「何気ない日常感が最高」PERFECT DAYS 阿久津竜斗さんの映画レビュー(感想・評価)
何気ない日常感が最高
〝君は自分を忘れさせてくれた〟
〝僕は誰か他の善人になった気分だった──〟
──ルー・リード〈パーフェクト・デイ〉
観終わったとき、肩がガッチガチになっていました。これだけ引き込まれた映画は久しぶりです。
平山さんに共感できる部分が多かったので、深く入り込めたんだと思います。会話がぎこちなかったりとか、古い文庫本を読むのが楽しみとか、気の合う人としか話そうとしないとか。
僕自身、基本無口な人間なので、そういう何気ない日常感は堪らなく好きです。
あと洋楽好きなところも良いですね。ヴェルヴェッツとか、パティ・スミスとか、キンクスとか。僕も大好きです。
個人的に印象的だったシーンは、平山さんが妹と姪を見送ったあと、ひとり涙を流すシーン。直前の妹との会話を聞いてると、昔はもっと豊かな暮らしをしていたような感じがします。「あの頃には戻れない」みたいな悲しさ、寂しさが身に沁みるように伝わってきました。自分は平山とは違って、まだまだ人生経験が浅いので、「この先、自分もこんな思いをするんだろうか……」とぼんやり考えてしまいます。
でも悲しみって、悪いものではないとも思います。ひとり涙を流すのも、幸せの一つとして捉えれたら良いですね。
素晴らしい人間ドラマ映画でした。ヴィム・ヴェンダース監督の他の作品(『パリ、テキサス』)も観てみたいと思います。
「ママとおじさんって、全然似てないね」
「……そう?」
「おじさんとは住む世界が違うんだって、ママが言ってた」
「そうかもしれない」
「そうなの?」
「この世界は、ホントはたくさんの世界がある。繋がっているように見えても、繋がっていない世界がある。僕のいる世界は、ニコのママのいる世界とは違う」
「──わたしは? わたしはどっちの世界にいるの……?」
──平山さんとニコの会話より