「暇なら観てもいいが…」PERFECT DAYS Nightmare?さんの映画レビュー(感想・評価)
暇なら観てもいいが…
これ、世界的な映画監督が撮った作品なんですか? すっごい俳優を使ってすっごい丁寧に作っているけど、僕には学生映画のちょっとよくわからない部類に入る程度の作品としか思えなかった。とにかく「匂わせ」が過ぎる。次から次へと匂わせるのだが、結局何がどうなってそうなったのかが全く描かれない。核心がないのだ。いったいこの映画から何を感じろと? セリフではいろいろとそれ風なことを言うのだが、その背景に何があったのかが描かれないので、映像に感情が乗って来ない。たとえば、十何年ぶり(数年ぶりかも)に会った妹が「あなたとは住む世界が違う」と言うのだが、いくら金銭的な差があっても職業の差があっても、「住む世界が違う」とまで言えるものだろうか。平山が「反社」だとか人を殺したというのならまだ言えるかもしれないが、独身でアパートに住んでトイレ清掃の仕事をしているからといって、そこまで言ってしまう妹はどれだけ人を見下げているのだろう、と思ってしまう。やはりそこをちゃんと描かないから、よく使われる言葉ではあるが違和感を感じてしまう。そのあと、平山は妹を抱きしめるんですよ! 意味わかんないですよ!
また、挿入されるモノクロの何かの残像のようなものが何なのか、結局最後までわからなかった。夢なのだろうか? だとしたらその夢の意味とは?
で、映画の文脈からすると、それまで平穏に進んでいた日常に次々と異変が挟まり始め、平静を保てなくなった平山が、異常を来して車を運転しながら涙を流す、という映画だったと理解してよろしいか?(よろしくないんだろうけど、そうとしか解釈できないのだ)
監督が小津安二郎のファンで、主役の名前が小津作品によく出てくる「平山」ともなれば、小津作品ばりのシャレの効いた映画なのかと思った(評価高いからもしかしたらと)が、全くそんなことはなく、同じなのは画面の縦横比だけだった。
画面には次々とファッショナブルな公衆トイレが映るのだが、結局トイレの主役は建物じゃなくて便器だということがよくわかった。