「PERFECT DAYS」PERFECT DAYS tyshiさんの映画レビュー(感想・評価)
PERFECT DAYS
これぞ映画。これこそ映画。
もはや感動でこの後の人生ずっとこの映画が記憶に残るだろう。
自分が東京にきてそろそろ一年が経つが、この雑踏の中で感じた全てが映画に凝縮されていた。初期衝動を思い起こさせる映画の中ではピカイチ。
他のどの作品も超えられないものがこの映画にはある。
何より良かったのは構成。そしてキャラクター同士の化学反応。全て回収しない清々しさ「わからないことだらけ」なのに、綺麗な朝日は差し、次の1日が始まる。
いいことも悪いことも、全てひっくるめて「完璧な日々」そう思えることこそ、人生を楽しむ唯一の方法なのである。金が幸せの人間、人とのつながりが幸せの人間、色んな幸せの形があり、世界がある。どの世界で生きなければいけないわけではなく、どの世界も同じだけ美しく、完璧(PERFECT )である。
①「生の感情」はあったか
あった。例えば、柄本さんがカセットテープを売ろうとするシーン。柄本さんが売りたいと思う気持ちに、ぞくっとした。人間の怖さ。さらに、そこでお金を渡してしまう役所さん。ゾクゾクする。これぞ人間。これぞ人間の生の感情。爆発するだけが感情じゃあない。
自分は今まで生の感情は爆発だと、感情の露呈だと思っていた。そうじゃなく、感情が静かに漏れ出す形でも生の感情の表現はできるのだと、そう感じた、、この映画には、感情を描く術として「景色」と「表情」を活用していた。誇大広告のように大きな声で感情を露わにするより、それらは大きく客の胸に刺さる。
②緊張感はあったか
ここが気になるところ。この映画はこれで完成系で、別になんの文句もないのだが、私が監督する、もしくは脚本を書くのであれば、多少なりとも緊張感のある「サスペンス」は盛り込むと思う。しかし、この雰囲気を壊してしまう可能性もあるので、考えもの。
離婚した妻の娘が訪ねてくるところあたりは、もっと緊張感があってもいいように感じた。普段と違う日常なのに、役所はんの慣れてる感がすごい。役者さんが邪魔に感じてしまうとか、妻のことを思い出してしまうとか。
③「謎」はあったか
この映画の良いところは、この「謎」を散りばめているところである。しかもその謎一つ一つが、役者さんが完璧な日々だと考える要因になっていっているのがすごい。
さらに、問題が解決する前に問題を作っていくことで物語がズンズン前に進んでいく。当たり前のことなのだが、こう言う日常を描くタイプの映画には珍しいのではないか。だからこそ、ダラダラしていないし、ずっと見れてしまう。
あまりにも良くてびっくりしてしまった。最初の方はただの日本の文化の紹介映像って感じだったが、だんだんと加速度的に面白くなっていった。
この映画は何度も観ることをおすすめする。観るたびに初期衝動を揺さぶられ、アイデアが浮かび、創作意欲につながるだろう。