話と感じてしまい、気持ち悪く感じてしまいました。
実際のおじさんって世間からの扱いはもっとひどいんです。救いようがないんです。
これ間違いない。こんなミラクル何度も起きないって。
そういえばこの映画を良いって言っていた人は40歳くらいから上のおじさんだったなあ。
そういう人間が都合よく気持ちよくなれる映画だったんだよ。
作者の都合のいい妄想を詰め込んでいる。
もっと楽しくて楽な人生があったのに、それを捨ててもそれより大事な何かを取り、それが結局辛い方だったとしても奥歯を噛みしめて、涙を堪えて耐える、そんな男がかっこいいよねって言ってる、自分に酔った人間の映画だと思いました。
かといって物語の創作の芯ってのはそんなものだとも感じます。
こんな恋愛をしてみたい。魔法を使えたらどうするか。とかね。
ただね、都合が良すぎるんですよ。そこが気持ち悪いのです。
しかし、役者の演技、キャストの面白さ。映像の作り方、これらが全て素晴らしく僕の言う気持ち悪さがぼやけているのではないかと感じました。
広告に出てくるH系漫画は見ないので(おばさんだからです)、そういうあらすじを知る事が出来、さらにそういう感想がある事に新鮮味を感じました。
そして そう言った視点でこの話を見て居心地の悪さを感じるという感覚が すごく正常であるように思いました。