「「足るを知る」人生こそが最強」PERFECT DAYS ななやおさんの映画レビュー(感想・評価)
「足るを知る」人生こそが最強
観終わって思うのは、「足るを知る」人生こそが、最強なのだということ。「満足することを知っている人は、たとえ貧しかったとしても精神的には豊かで、幸福であるものだ」という意味の言葉です。役所広司さんが務めた主人公ヒラヤマの人生は正にこれでした。
立派とはいえないが、清掃の行き届いた一人暮らしには十分な広さの家。
かっこいいとはいえないが、後輩から尊敬され誇りを持って続けている仕事。
たくさんとはいえないが、数少なくとも日々の日常を彩ってくれる知人たち(行きつけの居酒屋の店長、行きつけの古本屋の店主、行きつけのバーのママなど)
大きな喜びとはいい難いが、朝の缶コーヒー、仕事終わりにの一杯、毎晩寝る前の読書、観葉植物たちの水やり、週末の行きつけバーでのひととき、毎日のお昼休みの木漏れ日の撮影などなど、ヒラヤマを幸せにするささやかな喜びたちがたくさん登場する。幸せとは、なにも特別な日を飾る赤いバラである必要はないのだと思わせてくれる。
ないものをいつまでも欲しがってダダをこねたり、不必要な人間関係に疲弊して自分をすり減らしている現代社会に生きる人たちとは、ある意味別次元で生きているヒラヤマの生き様は尊くすら見えてくる。
全ての人がこんなふうに生きられるとは思えないが、幸せの根本とは、こういうことなんじゃないかと思わせてくれた作品。
心からとてもいい映画を観たと、他人に言いたくなるとても素晴らしい映画でした。