「何か素敵なものに触れた」PERFECT DAYS moroさんの映画レビュー(感想・評価)
何か素敵なものに触れた
寡黙なトイレ清掃員のおじさん「平山さん」の日常を描く作品です。
彼の日常はささやかで、けれども退屈にならず、ずっと観ていられます。
役者さんの非常によいお仕事を観られた気がします。
平山さん(役所広司)は夜明けに目覚めるとせんべい布団を畳み、手際よく身支度を整える。
小さな古めかしいアパートから外に出ると、空を見上げてにっこりと微笑む。
トイレ掃除に向かう車中のBGMは、お気に入りのカセットテープから選ぶ。
仕事が終わったら銭湯へ行ってサッパリし、駅改札前の居酒屋で一杯飲む。
今日は何かあったような無かったような、それでも眠りにつくときには印象的な出来事が思い起こされる。
毎日同じことの繰り返しのようだけれど、まったく同じ日はなく、平山さんはその日その日を大事に愛おしく生きています。
作品は多くを説明しませんが、平山さんはきっと過去に、ここで根を生やしこの暮らしをすると覚悟を決めたことがあったのでしょう。
寡黙な平山さんの言葉はやさしく相手に寄り添い、同時に自分に言い聞かせるようです。
さびしそうに、誇らしそうに、不安そうに、清々しそうに、ちぐはぐなものを抱えながらも平山さんはにっこり微笑むのです。
コメントする